半年振りに会ったパトリックは自宅で算数の教室を開いていた。
壁には「数学は答えを求めるのではなく、そこまでのプロセスを楽しむもの」という文字。
「それすごくわかるよ。数学ってそういう考え方を養うものなのに、学校ではなかなかそういう教育ができてないよね」と言うと、「そやねん! わかってるやんけ!」とのお褒めのお言葉。「人生にも言えることやからな!」と。
「KFC食べるっしょ?」と手土産を出すと「ランチ食べたし要らんわ」とピシャリ。子どもたちにも食べないと言われ、1人で大量のチキンを口に入れ続ける。
約束通りロンドンに住み始めたこととジャマイカに行ってきたことを報告し、その写真を見せた。
メガネをかけ、iPhoneを眺めながら「ええな~! 3年は帰ってへんわ~。すぐにでも行きたい!」と“SWEET JAMAICA”を口ずさみながら故郷に思いを馳せるパトリック。
TONY REBEL – SWEET JAMAICA video 1993
(ジャマイカの素晴らしさを歌ったTONY REBELの名曲。ジャマイカのボブスレーチームを描いた映画『COOL RUNNINGS』の劇中でも使用されている)
「なんでレゲエは世界中で人の心を打つかわかるか? レゲエはな、ジャマイカのリアルライフを歌ってるからや。レゲエのリリックはフィクションちゃうねん。実際にあの島で起きてることやねん。だから人の心を動かすんや。日本人のお前だって聴いてるくらいやからな」
そんなことわかっているつもりだったが、ジャマイカ人に面と向かってそうやって言われるとやはりグサッとくるものがある。
「お前は家族やからいつでもここに来い」とパトリック。
ロンドンに家族が出来た。
つづく