タイに興味がなかった。
初めて行くことにしたのはサッカー日本代表のアウェイでの試合を観たかったから。
羽田空港から深夜便に乗ってバンコクへ。初めて降り立ったタイは予想通り暑かった。そして、道路の渋滞が酷いためタクシーやバスでの移動もなかなか大変。メトロや水上バスを使ってワットポーなどに出かけた。
2016年9月6日。サッカーW杯アジア最終予選 タイ代表vs日本代表が行われる日。
バンコク中心部からラジャマンガラナショナルスタジアムまではUberを使うことにした。だが、前述の通り渋滞が酷い。Uberアプリに表示される、こちらに向かっているドライバーの位置が全く動かない。
「全然来ねえ」
その場で待つこと30分。やっと到着したドライバーに試合の時間が迫っていることを伝えるとハイウェイを使って向かってくれた。「今日は皆んなスタジアムに行くよ。こんな日はそうないからね」とドライバー。近年サッカー人気が高まっているタイにとってこの日は特別な様子だった。
スタジアムに近づくにつれてタイ代表のユニホームを着ている人が目についた。道が人人人で進まなくなったこともあり、スタジアム近くで降ろしてもらい敷地内へ。
気合いが入っている凄い数のタイサポーター。これが日本にとってのリアルなアウェイ戦……。いつも国内で観ている試合と全く違う空気を感じた。
1つ問題があった。
観戦するためのチケットを持っていなかった。タイへ出発する前に手配しようとしたのだが既にソールドアウトしてしまっていた。
現地で何とか手に入るんじゃないかと思って来たのだが、数万人が集まっているスタジアムの外で誰が余ったチケットを持っているのかなんて全くわからない。
困った。
途方に暮れ、少し時間が経ったころ、タイ人の男2人が「チケット持ってるのか?」と声をかけてきた。最初は自分と同じで持っていたら売ってほしい方かと思っていたら、その男はポケットからチケットを出してきた。「4枚取ったんだけど2枚余ってるから売ってあげようか?」。
「えっ?」
こんなことってあるのだろうか。スタジアムの脇で途方に暮れていた自分に、たまたま通りかかって目が合ったくらいのタイ人がチケットを差し出してくれている。このありえない状況に驚いた。
疑うなんて申し訳ないのだが、一応本物のチケットなのかを確認させてもらい、譲ってもらうことにした。本当にありがたかった。
そのチケットで入場し、タイ人しかいないホーム側のエリアで試合を観ることができた。当たり前だが試合もアウェイの空気がビンビン。大観衆がタイを応援し、日本選手がミスしただけで大喝采。タイが攻め込もうもんなら立ち上がってお祭り騒ぎだ。
試合終了後、キックオフ直後から降り出した大雨の中、またタイの大群衆に揉まれながらホテルへ。初めて感じた刺激からくる興奮と心地良い疲れを感じながら眠りについた。
タイは最高。
心から「また来たい」と思えた国 タイ。