ソニフィデア合同会社が、千葉県・市川市役所第一庁舎の1階にベンチ型サウンドアートを設置し、オープンスペースの音響空間を演出した。庁舎でのサウンドアートの常設は国内初の試みとなる。本作品を手がけたサウンドアーティスト・及川潤耶氏のインタビューが市川市の公式YouTubeチャンネルで公開された。さらに、今回、Qeticでは独占で及川氏にインタビューを実施。芸術家として、行政や企業とのコラボレーションでどのような取り組み方をしているのかなど、語ってくれた。

サウンドアーティスト・及川潤耶とは

サウンドアーティスト・及川潤耶氏は東京藝術大学大学院を修了後、世界最大のメディア芸術センター「ZKM」の客員芸術家として渡独。その後、各国の現代美術、メディア芸術、実験音響のフェスティバル等にて作品が紹介されるなど、注目を集め続けている芸術家だ。2018年には、俳優/ダンサーである森山未來Jon Filip Fahlstrømとの共作「SONAR」を「Dance Dance Dance@Yokohama2018」にて披露。数々の革新的なコラボレーションや新たな試みに挑戦している作品は音楽賞や芸術賞を多数受賞されており、海外でも高い評価を得ている。

千葉県・市川市の空間演出を手がけるサウンドアーティスト・及川潤耶のインタビュー動画が公開|独占インタビューも到着 art210629_junya-oikawa-08
及川潤耶

SONAR

詳細記事はこちら:
森山未來、ヨン・フィリップ・ファウストロム、及川潤耶の3名による振動。ダンス作品『SONAR』を写真付きでレポート

伝統的な庭園に拡がるサウンドスケープ<yadorine/宿り音>レポート&作家及川潤耶インタビュー

行政・企業とのコラボにより、パブリック空間にサウンドアートが出現

近年では、及川氏は行政や企業と共同に作品を作り出しており、2020年にはJR東京感動線事業にて西日暮里駅に作品を常設、そして現在、欧州最大規模のデザイン美術館である「デザインミュージアム|ピナコテーク・デア・モデルネ」ミュンヘンにて、バウハウス生誕100周年記念事業による委嘱新作を展示するなど、国内外で活躍中だ。

2021年1⽉からは、及川氏と千葉県市川市のコラボレーションによる、ベンチ型サウンドアート「Ruhe(読み:ルーエ)」が市川市新庁舎に常設されている。ドイツ語で「休息」「安らぎ」「静寂」を意味する「Ruhe」は、市川市の歴史からインスピレーションを受けて制作されたとのこと。作品に手をかざすことで、来場者はインタラクティブに音が生まれるアート空間を楽しんだり、開放的な空間に心地よく溶け込む音を聞きながら休憩することができる。また、オリジナルの音響拡散システム「サウンドディフューズスピーカー」を導入しており、この空間だけで味わえる音響空間体験が可能だ。

今回のアーティストと⾏政による新しい憩いの場の空間演出について、市川市の公式YouTubeチャンネルインタビュー動画を公開。動画では、今回のプロジェクトの製作過程や制作に向けた想い、市民へ向けたメッセージなどが、写真とともに紹介されているのでぜひチェックしてみほしい。

千葉県・市川市の空間演出を手がけるサウンドアーティスト・及川潤耶のインタビュー動画が公開|独占インタビューも到着 art210629_junya-oikawa-06

千葉県・市川市の空間演出を手がけるサウンドアーティスト・及川潤耶のインタビュー動画が公開|独占インタビューも到着 art210629_junya-oikawa-05

市川市庁舎探検リポート ベンチ型サウンドアート Ruhe編

さらに、2021年5⽉に及川氏は企業とのコラボレーション作品もローンチ。音響機器等の開発・製造メーカー、TOA株式会社と協業し、オフィス空間の⾳響空間演出を手掛けている。

本作品は、「未来のオフィス空間」作りに取り組む会員型コワーキングスペースpoint 0 marunouchi」を舞台にした、サウンドアートによる社会実験だという。他の利⽤者との待ち合わせや交流に活⽤でき、⾳の介在により⼈の集いやイノベーティブな交流を加速させる体験効果が期待されている。

本作は⼀般的なBGMと異なり、オフィス利⽤者の動きに合わせて、リアルタイムで⾳が⽣成される仕組みになっている。利⽤者の動作に合わせて出る⾳が変わるということで、どんな⼼理的な効果を⽣むのかアンケートでも今後検証していくそうだ。

千葉県・市川市の空間演出を手がけるサウンドアーティスト・及川潤耶のインタビュー動画が公開|独占インタビューも到着 art210629_junya-oikawa-02

千葉県・市川市の空間演出を手がけるサウンドアーティスト・及川潤耶のインタビュー動画が公開|独占インタビューも到着 art210629_junya-oikawa-03

千葉県・市川市の空間演出を手がけるサウンドアーティスト・及川潤耶のインタビュー動画が公開|独占インタビューも到着 art210629_junya-oikawa-01

INTERVIEW:及川潤耶

━━及川さんがサウンドアーティストとして、今回のように⾏政や企業と取り組んでいく意図をどのように考えていますか?

これまで⾏ってきた芸術活動の発展として捉えています。作品や私⾃⾝の活動そのものを「社会や⼈と関係性を作る」芸術プロジェクトとして展開し、世の中に還元していく試みです。私⾃⾝にとっても様々な⾏政/企業の⽅々の考え⽅に触れることで、芸術(家)がどのような形で社会により深く関わっていけるかを考える機会となっています。

━━こういった取り組みを通じて、社会や働く⼈たちにどのような表現、メッセージを伝えていきたいでしょうか?

⼼の質の向上や環境に対する付加価値を高める取り組みが増えている中、彫刻や絵画などの視覚表現に対し、音の芸術を導⼊している例は多くありません。音の芸術家としての社会実践を通じて、想いを共にする人同士が集い協業することで、新たな視点から環境や未来の価値観を共に創生していきたいと考えています。

━━今後なにか作品で挑戦したいことはありますか?

什器型のサウンドインスタレーションを継続中です。環境に寄り添うインスタレーションに引き続き挑戦します。

及川潤耶 HP
ソニフィデア公式HP