第191回 Me too

あれ、ここどこだろう?と見たことない天井をぼんやり見上げた直後に激しい頭痛。右手には点滴。目覚めたのは病室だった。「脱水状態だし、まだ薬が完全に抜けていないから、あと数時間は安静にしていてください」私が目覚めたと聞いて診察に来た医師が言った。私は薬なんて飲んで、、と言いかけて気づいた。そうか。私が飲んだんじゃない。飲まされたんだ。

私が昨日、意識のない状態で見つかったホテルに行くと、フロントが荷物を預かってくれていた。昨日着ていた服を見て、記憶が段々戻り始める。でも携帯電話が無い。私は無理を言って泊まっていた部屋を少しだけ捜索させてもらった。この携帯を隠さなきゃ、と強く思ったのを覚えているから。ベッドのあたりを探すと見つかった。マットレスとマットレスの間の奥に押し込まれていた。深呼吸してからカメラのフォルダを開く。そこには私に向かってカメラを構える男が写っていた。転勤して来たばかりの上司だった。

私が元々「男」だと会社で知らないのはこの上司だけ。私の裸を見てさぞ驚いたことだろう。どんな顔をして部屋から飛び出したのだろうか。想像すると笑いが込み上げてくる。さて、どんな復讐にしようかな。仕事も家庭も失うような復讐。こんな男に情状酌量する価値なんてない。早く刑務所に入りたいって思うまで私は追いつめる。女を本気で怒らせると怖いんだから。

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