ロンドンに来て約2ヶ月、ブリクストンやクロイドンでカリビアンコミュニティとリンクすることが多くなっていた自分は、あるパーティでデビーという女性と会うことになっていた。
そのパーティはまたクロイドンで開催されていて、到着するなり「デビーってどの人かな?」と尋ねて歩いた。
「はーい、私がデビーよ」
大きい音の中でかすかに聞こえたその声に反応し、「おー!初めまして!」と握手。自分のことなどを話していくうちにデビーがまた大きい音の中で大事なことを言ったのがわかった。
「来週、ROMAIN VIRGOのUKツアーがあるから来ない?」
「え?ROMAIN?今ROMAINって言ったよね?」
「そう、ROMAIN VIRGOのUKツアーをプロモートしてるの。おいでよ」
「え、いやあのその、もちろんロンドン公演のチケットはもう持ってるよ」
「手伝ってよ」
デビーはそれほどにこやかに話すわけではないのだが、大きい音の中で大事な話を次々と投下していった。大好きなアーティスト ROMAIN VIRGOのUKツアーを仕切っているチームの一員だったのだ。
ROMAIN VIRGO。
ジャマイカの人気シンガー。デビューのきっかけは2007年にTV番組のコンテストで優勝したこと。現在28歳。
アルバム作品としては『ROMAIN VIRGO』、『THE SYSTEM』、そしてこの3月にリリースされた『LOVESICK』の3枚。
このニューアルバムを初めて聴いたのは深夜のロンドンを走るナイトバスだった。24時をまわってちょうど発売日になったことに気づいてSpotifyを起動。イースターホリデーで人が少ない街並みをバスの2階から眺めながら6年振りの新作に心を躍らせていた。
ROMAIN VIRGOの持ち味はとにかく歌唱力。シンプルに歌がうまい。そしてニューアルバム『LOVESICK』は全編ラブソング。
ROMAIN VIRGO – STILL
このニューアルバムをひっさげてのUKツアーが開催されることをチェックしていた自分はロンドン公演のチケットをゲットしてその日が来るのをそれはそれは楽しみにしていた。
そんなある日にデビーと出会い、「じゃあ来週ね」ってことになるなんて。とにかくスケジュールを確認して、参加出来る全ての日程をデビーに連絡した。
ツアー初日のバーミンガムで約6年振りにちゃんと観た彼のライブの印象は「うわ~、大人になってる~」。前作『THE SYSTEM』リリース時に開催されたジャパンツアーのときから比べて、積み重ねてきた経験と年月が彼をさらに成長させたのだろう。その2日後、イングランド北部の街 リーズではUKに慣れてきたのか、さらに余裕のステージングを観ることが出来た。
迎えたツアーファイナル ロンドン。
なんとなくその日は朝からソワソワしていた。UKツアーがその日で終わってしまう寂しさや、自分のことなどもあって軽く緊張していた。
キングスクロスにあるライブハウス SCALAに到着するとジャマイカンやカリビアンでいっぱい。どの公演もそうだったが、若い層からご年配までたくさんのUK在住ジャマイカンやカリビアンが詰め掛けていた。そして女性が多い。皆んなそれぞれ、なにかしらのラブシックなのだろう。そしてその想いや男性サイドの気持ちを抜群の歌声で代弁してくれるのが”ラブドクター” ROMAIN VIRGOなのだ。
「みんな”ラブドクター”の準備出来てんの!?」とホストMCが煽り、女性たちが「イエス! イエス! ROMAIN!」と応答、バンドのイントロから主役が登場すると「キャー!!」
デビューからこれまでにヒット曲が多い彼なので、お客さんも踊りながら合唱に継ぐ合唱。『LOVESICK』収録曲“STILL”や“TROUBLE”でうっとりし、人気ダンスホール曲を歌えば皆んなジャンプジャンプ。
最後も『LOVESICK』収録の最新曲“NOW”で盛り上げて締める。
ROMAIN VIRGO – NOW
怒涛の一週間、ROMAIN VIRGOと各公演でサポートアクトをつとめたSEVANAに感謝。そしてデビーありがとう!
つづく