青山礼満(アオヤマレマン)
CLUB OPUST代表
1993年3月15日
東京都世田谷区下北沢出身
認めてもらいたかった。
僕はルックスも良くないし、そもそも期待されてなかった。
当時は新人の僕が売れるなんて誰も思ってなかっただろう。
今でもそうだが、自分は特別だって思いたいときがある。
誰しも一度はあるんじゃないだろうか
自分で自分のことを平凡だと認めたくない。非凡だと思いたい。
でもそれは、
自分で評価することじゃなく、誰かに評価してもらうもの。
認めてほしかった。
お店に来てくれてることだったり、シャンパンが入ったり、全て簡単なことじゃない。
傍から見たら、いいお客様ができてラッキーだなって思われただろう。
営業中に起きていることが全てじゃない。
僕という人間の24時間が売上に変わると思った体験だった。
今思えばあの日、
一晩ですべてが変わった気がした。
何年もホストをやって思うことは、誰しもが掴めるわけではないということ
こういう体験をせずに、辞めていく人もいるんだろう。
それまでだらだらと流れていた時間が急に早くなった。
1日の仕事のスタートがお昼からになった。
ランチいって、買い物して、そのまま同伴出勤。
営業が終われば、そのままアフターに出た。
そんな日々が約3ヶ月。
休みの日も一緒にいた。
やっとの思いで掴んだお客様だから、嫌われないように離れないように。
毎日、お客様が飼ってる犬の散歩もした。僕も犬みたいなもんだったのかもしれない。
リードを引っ張っているのにリードを付けられている気分。
初めて大きな給料をもらったとき、お客様から「伊勢丹に集合して!」と言われた。
やっと好きなものが買える。
パンパンになった給料袋を持って伊勢丹に向かった。
彼女は僕に一言
「バッグほしい」
僕は震えた声で
「全然いいよ」
と言った。
給料は売上を会社と折半。
そして更に、僕はその給料を女の子と折半。
買わなかったらお客様が切れてしまうと思った。
でも、ただただ売れたいと思っていた自分はそんな状況でも苦に感じなかった。
あのセリーヌのバッグ、まだ大事に使ってくれているだろうか。
たまにふとそう思うときが今でもある。
ただ、毎日一緒にいると自分の自由な時間が欲しくなる。
誰も信じないような嘘を並べて抜け出したことも何度かあった。
従業員とコミュニケーションを取る時間がなかなか取れず、
売上も上がりナンバーも上がったけど
みんなに認めてもらっている感じはしなかった
僕が認めてもらうにはもう少し先の話だ。
その話はまたいつかしようと思う。
変わった人だったが、とても繊細で人間らしく、この人から多くを学んだ。
「水商売をやるなら稼がないと意味がないよ」
「男の時計はGSHOCKかROLEX」
「あなたからしたら何人かのうちの一人だけど、私達からしたらあなた一人なんだよ」
「誰かが困ってるとき、すぐに駆けつけてあげるあなたでいてね」
最初に買った時計は、この人の影響でROLEXにした。
女性的で、それでもって僕よりも遥かに男らしかった。
元から男らしい性格だと思っていたけど、本当の意味で男らしくなれたのはこの人のおかげだ。
男らしさとは、いろんな後輩を束ねてる兄貴みたいなやつのことじゃない。
男なんだから泣かないとか、弱音を吐かないとかじゃなくて
人にやさしく思いやりがあり、愛情深いことを指すって、この人が教えてくれた。
傍から見たらとんでもない関係だし、とんでもない人だったと思う。
でもこの3ヶ月の経験があるからこそ、今の僕がいる。
ホストとして、男として、なにより人として成長させてもらった。
またいつか伊勢丹の下のコーヒーを飲みましょう。
あの日、あのとき、お店に来てくれてありがとう。