ジャマイカを出て、パリで1週間過ごした。パリは何だか肌に合う気がした。食べ物、美しい建造物、そして雰囲気が気に入った。
しかしそうも言っておられず、生活の拠点を移すためにそろそろロンドンに戻らないといけなかった。パリからロンドンは陸路を選んだ。パリ北駅からユーロスターで2時間余りの移動。乗車前にフランス出国とUKの入国審査を済ませる。
ロンドンでは地下鉄などの区切りで言うところのゾーン1内に部屋を借り、「狭いわ!」とかほざきながらも「まあ最初はこんなもんか」とミニマムライフをスタートさせた。
時間はたっぷりあるが身寄りが全くない。
こういう時間がたまらない。
せかせかと生きてきた日本ではゆっくりと考えないようなことに思いを巡らせ、これまでの人生を振り返ったり、これからどうなっていくのだろうと期待なのか憂いなのかよくわからない気分になる。
ずっとそんなこともしてられないので、昨年夏にAirbnbで宿泊したサウスロンドンの街ブリクストンのパトリックに会いに行こうと思った。
「パトリック~、言ってた通りロンドンに住み始めたよ~。週末時間ある~?」とWhatsAppで連絡をとってみた。
翌日、朝起きるとパトリックから返信あり。「うおー! ほんまに来たんか! やばいやん! 土曜やったらいけるで! 来いや!」
よっしゃ!
この頃はほとんど雨が降っていなかったのに、その土曜日だけ雨だった。そんなに寒くもないので「冬はもうそろそろ終わりだよん。春が近いよん」と聞いていたのに、その土曜日だけ寒かった。
ブリクストンまではバスに乗って向かった。赤くて2階建てのロンドンバスは8分に1本くらい、引っ切り無しにやって来るので使いやすくて好みだ。
パトリック一家はジャマイカ人だしチキン好きかなあと勝手な偏見を持ち、手土産のつもりでKFCのチキンを買って家に向かった。
「ちょっと忙しいねんけど、15時に来てくれ~」と言われていたので15時きっちりに家に着いた。
ドアをコンコン。コンコン。コンコン! ガチャッ
「よー! 来たなー! ごめん、今算数の教室やってて、20分後にもっかい来てくれへん?」
えっ!?
ロンドンの冬はまだ終わらない。
つづく