眼前で繰り広げられているのは、重要文化財である聖徳記念絵画館が、さまざまなカラー、さまざまなデザイン、さまざまなモチーフで彩られる一夜限りの七変化。
その光景は現実かと見紛うほどの圧倒的なリアリティとスケール感。訪れた者たちは、息を呑み、1分間のプロジェクションマッピングの数々を目に焼き付けていた。
11月11日(金)〜11月13日(日)に、明治神宮外苑を舞台に開催された“光の祭典”<TOKYO LIGHTS 2022(トウキョウ ライツ ニーゼロニーニー)>。その最終日に開催されたプロジェクションマッピング国際大会『1minute Projection Mapping Competition』授賞式の模様をレポート!
TOKYO LIGHTS 2022 – プロジェクションマッピング国際大会 – ダイジェストムービー
記念すべき10回目は、延期を経て再開催。
光の祭典エリアは没入&映えスポット!
まず<TOKYO LIGHTS>とは、日本が世界に誇る国際都市・東京に新たな光を灯すことを目指し、エンタテインメントやアートを通して、世界中に希望を届ける“光の祭典”として2021年に発足したイベント。そして同イベントのメインコンテンツである『1minute Projection Mapping Competition』は2012年にスタートしたアジア最大級のプロジェクションマッピング国際大会であり、今年は記念すべき10回目の開催を迎えた。
その全体像やイベントが掲げているテーマなどは、2021年に筆者が行った「対談:<TOKYO LIGHTS>演出家・ 潤間大仁 × レーザーアーティスト・YAMACHANG」のインタビュー記事もぜひ参考にしてほしい。
話を戻そう。そもそも今年の<TOKYO LIGHTS>の開催スケジュールは、9月17日(土)〜9月19日(月・祝)。しかし、『1minute Projection Mapping Competition』の授賞式を予定していた19日がまさかの台風接近による中止に。そのため内容を一部変更して、11月11日〜11月13日に再開催される運びとなった。
今回のQeticのレポートで訪れたのは、最終日の13日。神宮外苑の銀杏並木を通り抜け、受付を通ったあとにまず出迎えるのは、“光の祭典”エリアだ。このエリアの総合演出を手掛けるのは、先ほどのインタビューで紹介した潤間大仁氏。今回は「CIRCLE OF LIFE」をコンセプトに、陸海空の3つの世界を巡る光の旅が表現されていた。
デジタルサウンドアート×リアルパフォーマンスの融合に没入しつつも、このエリアはまさに映えスポットの連続! ケータイ片手に巡る来場者も多く、その数分後にはSNSのタイムラインは“光の旅”で埋め尽くされることに。
そして光の旅を終えると、目の前には荘厳な趣の聖徳記念絵画館がどどんと登場。ただし、まだその段階では、闇夜に鎮座するいつもの聖徳記念絵画館だ。それがまさか数分後には、あんな姿、こんな姿になるなんて──。
ファイナリスト19作品が上映
現実にはありえない光景ゆえのカタルシス
ついに、19時からは『1minute Projection Mapping Competition』の授賞式がスタート! 今年は世界55の国と地域から241組のエントリーがあった中で、今回の授賞式ではコンペティションで最終選考に選ばれたファイナリスト19作品のプロジェクションマッピングが、聖徳記念絵画館に次々と投影された。
先ほどまでは花崗岩による一色の姿で佇んでいた聖徳記念絵画館が、1分というスピーディーかつ凝縮された時間内で、各国のクリエイターが表現するプロジェクションマッピングで次々と変化! 現実にはありえない光景ゆえのカタルシス──個人的にはそこが、聖徳記念絵画館に映し出す最大の理由であり、魅力であるように感じた。
その点、準グランプリとオーディエンス賞を獲得したDecideKit(タイ)の「Owari(終)・Tsuzuku(続)(オワリ ツヅク)」は、序盤の聖徳記念絵画館が崩れ落ちる様に現実では見られないからこその快感があり、さらにそこから建物全体が生命の繭となって羽化していく展開は、文字通り“破壊と再生”を描き出していて見事だった。
そして、グランプリ(東京都知事賞)に輝いたEPER DIGITAL(ハンガリー)の「Elemental constructions」は、ノミネート作品の中で明らかに異質だった。ヴィヴィッドな原色とシンプルな図形が音楽に合わせて躍動&融合していく演出は、思考ではなく直感に訴えかける“SIMPLE IS BEST”な作品で、グランプリは満場一致だったはず。
入賞者の作品に共通しているのは、聖徳記念絵画館を“平面”ではなく“立体”として捉えているように感じたこと。単にプロジェクションマッピングを映し出すだけならば、聖徳記念絵画館ですらスクリーンの域を出ない。ただし、聖徳記念絵画館を立体として捉え、プロジェクションマッピングによって生まれ変わらせることこそが、この場所でやる意味であり、最も観客が見たいものであり、審査のポイントになっていたのではないだろうか。
昨年の『1minute Projection Mapping Competition』はオンラインでの授賞式だったが、今年は受賞したクリエイターたちが来日し、スピーチで作品に込めた想いや喜びのコメントを寄せた。そして審査員を務めたプロジェクションマッピングの世界的識者の石多未知行氏、クリエイティブディレクター・Melissa Weigel氏、演出家/クリエイティブディレクター・古屋遙氏らに加えて、ラストには小池百合子東京都知事も登場して授賞式は幕を閉じた。
こうやって携わる者たちが一堂に会することができたのも、2020年以降にコロナ禍となってからは、もはや一筋の“光”だ。来年はその光がさらに太く、長くなり、輝く未来を目指して新たな東京を照らすことに期待したい。
Text by ラスカル(NaNo.works)
TOKYO LIGHTS 2022
:2022年11月11日(金)〜11月13日(日)
明治神宮外苑 聖徳記念絵画館(新宿区霞ヶ丘町1-1)及び明治神宮外苑 総合球技場軟式球場
共催:TOKYO LIGHTS 2022実行委員会
主催:東京都
後援:新宿区
企画協力:一般財団法人プロジェクションマッピング協会
制作/運営:エイベックス・エンタテインメント株式会社