第197回 出会って別れて

ペットを簡単に捨てる国として日本は有名だが、ここアメリカでもペットを捨てる奴は大勢いる。俺は捨てられた犬を保護して、次の飼い主を見つける仕事をしている。収入なんて寄付金以外ほとんど無いから仕事とは言えないが。保護した犬を事務所に連れ帰って綺麗に洗い、病気を持ってなければ、すぐに散歩に出かける。一刻も早く新しい飼い主を探すために。

一度人間に懐いてしまった犬たちは、捨てられた後も人間を嫌いになれないらしい。数時間は警戒していても、しばらく話しかけていると気を許して、駆け寄って来てくれる。そんな姿に俺はいつも申し訳ない気持ちになる。飼い主が見つかれば俺もまたすぐ君の前からいなくなるから。距離感が難しい仕事だ。

SNSのおかげで飼い主を見つけるのが随分楽になった。俺はいつもNYのビル街を背景に撮影する。ここで撮影すると「なんだかお洒落なワンちゃんね」と問い合わせが絶えない。そんな動機でも引き取ってくれるならありがたい。相性がよければきっと幸せに暮らして行けるはずだ。路上で暮らすよりずっと良い。

「ずっと見てたけどあなた本当に犬が大好きなのね」良いポーズを撮るために試行錯誤していた俺は声をかけられた。振り返ると驚くような美人が立っている。「名前は何?」と聞いた彼女に「俺はスティーブだ」と答えると「あなたの名前じゃなくて」と笑ってくれた。俺は急いでこいつの名前を考え始めた。「変な名前つけないでね」と犬が俺を心配そうに見上げている。

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