ぽっちゃり体型の女性のヌード写真に魅了される

ぽっちゃり女性専門写真家・Poko写真展<肌の地平面展> cf3ec27c6b6d65942913f6e57210a6bc

ぽっちゃり女性専門写真家・Pokoによる初個展<肌の地平面展>が、下北沢・ギャラリーバロンデッセ1階+3階において9月22日から9月27日にかけて開催された。この写真展は女性のヌード写真展……なのだが、どのモデルもぽっちゃり体型の女性ばかりなのだ。

初めに断っておくと、僕はデブ専ではない。正確にいうと女性を体格で区別することはあまりない。もちろん、スレンダーな美女の方が好みではあるが、だからといってぽっちゃりの美女も嫌いではない。個人的には性格重視で可愛げがあればOK(基本的にはロリだ)。だから、ぽっちゃり女性を「ディスる」つもりはないが「崇拝」するつもりもない。なのに、ぽっちゃり女性をクローズアップした『肌の地平面展』という写真展があると知ったとき、『これは行かないといけない』と僕の中の何かが僕に告げた。僕はその僕の中の何かに押されて会場に向かうこととなった。

若者の街、下北沢にあるギャラリーバロンデッセは1階がカフェで、3階がギャラリーになっている。建物もとてもオシャレだ。1階のカフェにも作品は展示されていたのが、僕が見たのはメインである3階のギャラリーの方。細い階段を3階まで上がる。会場は5つの部屋に区切られていて、その部屋ごとにテーマがある。Pokoが書いた解説とともに写真を見てみよう。

※写真は展示風景を撮影したもので、実際の作品とは色や質感がかなり違っていることをお断りしておく。

HIDA Girl

「太った女性の体というのは、普通体型の女性よりもフォルムの種類が多いと思います。どの部分に肉がつく体質か、肉の柔らかさや硬さはどうか、急に太ったのか、昔から太っているのか、この頃すこし痩せたばかりか。そういった様々な要素で、彼女たちの個性的な肉体は出来上がっていきます。「なんだかヒダが多いなぁ」と思ったので、「HIDA Girl」と命名してしまいました。ぼっちゃりが好きでなくても、彼女のヒダの間に手を差し入れてみたり、柔らかなお腹の段々を撫でてみたりしたい方はいるのではないでしょうか?多くのフォトグラファーはシルエットを大切にしますが、僕は「彼女のヒダ」のような、質感を写すことを優先しています。」

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HAMMOCK Girl

「今年の夏、家にハンモックを吊りました。日常の中に、刺激と安らぎを同時に与えてくれるものが欲しかったからです。目論見は成功しました。このシリーズは、そんな大変気に入っているハンモックを使って、本来は重量感たっぷりの彼女らの肉体が宙に浮いているという、その浮遊感と非現実感の美しさを狙ったものです。日常に蔓延している平凡な重力から解放された肉体は、圧倒的に刺激的で美しいと僕は感じました。」

OYAKO Girl

「太った女性というのは、その大きさが写真からは想像しにくい部分があります。巨大な女性かと思いきや、実際に会ってみると小さくコロコロした人だった、ということも多いものです。このシリーズは、比較対象がある場合の体の大きさの印象をテーマにしています。ちなみに、大きい方の女性は身長170cm、体重150kg弱の大きさです。小さいモデルさんも成人の方ですが、なんだか親子のように見えてしまいました。」

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TRING Girl

「僕のところには、「自分では太っていると思っているけど、実はそれほど太っていない女の子」が相当な割合でモデルに応募して来ます。このモデルさんもその内のひとりです。ただ彼女の場合は、メンタリティーがとても興味深かったので、どうにか被写体として成立させようと思い、僕は糸を使って撮ることを思いつきました。糸という外部的な圧力で、肌の具体的な反発が描き出され、また糸によって分断された肌の連続性が、見慣れた肉体を新しい新鮮な造形にしていると感じています。」

LED Girl

「僕の良き理解者であった、元恋人がモデルをしてくれました。LEDは彼女が家から持って来てくれたもので、普通に庭などで使われているものだそうです。よく見ると点灯していない球などもあります。以前にやはり彼女で作った映像作品と、この度新たに作った映像作品の上映もしていますが、僕は自分で作った音楽を使えたこともとても満足です。僕は音楽が好きなのですが、基礎教育が無く、楽譜も読めないので、今回の音楽は、映像を見ながら即興で弾いたものを使いました。自分で弾いたものを後から聴くと、どう弾いているのかもわからず、とても不思議な気持ちになります。新作の映像では、過去に二人で暮らした部屋から聞こえる街の音も、音楽に合わせて使われています。」

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PATTY Girl

「太った女性は、食べ物を食べている姿と結びつけられることが一般的ですが、彼女らの肉体を美味しそうだと感じる場合は、ありませんでしょうか? この作品では、彼女の肉体をハンバーガーのパテと想定して撮影をしました。モデルになってくれた子は、身長が170cm、体重が150kg弱と、今まで僕が撮影した女性の中で最大でした。ガリガリの成人女性の三人分あるわけで、単純に希少ですごい肉体なわけです。」

<肌の地平面展>で展示されている作品を見て感じるのは、ぽっちゃり女性専門写真家・Pokoのぽっちゃり女性に対する愛情だ。Poko自身は小柄で普通体型。しかし、その普通の身体でぽっちゃり女性の総てを受け止めようとする。困ったことにひとりのぽっちゃり女性に愛情を注ぐタイプではなくて、複数のぽっちゃり女性に愛情を燃やすタイプらしい。しかし、それは全世界のぽっちゃり女性を救いたい、という使命感からそうさせているよう。だからPokoを好きなぽっちゃり女性は何キロあろうがその重しでPokoをつなぎ止めておくことは出来ない。多分、Pokoは何億トンの重量でもへっちゃらなのだろう。

そして、僕の中の何かが<肌の地平面展>を見ておくように告げたのは、Pokoのそんな一途な愛情と共に、女性の美しさは容姿だけにあるのではなく、フォルムにあるのだと再確認させるためだったようだ。<肌の地平面展>の世界が魅せるぽっちゃり女性のフォルムのなんと美しいことか。西洋美術の女性のボディラインの美しさ、そしてアール・ヌーヴォーに通じる美しさが<肌の地平面展>にはあった。

Profile:Poko(ポコ)

1981年東京出身、千葉県育ち。
ぽっちゃり女性専門写真家。個人的な趣向でふくよかな女性と関わるうち、彼女達が社会的な偏見や固定化された価値観の中で苦しんで生きて来たことを知る。
「太った女性の美しさを広めることで、無駄な偏見を無くしたい」との思いから、2011年、website「トウキョウMINOLI堂」を開設。
新しい美意識を創り、広め、その中で活き活きと生きるぽっちゃり女性の姿をみたいと願っている。

写真を通して、太った女性の魅力や美しさを広めたい

Pokoは物心がついたころからふくよかな女性に惹かれていたという。2011年よりサイト「トウキョウMINOLI堂」を立ち上げ、ぽっちゃり女性の写真作品を発表開始。2014年3月より〈月刊デジタルファクトリー〉にて電子書籍としてぽっちゃり写真集の配信を開始。2014年5月、『肌の地平面』シリーズをスタートさせた。今回はPokoの初個展となった。作品は総て今年の春からの撮り下ろしたものだ。

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