第27回 檻の無い動物園

日から私は日本有数の体験型動物園に配属になった。

重厚な檻や鉄格子に囲まれてくたびれている動物達を見学させるより、自然に近い形で生活する動物に接する事で、来客者の満足度をアップさせようというのが狙いだ。

実際にその狙いは上手くいっているようで、来客数も開園以来伸び続けているし、リピーターも多いと先輩達は話していた。顔を憶えていて、挨拶してくれるお客さんまでいるらしい。

早速、園をぐるりと囲むように作られた河を使って色んな動物達の様子を観察してみた。一番気になった事は、前に在籍していた動物園より、眼光が鋭い動物達ばかりだという事だ。

檻が無い事で、人が落とした餌以外のものを口にいれてしまったり、人間は匂いが強いため、いつも誰かが近くにいる気がして、ストレスを溜め込んでいる動物も多いのだろう。今後が少し心配になったが「まだここに慣れていないだけかもしれない」と思い直し、少し草むらで休憩する事にした。

すると近くに家族連れがいるのを感じた。強烈な匂いだ。私は自分の中の突然の興奮を止める事が出来なかった。

生きた肉なんて何年振りだろう、インドネシアで捕獲されて以来だから5年振りくらいか。

他の動物達の眼光の鋭さの原因を一瞬で理解した。あれは野生の眼光なのだ。間違いない。私は河から低い体勢のまま陸に這い出し、ゆっくりとゆっくりと彼らに近づいた。

御馳走は全て私が頂く。他のワニ達に気付かれる前に。