久々の更新となる今回は、これまでとちょっと異なった内容でお届けします。これまでかっこのよろしいアジアン・インディー・ミュージックを知ってもらおうとここでの連載や日本盤のリリース、来日ツアーなどやってきたが、今年は東京を代表するフェス<SYNCHRONICITY>と連動させてもらえることに。

アジア各国より4バンドが<SYNCHRONICITY’18>に出演し、この4バンドのうち、3バンドが初来日となっている。この機会に彼らを知ってもらい<SYNCHRONICITY’18>に臨んでもらうべく、紹介したい。

アジアン・インディー・ミュージックシーン
〜vol.6 <SYNCHRONICITY’18>〜

1.UDD (Up Dharma Down) from フィリピン

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まずはフィリピンより、「UDD(Up Dharma Down)」(ユーディディー / アップダーマダウン)という4ピースバンドだ。US/UKインディーロック、アシッドジャズ、ネオソウル、シンセポップ、日本のシティポップなど多様な音楽をクロスオーバーさせ、これまで三枚のフルアルバムをリリース。自国では10,000人規模の単独公演を行うほどの規模で、Red Hot Chili PeppersやThe xx、Bloc Party、Incubus、Tahiti 80などのオープニングアクトとしても演奏した実績がある。

Up Dharma Down / All The Good Things

まだこの連載ではフィリピンのミュージックシーンに触れていないので、ちょっとその辺りにも触れつつ、紹介したい。フィリピンはこれまで連載で取り上げた台湾、香港、マレーシア、シンガポールなどとは全く音楽的な背景が異なる点が多い。アメリカによる植民地時代を経た政治的な過去の背景も影響しているのか、

「一般的にポピュラーな音楽は、American Top 40がそのままという感じ。フィリピーノは音楽が大好きで、クラブやバーやライブハウスに出かけては楽しんでる。ただそのマジョリティは、日本みたいに特定のアーティストの演奏をしっかり聴きに行くっていう感じではなくて、音楽をつまみに酒を飲んで騒ぐのが一番の目的だね」

と語るのは、UDDのマネージャーであり、フィリピン最大手インディー・レーベル主宰でもある、〈Terno Recordings〉のToti Dalmecion。そういえばアジア各国を周った際も、フィリピンのお客さんの反応は他国とは全く違って、とにかく熱狂的でライブ中もずっとうるさい笑。確かにこれらの点では他のアジアの国よりずっと、アメリカに近い部分がある。

その辺の庶民的なバーやレストランで演奏しているバンドなんかでも、演奏力が非常に高くて、とても上手い。その点についてもTotiは、

「きっとアジアの人たちは、フィリピーノは音楽が“上手い”のは知っていると思う。けれど、フィリピンの音楽は他のアジアの音楽に比べて全く、国外には知られていないんだ。それは、自分たちの音楽を追求していこうという音楽への”アティチュード”が弱いからだと思う」

とのこと。そんな中でUDDは2006年に1stアルバムを出してから、フィリピンの中で国外に進出すべきバンドだ、と強く言われてきた。ただ、彼らはフィリピンの音楽シーンのクオリティを底上げすべく、タガログ語と英語の曲をバランスよく混ぜ、活動を行っている。1stアルバムと現在の彼らの音楽を聴き比べると、その音楽性が大きく異なっており、常に自分たちの音楽は何かを追い求めているのが分かる。

そういった”アティチュード”が認められ、フィリピンではインディーズでありながらコカコーラ、ヒュンダイ、マクドナルド、シンガポール観光局、リプトン、オレオなどのグローバルカンパニーとのタイアップにも選ばれてきた。そんな「世界水準だけどフィリピンの音楽」、というのをぜひ聴いてみてほしい。4月4日(水)には日本独自編成のベスト盤『Sun Shower』を<SYNCHRONICITY>とのダブルネームでリリースするので、そちらもぜひチェックしてもらえればと!

Up Dharma Down / Sugurado

タガログ語で歌われている新曲”Sigurado”。MVの撮影は日本。

2.Elephant Gym from 台湾

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おそらく今回出演の4バンドで、一番日本における知名度が高いのはこのElephant Gym。他3バンドは初来日だが、Elephant Gymは既に複数回来日済みだ。台湾は高雄出身の3ピースバンド。

この連載のvol.5でインタビューもしていて、ぜひそちらを読んでいただければ彼らについて知ってもらえると思うが、2年前のインタビューなのでそこから現在までの話を。

初期はマスロックを主体としたインストが多かったのだが、最近の彼ら自身はインストバンドという単純なレッテルを嫌い、歌を入れたり(ベースのTiffが歌うこともあればゲストボーカルを入れることもある)、これまでとは異なる音楽性の影響も見え隠れしていて、進化している。そして今年はなんと、USインディーレーベル〈Topshelf Records〉から過去3作品をCD&レコードでリリースし、アメリカでもここ日本でも一層、ざわざわしてきている感がある。新曲もコンスタントに創っているようで、今年は更に動きが出てきそう。台湾を飛びだし、欧米やここ日本でより活躍が期待できる注目のバンドだ。

ちらは出来立てほやほやの新曲、本日326に公開されたばかりの“月落 / Moonset”のミュージックビデオ。上記で述べたような方向性や進化がはっきりと見てとれると思うので、ぜひ聴いてみてほしい。ボーカルはベースのKTによるものだ。

Elephant Gym / Moonset

3.GDJYB from 香港

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今回が初来日となる香港のGDJYB。彼女らは自らの音楽について、「マスロックとフォークミュージックを、ホングリッシュ(香港訛りのシンプル英語)でミックスした”マスフォーク”」と標榜している。そんな音楽性に加えバンド名も特徴的だが、ジーディージェイワイビー、とそのまま読む。何だか既に興味深いと思うが、その期待を裏切らない、オリジナルなスタイルを見せつけてくれる。

まずはそれを聴いてもらうのに、今月公開されたばかりの新曲“Why Don’t You Kill Us All”を。映像が素晴らしく、更にその曲に込められたアイロニックなメッセージ性がひしひしと伝わってくる。

GDJYB / Why Don’t You Kill Us All

もう1曲、上記とは少し音楽性が異なる方向性の曲を。こちらは昨年10月に公開された新曲で、なるほどこれがマスフォークね! って感じになれる文句なしの楽曲です。

GDJYB / Backspace

上記2曲は、2016年12月に1stフルアルバムをリリースした後、ベースのメンバーチェンジを経て創られた楽曲。昨年は、台湾で最も権威ある音楽賞「第28回台湾ゴールデンメロディーアワード・ベストミュージカルグループ」にノミネートされるなど、香港以外でもそのオリジナリティが届き始めたこのタイミングでの来日だ。

この連載のvol.1は、彼女らへのインタビューなどを通して香港のインディー・ミュージックシーンを取り上げたものでした。もし彼女らを通して香港のバックグラウンドが気になったら、こちらもぜひ。

4.Moving and Cut from タイ

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上記3バンドは実際に自分が見て、リリースや来日に関わってきたのだが、このバンドは新代田のLIVE HOUSE FEVERを通して、<SYNCHRONICITY>へのブッキングに至った。ちょっと話は逸れるが、FEVERの店長・西村さんはここ何年か、タイを中心にアジア各国を周り(その影響ではないが、元々顔の濃い西村さんの現在は、髭にアフロという見てくれで完全に日本人ではない)、同じように日本とアジアの音楽を繋げようとしている。FEVERのブッキングでタイへ日本のアーティストを連れて行ったり、海外のアーティストを積極的にFEVERでプレイさせたりと、積極的に面白い動きをしている。

話を元に戻して、Moving and Cut。こちらも今回が初来日となるバンコク出身、次世代のタイ・ポップを担うといわれる五人編成のバンド。タイ・ポップは何となくタイの陽気なイメージで、煌びやかなものを想像するのだけれども、このバンドはそういったイメージとは違った。日本の音楽が持つ、侘び寂びのエモーショナルな音の響きに通ずる部分を感じる。そこにタイ語の柔らかな響きがマッチし、閑寂だがどこか優しく琴線に触れる楽曲が多い。

Moving and Cut – ปล่อยให้ตัวฉันไป

タイのメジャーバンド「POLYCAT」が彼らの曲をカバーするなど、楽曲の完成度の高さはバンコクのインディーズシーンでも群を抜いているとのこと。1stアルバムはしばらくの間ソールドアウトとなっていて廃盤状態だそうだが、ここ日本で今回の初来日に合わせた日本盤のリリースがあるようなので、気になる方はこちらも要チェック。

今回は他のコラムと違って、少し告知や宣伝寄りのものでした! が、せっかくアジアから4バンドも来日するので宣伝したく、<SYNCHRONICITY>に来る人は勿論チェックしてから来てもらいたいし、来ない人もこれを機に知ってもらえればと思います。

EVENT INFORMATION

<SYNCHRONICITY’18>

2018.04.07(土)
open 13:00 / start 14:00(時間予定)
TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE、clubasia、VUENOS、Glad、LOFT9

各種チケット

SYNCHRONICITY’18 ¥5,800
SYNCHRONICITY’18 After Party!! ¥2,800
SYNCHRONICITY’18 & SYNCHRONICITY’18 After Party!! 通し券 ¥8,000

販売期間:1月27日(土)正午12:00~

※前売券完売の際は、当日券の発行はございません。

詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

Sun Shower

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2018.04.04(水)
UDD (Up Dharma Down)
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