第126回 不可能リサイクル

法律が改正され、不要な家族は粗大ゴミとして捨てられるようになった。住んでいる地域の福祉課の許可が必要だが、本人の了承があればそんなに難しいことではないらしい。施行後数ヶ月間はさすがに躊躇して誰も家族を捨てなかったが、半年経った今は毎朝誰かが捨てられている。強い睡眠薬で眠っているため起きることは無い。永遠にだ。
税金から補助金も出るようになり、俺達回収業者の収入はうなぎ上りになった。もちろん最初は抵抗があったが、膨らんでいく財布と反比例して罪悪感は次第に薄まっていった。人間も他の粗大ゴミと同じように荷台に載せて広大なゴミ集積場へ向かう。そう言えば「目が覚めてしまった人間が急にフロントガラスに顔を出した時には死ぬほど驚いた」って昨日誰かが事務所で話していた。
今朝最後の回収所。捨てられた人の側から離れない犬がいた。きっとこの人に可愛がられていたのだろう。鼻先で何度も突いては「何かおかしいの。どうしちゃったんだろう?あなたわかる?」という顔をして俺を見上げている。全てのゴミを回収し、回収車が動き出してもその犬はしばらく不安そうについて来た。俺は混乱してきた。誰にも必要とされていない人間だけが捨てられるはずなんだ。この人は違うじゃないか。俺が抱き上げて荷台に載せた時の「この人を助けてくれるんだよね。よろしくね」という表情がどうしても忘れられない。ゴミ集積場まではもうすぐだ。ブレーキをかけるなら。今しかない。