この日も心地良い天候で、サンセットタイムくらいまで気持ちよく過ごし、キングストンに戻るのが遅くなるとあまり良くないので早々にオチョリオスを後にすることに。
帰りは乗り合いのタクシーを捕まえ、初対面のジャマイカ人5人と乗り込んだ。
山道をガンガン飛ばしていたのだが、スパニッシュタウンまであと少しというところで急に渋滞で止まってしまった。自分たちの前に車が何十台もあって、すっかり暗くなった山の中で皆何が起こったのかわからずクラクションを鳴らしている状況。
イライラしたドライバーたちが車を降りて「おいおい、何やねん」「何が起きてんねん」と、確実に何かが起こっている渋滞の先を見に行きだした。自分と同乗者5人もこのまま車に乗っていても仕方がないので見に行ってみることに。
すると、何かのトラブルで動かなくなり細い山道を塞いでしまっている大きなトレーラーがあった。
既に人だかりが出来ていて、「ボンボクラー!」と怒りを表している。
(「ボンボクラ」はジャマイカのバッドワード。いわゆる「F××K」のようなものなので簡単に使わないように注意)
「これ終わったな~。ここから絶対何時間も動かないし、動いたとしても夜中にスパニッシュタウンに放り出されるのも嫌だし、こんな山の中にWi-Fiもないから連絡もとれないし……。」なんて考えていると、誰かが言い出した。「これ、通れるんちゃう?」「小さめの車でトライしてみようや~」。
え? 細い山道のトレーラーと崖の間を通るって?
ここから皆の協力が凄かった。渋滞の中から小さめの車を選んできて誘導する人、トレーラーとの隙間に入って指示する人、指示を信じて運転する人。
なんと、トレーラーと崖の隙間を車が通れたのだ。
明らかに車なんか通れない幅の隙間を崖に片輪を乗せて車体を斜めにして走行、通り抜ける瞬間なんかほとんど縦になっていた。
「マジかよ」と、思わず日本語が口から出た。
マイドライバーも「俺もトライするから乗れ」って言い出し、皆の協力もあってギリギリ脱出することに成功。
車内は喝采、皆でハイタッチ。一気に打ち解けてそこから会話も弾む。「お前日本から来たんか? このカーナビの使い方わかるか?」とジャマイカでよく見る日本語のカーナビの使い方を聞かれたり。「スパニッシュタウンからキングストンまで戻るんだけど」と言うと、「よっしゃ、任しとけ。ちゃんとバス乗り場まで連れてったる」としっかりと送り届けてくれた。
それにしてもジャマイカ人の発想には驚かされた。日本での生活の中で作り上げられた固定観念で「この幅では車は通れない」と決めつけている自分がいた。
通れるんじゃないかという発想と、その場に偶然居合わせた人たちが皆のために協力し、結果として通れたこと。
人間の本質のような温かさをジャマイカに来て感じた1日。
つづく