photo by 新保 勇樹

第15回 僕の新しい彼女

かに彼女の事はよく知らないままだった。

3ヶ月くらい前に友達の誕生日パーティーで知り合ってから、なんとなく連絡を取り合っているうちに、2人でデートに出かけるようになり、つい一週間前に僕の「彼女」になった。隅っこでつまらなそうにしていた僕の何が気に入ったのかはわからない。

僕より5歳年上の、27歳の彼女のプライベートは秘密が多かった。ほとんど電話に出ないし、会うときはいつも眠そうな顔をしていたし、酒の匂いが残ってる事も度々あった。勝手に夜の仕事なんだろうなとは予想していたけど、「君といると古い無声映画を見てるみたいで落ち着く」と小さい声で話す彼女に、無理に私生活を聞こうとは思わなかった。

そんな彼女を見たという友人がいた。もちろんその子が僕の彼女だなんて事は知らない。僕は彼女が出来た報告なんてわざわざしないし、そもそも彼女がいた事がほとんどない。

「パーティーで知り合った子憶えてるか? あの子ストリッパーだったよ、取引先の接待で連れて行かれたキャバレーで、あの子が踊ってるのを偶然見たんだ。ライトと化粧でかなり若く見えたけど間違いなくあの子だった」

友人は有名人のスキャンダルかのように教えてくれた。僕が誕生日パーティーで話してた女の子なんて彼女くらいだし、実の所そんなに驚かなかった。

僕は目を閉じて想像する。普段ほとんどノーメイクな彼女が塗る濃い化粧を。彼女特有の少し変わった体臭が、踊る事によって更に強くなる瞬間を。そして客席にいる僕を見つけた時の、鋭くそして深みを増す妖艶な視線を。きっととんでもなく綺麗だろう。僕はそんな彼女をいつか見れるのが嬉しくてたまらなくなっていた。