――ここ数年は新しい試みとしてオーディオ・ヴィジュアル・セットを行っていますが、これを始めたきっかけを教えてください。
印象的なビジュアルを見ている方が、俺たちがデックの後ろで針をいじっているのを見るよりも観客が楽しめるんじゃないかなって思ったんだ。オーディエンスが吸い込まれるようなショウを作り出すことはとても大事なことだと思っているからね。全体的に刺激的な体験であって欲しいから、そうとなると音と映像両方使う必要があると思ったんだ。レコードのスリーブからビジュアルを作り出すRadio Soulwaxのプロジェクトでのライヴ・ショウはとても面白かったよ!
――興味深いのは、あなた達の使う映像は単なるグラフィックやエフェクトとは違い、必ずレコード・ジャケットを使っているという点で、失われつつあるレコード・カルチャーやフィジカルの時代へのオマージュになっているということです。やはり、そこは意識的だったのでしょうか?
デジタル化によってほとんどの人の音楽のコレクションはハード・ドライヴ上に保存されているファイルに過ぎなくなっただろ? ひょっとしたらアートワークなんて見たこともないかもしれない。そんな時代に、また美しく、素晴らしいアートワークを見せて、それを音楽の体験の一部として埋め込んでいく、良いきっかけになったんだ。アナログをコレクションすることに、スリーブは欠かせない楽しみだったからね。それをアニメーション化することによって、大好きなレコードのアートワークを見ながら想像していたものを実際に映像化することができたんだ。幼い頃からレコードのスリーブに囲まれてきたから、俺たちにとってはとても大事なものだったんだ。今でもレコードは沢山買うから、大きな存在だよね。
――そういったオーディオ・ヴィジュアル・セットを24本も収録し、しかも無料という、とんでもないアプリを作ろうと思った理由を教えてください。
音楽のシーンの傾向が変わってきていたから、Pt.2の続きとして何かを作ろうとは思わなかった。だけど2ヶ月しか持たないミックスCDも作りたくなかった。今まで集めてきた素晴らしいレコードのコレクションを使いながら、内容の濃いものにしていきたかったんだ。きっと聴いたこともないであろう音楽を沢山の人に聴かせたかった。あとは大きなフェスなどでプレイできない音楽をミックスCDにまとめるのはとても新鮮だった。
どうせ今となってはみんなレコードを買わないし、時代に合った音楽の体験を提供しようと思ったんだ。当時は良いアイディアだと思ったんだよね! 始めたての頃はどれだけそれが大きなプロジェクトであることか、合計で何時間かかるのか、いくらかかるのか、そんなことは全く把握できてなくてさ。だけど逆にそれをわかっていたら、やらなかったかもしれない。今となっては価値のあったことだと思っているし、これを完成したことに誇りを持っているよ。
――それにしても、現在のようなオーディオ・ヴィジュアル・セットだと、自分たちが回したい曲は常に映像も作らないといけないから、DJセットに新しい曲を取り入れるのが大変なのではないですか?
みんなが気づいていないことは、ビジュアルがプレイしているトラックと関連しているということ。ミックスすることによって、ビジュアルが変わるんだ。音楽を両手で操作して、ビデオも両手で操作する。もちろんビジュアルの用意がある楽曲しかプレイできないっていう面では、限られているかもしれないけど、それを除けばやりたい放題なんだ。ある意味、レコード・プレーヤーで一つのレコードしか回せないのと一緒。デジタルDJだと、できることが多すぎるから、逆に少し限られている環境に置かれることってポジティブだったりするんだよね。
――<エレクトラグライド2013>での来日が近づいていますが、当日はどのようなセットを期待していいですか?
俺たちが大好きな音楽をこのためだけに作ったアニメーションと一緒にプレイするよ。
――日本に来た時には毎回買い物をたくさんしているそうですが、どういったものを買っているのですか? お気に入りのお店とかはあるんですか?
結構場所は掘るよ。本やレコードは中野ブロードウェイ、そしてまた本のために神保町。東京中にあるレコファンとディスクユニオンには何時間も滞在するね。あとN.Hollywoodが大好きだよ。
――最後に来日を待っている日本のファンにメッセージをお願いします。
メッセージはシンプルさ。(死ぬほどあなたたちを見たがっているファンに一言! といったため)死なないで、ただ俺たちを見に来て!
(question by 小林祥晴)
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