正体不明のカリスマグラフィティアーティスト・バンクシー(Banksy)。今年上旬にはバンクシーのものと思われる絵が東京日の出駅で発見され、東京都が回収したの後に展示されたことが議論となった。

また、昨年末には、誰もが一度は見たことがある作品「風船と少女(Girl with Balloon)」が大手競売会社サザビーズのオークションにて、落札と共に額縁に仕掛けられた装置によって突如裁断され話題に。そして今年も同オークションを驚かせることとなった。

「チンパンジーが議席を埋め尽くす」

今回落札されたのは「Devolved Parliament」という作品。チンパンジーが議席を埋め尽くす風刺画は、出品時に最高200万ポンド(約2億7000万円)の落札が予想されていたが、13分に及ぶオークションでの落札価格はなんと約990万ポンド(約13億円)。このことについて、バンクシーは自身のInstagramにて、「バンクシーの絵画で最も高値だ」「自分で所有していなかったことが残念」とコメントしている。

議会の混乱とEU離脱問題を予見

およそ10年前に制作された本作品は、ゲリラ開催されたエキシビジョン<Banksy vs Bristol Museum>(2009)で展示され、入場には最大7時間もの行列作った。

それから10年の時を経て、イギリスのEU離脱「ブレクジット」の日を記念して、今年3月に再びブリストルの美術館で展示されることになった。議会の混乱とEU離脱問題を予見したアートとして注目が高まっていた矢先、この落札価格がつくことになったと言えば、それとなく腑に落ちるはずだ。

Banksy versus Bristol Museum

さらに、今回のサザビーズのオークションでは、同価格でジャン=ミシェル・バスキアによる1984年の作品『Pyro』が落札された。サザビーズでヨーロッパのコンテンポラリーアート部門でシニア・ディレクターを務めるAlex Branczik氏は「今夜(オークション)の主役は、アートの歴史を更新したストリート・アーティストたちだったことに疑いの余地はない。バスキアとバンクシーがオークションを支配したのは、歴史的瞬間だった」とコメントしている。

Explaining the Explosion of Iconography in Basquiat’s ‘Pyro’

<バスキア展 メイド・イン・ジャパン>

なお、バスキア日本初の本格的回顧展<バスキア展 メイド・イン・ジャパン>は、9月21日から11月17日(日)まで森アーツセンター ギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52 階)にて開催中。バスキアは、バブル景気を迎えていた80年代の日本を度々訪れており、本展ではバスキアと日本との多方面にわたる絆に焦点をあて、世界各地から集めた約130点の絵画やオブジェ、ドローイングなどが展示され、バスキアの知られざる影響を明らかにする。

バスキア展 メイド・イン・ジャパン