第22回 鰻屋の真実
本当に体に良いのかなんて実はよく知らないけど、一年に一度は確かに鰻が食べたくなる。一年振りに入った鰻屋は家族で経営しているとても古い鰻屋だった。何代目かの若い主人が黙々と鰻を焼いてる姿を外から見て、今年の鰻をここに決めた。店内には主人と息子、配膳をする主人の母親、つまりおばあちゃんの3人だけ。
まだお客さんが少ないのを良い事に、息子はおばあちゃんの後ろをくっついて回り、子供向けのクイズを出し続けている。仕込みや配膳の準備に忙しいおばあちゃんは、そんな息子に見向きもせず作業を続けていた。全く相手にしてもらえない息子はおばあちゃんを諦め、そのやり取りを眺めていた俺を見つけて近づいて来た。
「おじさん、誰も解いてくれないクイズがあるんだけど聞いてくれる?」
さっきまでとは随分違うクイズだなと思いながら、君は答えを知ってるの?と聞くと
「知らないんだ、だから誰かに教えて欲しいんだよ」と言う。
鰻が来る間の暇つぶしに丁度いいし、その「解いてくれないクイズ」を聞いてみる事にした。
「じゃあいくよ。幽霊になった僕は、ここで毎日お父さんを待っているんだけど帰ってきません。一番弟子だったあいつが鰻を焼いているのはなんででしょうか?」
携帯を見ながら話を聞いていた俺はクイズの内容に驚き息子を見上げた。するとそこには息子の姿は無い。代わりに、奥で鰻を焼いていた主人がなぜか手を止めて俺の事をじっと見ている。そのあまりの無表情さに、俺は目を逸らせなくなってしまった。