昨今のコロナ禍中、おうちにいる時間が増えたという方も多いことだろう。
これほどまで多く、そして唐突におうちにいる時間が増えてしまうと、余暇をどう過ごしたらいいのかわからない。なかには、家でヒマを持て余してしまっている方もいらっしゃるはずだ。
かくいうQetic編集部も、おうちで何をしたらいいんだろう、なんて思いにふけりながらNetflixで配信中の映画やドラマなんかを観ていたところ、こんな考えがふと頭をよぎった。「アーティストの人たちってこの作品を観て、どんなことを考えているんだろう?」
ということで、Qeticではこの度、Netflixで現在配信中の映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品の中から、アーティストの方々にひとつの作品を選んでいただき、その作品に対してどんな思いや感情を抱いているのかを赤裸々に語っていただいた。彼らの意見を聞いた上で作品を観れば、きっと思いを共有できるはず!
第7弾となる今回は、シンガーソングライター/トラックメイカーのMomが語る『ジェラルドのゲーム』。
Mom – 『ジェラルドのゲーム』
性生活のマンネリに悩む中年夫婦が新たな刺激を求めて人里離れたコテージへ。そこで夫は妻の両腕をベッドに縛り付けてアブノーマルなプレイを強いるのですが、発作を起こして亡くなってしまいます。
拘束されたまま身動きの取れない妻に襲いかかる野犬や得体の知れない化け物……と、ここまではソリッドシチュエーションもののホラー作品のような展開ですが、妻はそうした極限状態に身を置く中で自身のトラウマを起因とする数々の幻覚を見ることになります。
この映画の主軸となっているのは、深い記憶の底に沈めた過去のトラウマとの対峙、そして克服です。
さて、突然の身の上話で申し訳ないのですが、この文章を書くほんの数日前に風邪を引いてしまいまして、丸一日寝込んでいました。浅い眠りから覚め、ポカリスウェットを飲み、冷えピタを貼り直し、再び入眠、を幾度となく繰り返しているうちにとても印象的な夢を見ました。
それは学生服を身に纏った僕が矢継ぎ早に切り替わっていく数々の場面を一人称視点でただひたすら観測していく、というシンプルな内容だったのですが、興味深いのはそこに登場するあらゆるアイテム、人物、そしてロケーションなど全てのものが僕の中に内在する忌まわしい要素のみで構成されていたということです(『エターナルサンシャイン』の脳内世界のように脈絡なく情景がクロスオーバーしていく感じ)。
そんなこんなで夢から目覚める度に「ああ、あれ、そういえば嫌だったよな……」という慰めみたいな虚しい自己分析。頭から完全にすっぽ抜けていたような、しかし思い返せば根深くて息苦しい記憶ばかりでした。人間の生存本能なのでしょうか……。
映画の話に戻ります。『ジェラルドのゲーム』では少女時代の回想シーンが特に印象的です。それはある日食の日の出来事。そして主人公がトラウマを植え付けられる、まさにその瞬間の悍ましい記憶ですが、恐怖とともにどこか幻想的で温かみのあるニュアンスで描かれているようにも感じました。
当然ながらトラウマというのは当人にとって精神的苦痛そのものですが、数日前に僕が見たあの夢はどこかノスタルジックで、愛おしさに近い感情がほんの少しだけ含まれているようにも感じたのです。
記憶の底に沈めた“実像の掴めない何か”に人は最も恐怖を覚えるのかもしれないですね。そんな深いような浅いようなことをダラダラと反芻してみたりしました。内容はセンシティブですが、構図自体は普遍的だと思います。とても良い映画でした。
そういえば曲を書くって行為もある種のトラウマ克服、あるいは共存みたいなものに限りなく近いのかもしれないですね。最近なんだかモヤついてばかりです。生きるって難しい。個人的なトピックスばかりですいません。皆様くれぐれもご自愛くださいませ。
Gerald’s Game | Official Trailer
INFORMATION
Mom
22 歳のシンガーソングライター/トラックメイカー。
現行の海外ヒップホップシーンとの同時代性を強く感じさせるサウンドコラージュ・リズムアプローチを取り入れつつも日本人の琴線に触れるメロディラインを重ねたトラック、遊び心のあるワードセンスが散りばめられた内省的で時にオフェンシブなリリックに、Mom のオリジナリティが光る。また音源制作に限らず、アートワークやMusic Video の監修までも自身が担当。マルチな才能でファンを魅了し続ける。
2018 年初頭から本格的に活動を開始。同年11 月、初の全国流通盤となる『PLAYGROUND』をリリース。Apple Music『NEW ARTIST』にも選出され、渋谷O-nest で開催したリリースパーティは完売。2019 年5 月、前作よりわずか半年間のハイペースでリリースした2nd album 『Detox』は、TOWER RECORDS 『タワレコメン』に選出。渋谷WWW にてchelmico をゲストに招き開催したリリースパーティも完売させた。
RELEASE INFORMATION
21st Century Cultboi Ride a Sk8board
2020.07.08(水)release
Mom
Colourful Records/VICL65381/¥2,700(+tax)
1. 胎内回帰
2. あかるいみらい
3. 食卓
4. アンチタイムトラベル
5. マスク
6. レクイエムの鳴らない町
7. スプートニクの犬
8. ゴーストワーク
9. カルトボーイ
10. ハッピーニュースペーパー
11. Old Friend(waste of time)
12. 2040
13.(openmic)
All songs written & Produced by Mom
All songs mixed by Mom(except M8,M9)
M8,M9 mixed by Masahito Komori
Masterd by Tsubasa Yamazaki