「若けりゃ良いってもんじゃない」
27歳を超えたくらいから、何度頭をよぎったかしら。人間は皆平等に歳を取るもの。若さや可愛さだけでは、やっていけなくなるのがアラサー女子。若さと可愛さの代わりに何が必要かしら…
第八回
デヴィッド・ボウイとカトリーヌ・ドヌーヴが主演の「The Hunger」(邦題:「ハンガー」)という吸血鬼映画がある。
80年代初頭のニューヨークの街が舞台で、80年代に憧れていた当時の私は音楽を聴くように何度もこの映画を観た。
この映画に出会うまで吸血鬼は古典のものだと思っていたから、まさに悠久の時を生きる吸血鬼が新しい時代に出会うときのようにこの映画を見ていた。デヴィッド・ボウイとカトリーヌ・ドヌーヴの2人が一緒にシャワーを浴びるシーンがあまりにもかっこいいと思った。
知人から「青春時代に自分が生まれた時代の文化に興味を持つ人は多い。」と聞いたことがある。その人は60年代生まれで、若い頃は60年代の音楽や映画を貪るように楽しんでいたらしい。かなり眉唾ものの意見だが、1988年生まれの私も高校生の頃から次第に80年代に憧れていった。
きっかけは、楠本まきという漫画家の「KISSxxxx」という漫画で、その漫画は4人編成のバンドとそのボーカル担当カノンのガールフレンドでもありベース担当蟹ちゃんの妹である“かめの”という少女と周辺人物によって描かれる群像劇であるのだが、作中には80年代の実在のバンドのCDジャケットや人名、曲名が多く登場する。例えば、The CureやBAUHAUSやEinstürzende Neubautenなどだ。最初の頃はその漫画を読むだけで楽しんでいたのだが、作中に登場するバンドのCDを徐々に買い集め、漫画を読まなくなってからもそれらの音楽はずっと大好きだった。
とりわけ好きだったのがBAUHAUSで、BAUHAUSの「1979-1983」という2枚組アルバムの2枚目には、デヴィッド・ボウイの「Ziggy Stardust」のカヴァー曲が入っていた。そして、冒頭に紹介したデヴィッド・ボウイが主演の「The Hunger」には、冒頭でBAUHAUSのライブシーンが登場する。そのシーンで演奏されているのは彼らのデビューシングル「Bela Lugosi’s Dead」だ。
ベラ・ルゴシ(Bela Lugosi)はトッド・ブラウニング監督の映画「魔人ドラキュラ」で吸血鬼役を演じた有名な俳優である。オールバックで黒いマントを翻す貴族のような吸血鬼のイメージはこの人が作ったものだ。
そして、この「Bela Lugosi’s Dead」という曲の中では、ベラ・ルゴシがあたかも本当に吸血鬼かのように歌われている。
Bela Lugosi’s dead(ベラ・ルゴシの死)
Undead(不死身) undead(不死身) undead(不死身)
Bela Lugosi’s dead(ベラ・ルゴシの死)
Undead(不死身) undead(不死身) undead(不死身)
引用元:Bauhaus – Bela Lugosi’s Dead Lyrics
という歌詞を何度も繰り返す。
「The Hunger」は、不死身であるはずの吸血鬼の男が死ぬ物語だ。それも、それまでの吸血鬼とは違い、太陽の光を浴びて灰になるわけでもなく、心臓に杭を打たれて倒されるわけでもなく、ある日突然ものすごいスピードで老化が始まり、人間のように老いて死ぬのだ。死ぬはずのない吸血鬼という存在が、普通に死んじゃうのだ。
そして、クラブではしゃぐ若者やローラースケートでかける若者などの姿がこの映画には度々登場する。刹那的な時間感覚の若者の姿と、永遠の命を持つ吸血鬼の女と、信じていた永遠の命が消えつつある吸血鬼の男。この対比的な描写が、まさに80年代の空気感を表現しているように感じてならない。
何も変わらずに時だけが喧騒の中で過ぎ去っていってしまうような錯覚は、妄想であるにせよかなりの恐怖だ。
楽しい時間の中で、何も変わらないと信じていたのに、気づいたらもう直ぐ自分の人生が終わりを迎えようとしている・・・想像しただけで泣きそうになる。だけどその雰囲気が私にとっての80年代の印象であり退廃的な美しさでもあるのだ。
2010年代もあと残すところ2年半の現在、すべての命には死が訪れることを私は概ね受け入れたつもりでいる。高校生の頃のように吸血鬼になりたいとは思わなくなった。・・・はずである。いや、やっぱりちょっとはまだ吸血鬼になりたいかもしれない。そういえば映画好き仲間から、ジム・ジャームッシュ監督の2013年の映画「Only Lovers Left Alive」(邦題:「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」)を勧められた。まだ観ていないのだが、現代の吸血鬼が何を思いながら永遠の命を生きているのか気になって仕方がない。
ザキ
告知
ザキがパフォーマー&モデルとして参加しているNYOTAIMORI TOKYOの写真集が8/18(金)に発売されます!
【写真集概要】
写真集タイトル「NYOTAIMORI TOKYO photo book」
ページ数:100頁(予定)
価格:¥3,500+税
通販サイト:https://nyotaimori.booth.pm/
写真集特設ページ:https://www.nyotaimori.info/photo-book
展示会初日にはスペシャルな一夜限定ショー
写真集出版に併せ、8/18(金曜日)~8/21(月曜日)まで、原宿のUltraSuperNew Galleryで大型パネルでの写真作品の展示・販売を行います。初日の8月18日には、同ギャラリーにて発売記念パーティも開催。パーティでは、茶道教室SHUHALLYの庵主 松村宗亮 氏をお迎えして怪談にちなんだNYOTAIMORIショーをご覧いただけます。
【NYOTAIMORI TOKYO展示会概要】
会期:2017年8月18日(金)~21日(月)
会場:UltraSuperNew Gallery
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-1-3
会場HP:http://gallery.ultrasupernew.com
時間:8/18(金)12:00-17:00 8/19(土)20(日)12:00-21:00 8/21(月)12:00-19:00
展示観覧無料
【発売記念パーティ、ショーについて】
日程:8/18(金)
時間:open 19:45 / show start 20:15 / close 21:30
会場:同上
ショーチケット前売券と写真集のセットを1000円引きにてBOOTHにて限定販売。
https://nyotaimori.booth.pm/
ショーチケット当日券(3000円)は当日空きがある場合のみ販売いたします。