昨年から続くコロナ禍が猛威をふるい、今年のゴールデンウィークはおうちで過ごす人も多いのではないでしょうか? おうちにいる機会に、ゆっくりと写真を眺めたり、こだわりの質感を感じることのできるアートブックにも注目が集まっており、Qeticでも『アートブックノススメ』として、毎月編集部がピックアップしたアートブックを紹介しています。
今回はゴールデンウィーク特別版として、クリエイターやアーティストのオススメの書籍をご紹介! アーティストたちの本棚にはどんな本が並んでいるのか、中でもオススメの一冊とは!? リアルな本棚の写真と共に、お気に入り書籍の紹介コメントも。長く休みが続くゴールデンウィークのお供となる本を見つけられるかも!
今回は、〈梅レコード〉からレーベル主催Precipitationとの共作アルバム『夢の通信 – Dream Communication』をカセットとデータでリリースしたYamaan/Mirage Areaが『遠い水平線』/アントニオ・タブッキをピックアップ!
Yamaan/Mirage Area – 『遠い水平線』
仕事の帰り道に昭和時代の名残を感じるようなタバコ屋と古本屋が一緒になったお店があって、埃を被ったような古本が100円で売られてたりするんですけど、そこで偶然表紙とタイトルに惹かれて購入した本です。とても不思議な話で読んだ後とても余韻が残りました。
イタリアのとある港街の死体安置所で働く主人公が、身元不明の他殺死体が生前何者だったのかが無性に気になってしまい、街へ出て捜索をはじめるという話です。
サスペンスな方向に話が進む訳では全然なくて、主人公は身元不明者の情報の断片を探して当てどなく街を彷徨い続けます。次第に主人公の思考の中で死者と生者の境界、「かつて存在していた」と「今存在している」との境界、そして主人公自身はどんな存在なのか、なぜこんな捜索をしているのか、全てが曖昧になっていきます。
この本の読後の不思議な感覚についてはなかなか説明出来ないので、ぜひ機会があれば読んでいただきたいです。
この本の中にとても好きな一文があって「彼は、暗闇でラジオを聴くのがすきだった。遠い感じがするからだ。」という文章なんですけど、この文章からは僕が好きなアンビエントミュージックを聴いている時にも近い感覚を感じました。
PROFILE
Yamaan/Mirage Area プロフィール
アンビエントやヒップホップなどを行き来しながら活動中。近年はVHSのコラージュ映像に合わせてシンセサイザーを演奏するライブ活動も行っている。
RELEASE INFORMATION
夢の通信 Dream Communication
2021.05.03(月)
Precipitation & Mirage Area
現在、梅レコードのBandcamp、道程Records、小岩BUSHBASHにて取り扱い中。