日曜日の午後に開催される<Brunch In the Park>から始まり、昨年大成功を収めた初のオールナイトイベント<Brunch in Weekender>に至るまで、バルセロナを発信地に10年間に渡り、実に多くのイベントを実現させてきた。バルセロナ以外にもリスボン、ロンドン、サンティアゴ、パリなど、世界の様々な都市でイベントを開催し、遊牧民のように定住しない自由なスタイルは“ノマド・フェス”と呼ばれるようになった。そんな<Brunch>の集大成とも言えるビッグフェス<Brunch! Electronik Festival>が今年の8月11日〜13日の三日間に渡り、バルセロナ市内に位置する3つの有名スポットを会場に開催されることが決定した。

海岸に近く、様々なビッグイベントが開催されている「Parc del Fòrum」では、8月11日、12日にテクノ、テックハウス、メロディック、ハウス、ライブの5つのステージが用意され、自然に囲まれた庭園「Jardins de Joan Brossa」では最終日の13日にデイイベント、バルセロナ有数のローカルクラブ「Nitsa Club」では毎夜アフターパーティーが開催される。昼夜問わず、エレクトロニックミュージック界で活躍するあらゆるジャンルのアーティストの最先端サウンドを存分に楽しめるコンテンツとなっている。

出演には、ME B2B Dixon、Anotr、Boyz Noise B2B VTSS、Carl Cox、Jeff Mills、FKJ、Hot Chip、Keinemusik(&Me, Adam Port and Rampa)、Little Dragon、Marco Carola、Marcel Dettmann、Nina Kraviz、Paul Kalkbrenner、SBTR、Underworld、Farrago、Tama Sumo、Airod、Axel Boman、Sonido Tupinambaなど、10周年に相応しい文句なしの一流アーティストが集結する。

オーガナイズチームの1人で、プロジェクトマネージャーのマーク・サンチス(Marc Sanchis)に<Brunch! Electronik Festival>について、以下の様々な質問を投げかけた。

INTERVIEW:Marc Sanchis

──「Brunch! Electronik Festival」を開催するに至った経緯を教えて下さい。

私たちは、これまで主にサンデーデイイベントを開催してきました。今年で10周年を迎えることもあり、これまでのイベントの集大成として3日間かけて<Brunch! Electronik Festival>を開催することを決意しました。多数の異なるステージ、ライブアクト、そして、オールナイトで開催することは、私たちにとって、とてもエキサイティングな冒険と挑戦の場となりました。

──フェスティバルを開催する上で最も苦労した点はなんですか?

素晴らしいフェスティバルを作り上げるためには、常に多くの課題があります。私たちは、参加者に素晴らしい体験を提供することに最も重点を置いています。フェスティバルを成功させるためには、参加者にとって、楽しく思い出に残るような体験を提供することが重要だからです。多様なアクティビティを提供し、行列を管理し、清潔な施設を提供し、顧客の苦情や懸念に迅速に対処するように心掛け、貢献しています。

デイイベントからビッグフェスへ。10周年を迎える<Brunch! Electronik Festival>の実態に迫る──Interview & Text by 宮沢香奈 column230726_brunch-electronik-festival-01

──会場内に新たに「Espai Be Hub!」エリアが設置されましたが、そこで提供されるもの、食料援助やその他の社会活動について教えて下さい。

「Espai Be Hub!」は、持続可能性と循環性を促進するためのスペースです。この先駆的なイニシアチブは、環境への配慮と責任ある実践の重要性に対する意識を高めることを目的としています。フェスティバルの会場内に設置されるのは初めてですが、「Observatori Contra l’Homofòbia」が主導するLGBTIQ+とフェミニストのブース、NGOアバターと「Espai Segur」が運営する安全で予防されたパーティーのためのブースが設けられ、参加者が抱えるあらゆる問題に対して心理学者によるサポートが受けられるスペースとなっています。

デイイベントからビッグフェスへ。10周年を迎える<Brunch! Electronik Festival>の実態に迫る──Interview & Text by 宮沢香奈 column230726_brunch-electronik-festival-06

──10年の集大成ということもあり、かなりの豪華ラインナップですが、出演者はどのように選んだのでしょうか?

私たちは、エレクトロニック・シーンにおけるサブジャンルを多数組み合わせた特別なラインナップにしています。テクノ、ハウス、そして、テックハウスに至るまで幅広いジャンルからアーティストをブッキングしています。例えば、レジェンドのUnderworldをはじめ、Hot Chip、Little Dragon、SBTRK、FKJなどのエレクトロニック・ミュージック・バンドのライブ・アクト・ステージを初めて開催します。また、Boyz Noise b2b VTSS、me b2b Dixon、Jimi Jules b2b Trikkなど、<Brunch! Electronik Festival>でしか見れないエクスクルーシブなB2Bショーも用意しています。
私たちは、フェスティバルのあらゆるムードに合うような幅広い音楽の選択肢を皆さんに提供することがとても重要だと思っています。

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デイイベントからビッグフェスへ。10周年を迎える<Brunch! Electronik Festival>の実態に迫る──Interview & Text by 宮沢香奈 column230726_brunch-electronik-festival-03

──ヨーロッパのフェスは、世界各地で活躍する一流アーティストから旬なアーティストが出演し、豪華なラインナップが魅力のひとつですが、その一方で日本を含むアジア圏で活躍しているアーティストの出演が少ないと感じています。それについてどのように思いますか?

私たちは、もっと多くのアジア人アーティストが出演するイベントを開催したいと思っています。常に多様なアーティスト、マルチジャンル、マルチカルチャーのラインナップを揃えようとしていますし、新しい道を行くのが好きなのです。だから、ラインナップをキュレートする際にはあまり通ったことのない道を通り、自分たちの“コンフォートゾーン”を離れるようにしています。しかし、ヨーロッパ市場では、エレクトロニックミュージックやテクノシーンにおいて、アジア人アーティストが不足しているのかもしれません。

──フェス開催まであとわずかですが、10周年を迎えるにあたり、今の意気込みを教えて下さい。

私たちにとって<Brunch! Electronik Festival>は、これまでで最大のプロジェクトになります。もう1年近く企画に費やし、取り組んでいます。10周年という節目は、ブランドにとっても多くの新しい変化やアップグレードがもたらされます。今年の初めには、ロゴとブランドのデザインを一新し、新しいグラフィックの方向性を打ち出し、アートワークもAIデザインと全く違うものにしました。そういった変化を是非知って、体験してほしいです。

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同フェスは、長年に渡り、包括性、尊敬、思いやりへコミットメントしてきた。ヴィーガンやベジタリアンといった菜食主義者を含む幅広い地元のフードベンダーが出店し、地産地消に特化することで走行距離やフットプリントを制限。ビーチクリーンやSocial FoodingなどのNGOへ残ったフードを寄付するなど、ミュージック分野においても無視できない環境問題を考慮し、サステナブルな活動を積極的に取り入れている。

世界に数え切れないほど存在する音楽フェスだが、音楽を楽しむことだけにコミットするのではなく、そこから派生する環境問題やフェス規模だからこそ可能となる社会活動を積極的に取り入れていくことで、これからも共存していけるのではないだろうか?

Interview & Text by 宮沢香奈

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Brunch! Electronik Festival

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