カワイイが正義の街、原宿。以前この駅に降り立ったのは、小嶋独観先生の企画展<珍寺大道場 大博覧会>のためだった。
おしゃれな若者の波をかき分け向かったのは、前回と同じイベントスペース、デザインフェスタギャラリー。白を基調としたおしゃれな外観。しかし、開け放たれたドアからは、再び地獄の風景が隠れることなくダダ漏れていた。
今回訪れたのは、小嶋独観子さんの 地獄をモチーフにした珍寺盛りだくさんの企画<グロテスク☆ポップ~地獄と世俗展>。夫の小嶋独観さんとともに世界の珍寺を回っている、珍寺フリークの間では知らない人はいない、珍寺界のパイオニアだ。
キッチュでラブリーな「地獄」
珍スポット好きを、もはやそのタイトルだけでゾクゾクさせる企画展。独特な世界観を布とミシンで作った大きな掛け軸型のキルトで表現した。グロやエロというテーマながら、カラフルな表現によってキッチュさとラブリーさが醸し出されている。
モチーフとなったのはタイ各地にある「地獄寺」。『悪いことをするとこんな目にあうぞ』という教訓を、グロテスクなオブジェなどで伝える寺である。立派なお寺が世界にはごまんとある中、どうしてよりによってこのシュールな寺をテーマとしてピックアップしたのか。
学生時代、美術を学んでいたという独観子さん。海外でたくさんの美術館を見て回る中で、著名な芸術家の作品よりも、民衆が作り上げる、信仰心のあまり気持ちが先走り、感情が溢れすぎてしまう作品がおもしろいと思うようになったという。
そんな中、宗教や建築物に精通していた独観さんとともに訪れた、タイの地獄寺のスゴさに魅せられてしまったとのこと。子育てがひと段落して創作意欲が湧いてきたため、作品の制作に着手し、初めは学生時代に学んでいた抽象画をモチーフに制作を開始した。
地獄寺をモチーフに取り入れてみたところ、ミシンや布で表現できる世界観と非常にマッチし「これだ!」と閃いた。その後は、なんと展示物すべてを4ヶ月で作り上げたというから驚きだ。
地獄寺だけでなく、独観子さんの友人・知人を昭和のエロティックと掛け合わせた「俗っぽい」作品もあり、地獄と世俗の対比がなされている。