Interview:Poko(ポコ)

──「面白い」と言っては失礼なんですけど、着眼点がほんとうに面白かったです。それにどのモデルさんの写真もかわいい。『PATTY Girl』は女体盛りなんだけど、とてもユーモラスに見えていて、いいな~と思いました。

太っている女性って、すごく偏見の対象になっている部分があるし、色眼鏡にかけられている。太っている女性に対してステレオタイプな眼が多いですよね。この会場で「受付嬢の太った女性は何キロだと思う?」というクイズをやりました。僕らが道で太った女性とすれ違った時、「あの子は何キロ」とか勝手に想像したとしても、その答え合わせをずっとしないで来たわけですよね。体重に限らず、答え合わせをしてこなかったことによる無理解が、太った女性に対する誤解の元になっていると思うし、偏見を生むひとつの要因になったりする場合もあると思うんです。だから今回、実際に答え合わせをしてみませんか、ということでやってみました。彼女は何キロってみんなに予想してもらって、実際、彼女が何キロかという答え合わせをしてもらう。体重というのは象徴的な意味でしかありませんが、そこから見えてくるものがきっとあるはず、と思ったんです。

──今回の<肌の地平面展>ではぽっちゃり女性の新しい魅力に触れた気がします。

部屋ごとにいろんな描き方をして、いろんな切り口でぽっちゃりした女性を知ってもらおうというのがありました。

──モデルさんを集めるのは大変なのではないですか?

基本的には応募してくれた方しか撮っていません。それに、モデルさんに対して金銭の享受とかもありません。僕も無料で撮るし、モデルさんには無料で出てもらう。お互いのメリットがある、ということが大前提なんです。そうしないと、お金を払ってモデルさんを雇うとモデルさんは単なる素材でしかなくなったりする場合があると思うんですよね。だからお互い気持ちを一緒にしてやりましょうと。その心の部分を大切にしたいと思っています。モデルさんも一大決心して応募してくれるわけだし、モデルさんを単なる物体とか、素材だけとして扱わないのが、僕のポリシーです。

──モデルの心を大切にしているから愛情にあふれた写真になっているのでしょうね。モデルの顔が出ていなのは?

僕の写真は基本、女性の精神というか、メンタリティに焦点を当てているのが主なんです。でも、今回の写真展は違うんです。世間の多くの方は、太った女性の体を、真正面から見たことがないと思うんです。ちゃんと見たこともないのに、常識とか既成概念とかで醜いと思っている。なので「一回、ちゃんと見てよ。そこがスタートでしょ」という。<肌の地平面展>は僕の最初の個展なんですけど、そこをスタート地点に設定して、肉体に焦点を当てた写真展にしたかったんです。なので、顔が写っていないのがほとんどになりました。

──肉体にフォーカスするために顔をあえて出さない、というわけですね。部屋こどにユニークなテーマが付けられていますが、これはテーマが先にあって撮影されたのですか?

モデルさんがいて、そこからテーマが決ることが多いですね。

──『STRING Girl』はボンレスハムなのが面白いですね。

彼女の場合は身体がいわゆる一般的なぽっちゃりさんなんです。僕がよく撮影するぽっちゃりさんではない。そんなに大きくないんです。そういう女性を撮った場合ってシルエットになっちゃうんですよね。シルエットの美しさになっちゃうんですけど、そのシルエットではなくて、量感とか肌の質感とかを出すためにはどうしたらいいか、ということを考えて糸を使ってみたみました。モデルさんと会ってそういう撮影のプランが浮かびますね。

──『HAMMOCK Girl』なども面白いですよね。ふとった女性が妙に軽い。

僕の写真というのは、すごく反シルエットで、質感というものにこだわっている部分があるかなと思っています。

──肉体美ですよね。

ええ。ファッション写真って、すごくシルエットになっちゃってると思うんですよね。服がきれいに見えるようにどんどん細い女性のモデルさんを使う。そういうのではなくて、ちゃんと重みのある女性としての立体感とかそういうものを出したかったんです。

──この展示会は『THE TRUNK MARKET』でクラウドファンディングでスタートしましたよね。目標金額が20万円のところ332,500円でサクセスしています。

普通なら全部持ち出しでとか、企業からの協賛でやったと思うんです。でもそういう紐付きになっちゃうと、たとえば自分で持ち出す場合は売れないとダメだから、売れるものをつくらざるをえなくなるし、企業の協賛もそうですよね。企業の協賛が取れるものじゃないとできない。だけど、単純に支援してくれる方がいるのだったら、僕は自由にできる。生活をするためとか、売るためとかじゃないところで自分の表現ができる、という意味ではクラウドファンディングはすごくいいなと思いましたね。

──来場者には女性の方が多いですね。

単純なエロとか、男性目線のエロの方がわかりやすくて簡単なんですけどね。僕が太った女性を描いているのがなんなのかというと、実は女性が感じている社会的な圧力からの解放なんです。女性って普通に生きているだけで、たとえば「化粧をしないで外に出るなんて」と言われたりとか、「女のくせに」とか「女なのに」とかいろんなことを言われる。太っていると余計に「あなたはどんどん太って醜くなるね」とか言われたり「太っていると着る服がない」というような社会的な状況もある。痩せている女性にしても、そういう世間からの圧力を日々感じて、一生懸命ダイエットしたりとか、運動してるんだと思うんです。ある意味、痩せた人というのはプレッシャーを感じて痩せているのかもしれない。太ってるっている人もいろんなことを言われるんだけど、痩せている人もまた言われて痩せていたりする。なので、こういう太った女性の写真を見ると解放されるみたいです。「あっ、よかったんじゃん、太ってても」って。女性が見て、解放感を感じる場合もあるみたいですね。「よかったんだ、別に太ってても」とか「素のままでいいや」とか。僕にしか出来ないところは、僕は本当に太った女性が好きだから愛情を持った視点で描ける。そういった写真を撮るためには、そこが大前提だと思うんです。

ぽっちゃり女性専門写真家・Poko写真展<肌の地平面展> DSC_1110
ぽっちゃり女性専門写真家・Poko写真展<肌の地平面展> DSC_1101

──とても楽しい写真展でした。ありがとうございました。

<肌の地平面展>は、僕にぽっちゃり女性の新たな魅力を垣間見せてくれた写真展だったと言える。今の僕なら「性格の良いスレンダー美女と、性格の良いぽっちゃり美女のどちらを選ぶ?」と聞かれたのなら答えは……。やっぱり性格の良いスレンダー美女かな~~。

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