第61回 最後の記憶
A「撃たれたのは1人だけのようだ」
B「被害者はあそこで携帯持ったまま倒れてる男か。まったく毎週こんな事件が起きてるな」
C「どうも遅れてすいません、来る途中に辺りで聞き込みしましたが目撃者はいません。通報者もすでに立ち去ったようです。またギャング同士の闘争でしょうか」
A「まあそんな所だろう。死体安置所が満員にならなきゃいいが」
B「とにかく鑑識が来るまで少しあの男を調べようか。何か分かるかもしれない」
A「ん?あの男、今動かなかったか?」
C「先輩、何言ってるんですか。遺体を動かしたら怒られるのは僕なんですから止めてください。とにかく後は僕がやっておきますので」
A「お前もでかい口を利くようになったな。よし、では任せたぞ。我々は一度本部に戻るからな。後で報告に来い」
C「わかりました」
2人の警官が去って行った。呼び止めようにも、もう微動だに出来ないし、声も出ない。残った警官がゆっくりと俺を見る。そして顔の近くまで来て俺にささやいた。
C「銃弾がずれちまったのか。お前まだ生きてるなんてな。しかも自分で通報するとは思わなかったよ、危ない所だった。よく頑張ったが、鑑識が来るまでにあまり時間がないからこれでお別れだ」
そう言うと彼は俺の首に手を伸ばして来た。そこまでは憶えている。その後は分からないんだ。