第158回 君が死んだ理由

私は小さい頃から死骸に触れると言葉を感じる。実際に聞こえるわけじゃないから「感じる」といつも説明している。不思議と生きているうちは感じる事が出来ない。誰もが死を迎えると何かを解き放つのかも知れない。理由もメカニズムもわからないけれど、虫も動物も意思を持っていることを私はよく知っている。

「家族の為だからさ」と妻に食べられたカマキリ。「迷って帰れなくなっちゃった」という猫。「冬眠しすぎちゃった」という幼虫。「思わず木の実を口に押し込み過ぎて」というリス。「雨の日に電柱で感電したの」というカラス。みんなが色々教えてくれる。

ある日、森を散歩しているとアライグマが死んでいた。「今の食べ物は洗っても洗っても変な味が取れなくて嫌だった」という。私は一生懸命食べ物を洗っては首をかしげるアライグマを想像して思わず笑ってしまった。

死んでからも悲しんでいるのは勝手な都合で捨てられたペット達だ。慣れない野生で食べ物を見つけられず死んでいることが多い。「ボクの何がいけなかったんだろう」「ただの散歩だと思ってたのに」「あんなに幸せだったのに」と嘆く。とても悲痛な声だ。私は彼らを土に埋めながらいつも謝ることしか出来ない。私には他に何が出来るだろう。ずっと考えている。

photo by normaratani