現代アーティストの木村華子が、個展<[ ] goes to Gray>を2021年9月17日(金)から10月17日(日)の期間で、京都「KAGAN HOTEL-河岸ホテル-」にて開催。本展は、国際写真芸術祭<KYOTO GRAPHIE 2021>のサテライト企画「KG+2021」に参加しており、展覧会をキュレーションするのは”場所をもたないギャラリー”芸術レーベルの「keshik.jp」の黒田純平が担当。
「時代のポートレート」と謳われたシリーズ『SIGNS FOR [ ]』の企画展
本展は、日本、中国、台湾など10カ国の国と地域と290組のアーティストが集う国際アートフェア<UNKNOWN ASIA>で2018年にグランプリ、レビュアー賞5部門、審査員賞4部門を受賞した作品『SIGNS FOR [ ]』シリーズの企画展に。
「意味が有ること/無いこと」というメッセージ性を込めた「時代のポートレート」は木村自身が現代社会で生きていくことで大事にしている考え方を体現している作品。グレーゾーンに滞在し、社会と共存している木村自身の世界観を鑑賞者にも体験できる仕掛けを用意した体験型の展示になっているとのことだ。
ステートメント
そんな誰もが想像しえなかった非日常が起きている中、我々が生活をしているここ日本でも同じことが言える。政府の対応により、今までの当たり前の生活を自粛し感染被害を拡大しないように行動するもウイルスの猛威は止まらない勢いだ。そんな状況の中でも社会は回り続けており、我々は生きている。
この状況を変える手立ては、誰しもが「正解」を持っており、「不正解」を持っている。まるで、どちらでもなく、どちらかであるような「グレーゾーン」の中にいる感覚のようだ。これは、我々が生きている社会の中で常に存在しており、無意識の中で生まれる事象でもある。これまでに出会った対象や現象も、最初は答えや名前などなかった。それらを認識ができるようになったのは、先人達が生み出したものを我々はバイアスという名のレイヤーを重ねているからだ。
しかしそれらを用いても、対象や現象に対して意見はバラバラに生まれ、結果的に認識は、グレーゾーンに入ってしまう。まるで、対象の周りには白と黒の線が集合し灰色で覆われているようだ。
木村華子は、その言葉にならない現象と向き合い作品を制作している。普段は商業カメラマンとして生業をしているが、この時代に生まれた自身の立場と社会を重ねながら表現活動を行っている。近年は街中の、なにも描かれていない白紙のビルボードを被写体にし、青いネオンライトを施したシリーズ “SIGN FOR [ ]”で、「意味が有ることと無いこと」というメッセージ性を込めた「時代のポートレート」とも言える作品を発表している。
木村はコマーシャルとして写真を扱いながらも、アーティストとしても写真という手段を選んでいるが、本人は2つの立場を肯定しながら活動している。これは、グレーゾーンに木村自身が滞在し今の時代と共存して生きていることを表している。
“SIGN FOR [ ]”は我々にとって「救い」でもある象徴なのだ。
本展では、会場であるKAGAN HOTELの地上と地下のスペースを使い、 “SIGN FOR [ ]”シリーズを展開する。
この二極化された空間に、別々に展示された同じシリーズの作品を鑑賞し終えた後、あるアンケートを答えてもらうことで、本展示のゴールでもあるグレーゾーンに到達するだろう。
文:黒田純平/keshik.jp