“史上もっともグロテスク”と称された映画『KUSO』のジャパンプレミアが、8月16日に東京・シネクイントにて開催されました。
監督はフライング・ロータス(Flying Lotus)で、名義は「スティーブ」。初の長編監督作品となります。本日開催される<SUMMER SONIC>前夜のオールナイトフェス<SONICMANIA(以下、ソニマニ)>では、自身が率いるレーベル〈ブレインフィーダー〉のステージに、仲間を引き連れて出演します。
『KUSO』は、シネクイントにて、<ソニマニ>翌日の8月18日(土)から、1週間限定でレイトショー上映されます。本作は、アメリカで去年公開となったものの、日本では上映されず、日本の言葉がタイトルなのに何故……とファンたちが待ち望んでいた作品。ジャパンプレミアはもちろん即完でした。
プレミア上映後、スティーヴの名義で監督を務めたフライング・ロータスが登壇。短い時間でしたが、監督がインスパイアされたという日本文化について、その土地・日本で語るという貴重な機会となりました。
トピックは、フライング・ロータスと日本の関係や、映画の裏話、<ソニマニ>で着る衣装などについて。イベントでMCを担当したのは奥浜レイラさん。
あらすじ
ロサンゼルスでの大地震後、人々は奇病におかされながらの生活を送っていた。首に喋る“こぶ”ができた女、ある“とんでもない虫”で人を治療する医者、常にお腹を下している男の子、コンクリートを食べる女性……様々な人々が織りなす、それぞれの狂気のストーリーが描かれた94分間。もはや最後には感動すら覚えるこの作品、あなたは耐え抜くことが出来るだろうか……!
映画『KUSO』予告編【スティーヴ(a.k.a フライング・ロータス)初長編監督作品】
Flying Lotus
『KUSO』
——明日には<ソニマニ>での出演も控え、今日の『KUSO』ジャパンプレミアから〈ブレインフィーダー〉の世界観に触れられることをとても嬉しく思っています!
ありがとう(日本語で)。Yeah! What’s up y’all! ははは。会えて嬉しいよ。『KUSO』はどうだったかな?
——(会場笑)
ははっ、わかるよ。でも本当にこれは日本のみんなのために作ったんだよ! 本当に! 僕はここ20年くらい日本映画にインスパイアされてきたからね。三池崇史、塚本晋也、北野武……。みんな僕のヒーローだよ。だからある意味、日本映画からもらったインスピレーションの恩返しができたかなって、嬉しく思ってるよ。
——2008年で初来日を果たしてから、今回で8回目の来日となります。月並みではありますが、日本の印象はいかがでしょうか?
もちろん大好きだよ。2008年か……。少し驚いたよ。びっくりだよね。もう10年だよ。子供の頃から日本の文化は大好きで、ラーメンやアニメ、何から何まで。僕にとっては第2の故郷みたいな国だよ。日本には素晴らしいアーティストも大勢いるし、だからここで僕の初長編映画を観てもらえるのは本当に嬉しい。
——しかもタイトルは『KUSO』ということで。意味的には日本の「糞(くそ)」ってことですよね?
yeah
——(会場笑)なぜこのタイトルになったんですか?
笑えることと、アメリカでは「KUSO」と言っても意味とかわからないから、何にも問題ないだろうと……。でも日本でやっちゃうと、そういうわけにもいかなくなるよね。アメリカではみんな「そうなんだ。『KUSO』なんだ。良いじゃん。クールじゃん。」って言う割には、どういう意味なのかわかってないから(笑)。「KUSO」は自分にとっていろんな意味合いがある言葉なんだ。でも、映画ってそういうものでしょ? 観る人によって様々な解釈があっても良い。それだけだよ。
——そもそも、映画を撮った経緯はなんですか?
実は(音楽よりも)映画の方を先に学びたくって、高校卒業後は映画の学校に通ったんだ。だから、いつか自分で映画を作りたい思いがあって、真剣に勉強もしていたんだよね。そうこうするうちに音楽のキャリアがスタートしてしまって、自分の方向を変えたんだ。でも、音楽をやりながらも、いつか時間をちゃんと取って、ヴィジュアルの方の仕事をしっかりやることは決めてた。それを意識して、音楽活動を続けてきたんだ。アルバム出したらツアーに出る、そんな生活を続けてきたけど、この前の作品( 2014年発売の5作品目となるアルバム『You’re Dead』。アルバムのジャケットは日本人漫画家の駕籠真太郎が手がけたことでも話題となった)を出した後に少し余裕が出来て、『KUSO』に取り組むことができたんだ。
——サンダーキャット(Thundercat)さんを始め、ブレインフィーダーのメンバーは『KUSO』をご覧になられたんですか? 彼らは音楽で参加しているかと思います。
僕の周りの人たちはこの映画を100万回は観てるよ。何度もね。『KUSO』はみんなに協力してもらって出来上がった映画なんだよ。本当にインディペンデントな映画で、自分でお金を出したし、自分の友達に協力してもらって音楽や衣装で貢献してくれた。それぞれの本職でもないのに、町中駆け回りながら手伝ってくれたんだ。みんなの協力がなかったら『KUSO』はなかったし大変だったけど、本当に楽しかったよ。
——作品の中で、ジョージ・クリントン(George Clinton)さんが楽しみながらお医者さんの役でおっぱい恐怖症の男性と出演されていましたよね。
あのシーンは、ジョージ・クリントンのために書いたよ(笑)。彼は本当に最高で、期待していた以上の演技をかましてくれたんだけど、僕もビビったことがあったんだ。彼のシーンを撮影する直前になって、ジョージが僕のところに来て「何を言えば良いかわからない」って。台本は読んだけど、覚えてないって。どうしようかと思ったけど、少し時間あるから実験的にセリフのやりとりをしながら準備すればなんとかなるさと。セリフの練習をしたら、今度は彼が「僕は役者の経験がないんだ。分かってるよね?」って(笑)。ここまできて、そういうこと言って脅かさないでよ! って思ったんだけど、いざ演技が始まったらもバッチリで、実際望んだもの以上だったよ。その場での即興演技とか、彼は何を求められていたかバッチリ分かっていたんだ。だからジョージの役者としての能力も、疑いの余地はないよ。
——スティーブ監督は演出もしていましたよね。
全体的に、自然な流れで撮影は進んで行ったんだ。リハーサルもしっかりやって、良くなかったら変更するし、その逆も然りだったよ。今回のことを踏まえて、次にまた映画を作る機会があったら覚えておきたいのが、時間の余裕を持って参加している俳優たちとか撮影場所を遊んで、実感・体感したらより良いと思ったよ。ふざけてバカなことをやったりすると(do stupid shit)、撮影に入ってから新たに生まれるものがあると思うんだ。文章を読んで頭で考えて行くものと、その空間に身をおいて実際に感じるものとでは違うはずだよ。
——次回というキーワードが出ましたが、もう次回作で撮りたいテーマなど、構想はありますか?
いくつか進行中のものがあるんだ。今1つ書き始めてる脚本があって、それはもう早く完成させたいな。正直自分でも楽しみでしょうがないんだ。『KUSO』よりもクレイジーなんだけど、違う意味で、クレイジーな作品になりそう。全て頭の中の出来事で、相当イっちゃってるよ。タイムワープとかね。
——『KUSO』でも、スティーブ監督の頭の中を覗いてしまったような衝撃がありましたよね。
ははは。ある意味で、そういうところもあると思うよ。だけど、この映画で表現したことは、それは「僕はどういうものをおかしいと思うか」なんだ。どういうものを見たときに驚き、恐怖を感じ、興味を持つのか。でも、四六時中こんなことを考えてるわけではないからね(笑)。でも、ちょっとブラックジョークだよね。ユーモアを交えつつ、自分の中にある恐怖や滑稽さを探求したのがこの映画だと思ってるよ。
——ずっとそういうことを考えてるわけではないとの事で、安心しました。
勘弁してよ(笑)。
——先ほどもお名前が上がっていましたが、日本のアニメや監督、特に好きな作品があったらお聞きしたいです!
『僕のヒーローアカデミア』が大好きだよ。『ドラゴンボール』や『カウボーイビバップ』、『寄生獣』とか、多すぎるよ。
——以前『ドラゴンボール』の道着を着てステージに上がっていましたよね?
そうだね(笑)。<ソニマニ>で着る衣装もかなりスペシャルなものになるよ。
——ちなみに明日<ソニマニ>に行かれる方はどのくらいいらっしゃいますか? (会場:挙手者多数)
oh shit。パーティー・タイムだ。
——今年の3月にも来日されていたと思うのですが、その際は浅野忠信さんや渡辺信一郎監督(『カウボーイビバップ』など)、『You’re Dead』のアートワークを手掛けた駕籠真太郎さんとお会いしている写真がInstagramに投稿されていましたが、日本のカルチャーについては改めてどう思われますか?
他と一番違うのは「発想」だと思う。日本独自の発想はとても魅了的だよ。『ICHI』や『アキラ』、『エヴァンゲリオン』とかはアメリカで作ろうと思ってもできない。もちろんアメリカにも美しい作品はあるけど、決定的に違うものがあるんだ。日本には先見の明があるアーティストが大勢いるなと認識しているよ。
——それでは、最後にスティーブ監督から一言お願いいたします。
今日はみんな来てくれてありがとう。この映画(this shit)を楽しんでくれてありがとう。くそ。また明日ね。みんなでパーティーだ。
本日の<ソニマニ>には、フライング・ロータス率いるレーベル〈ブレインフィーダー〉のステージが登場。
フライング・ロータスをはじめとし、レーベルに所属するサンダーキャットやジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリック(& Parliament Funkadelic)、ドリアン・コンセプト(Dorian Concept)、ロス・フロム・フレンズ(Ross From Friends)、ジェイムスズー(Jameszoo)が出演する。
このLAビートシーンファンならば、夢のようなステージ。見逃し厳禁です!!!
KUSO
8月18日(土)より渋谷・シネクイントにて1週間限定レイトショー!
原題:KUSO
監督:スティーヴ
脚本:デヴィッド・ファース、スティーヴ
音楽:フライング・ロータス、ジョージ・クリントン、エイフェックス・ツイン、山岡晃
出演:ハンニバル・バーエス、ジョージ・クリントン、デヴィッド・ファース
2017年/94分/アメリカ/英語/カラー/DCP
レイティング:R18+
配給:パルコ
宣伝協力:ビートインク
ロサンゼルスでの大地震後、人々は奇病におかされながらの生活を送っていた。首に喋る“こぶ”ができた女、ある“とんでもない虫”で人を治療する医者、常にお腹を下している男の子、コンクリートを食べる女性…様々な人々が織りなす、それぞれの狂気のストーリーが描かれた94分間。もはや最後には感動すら覚えるこの作品、あなたは耐え抜くことが出来るだろうか…!