Age FactoryとLOSTAGE。世代は違えど、共にオルタナ性を有し、楽曲に独特の緊張感とダイナミズムを擁した3ピース・ロックバンドだ。
加え、同じ奈良在住でもある彼ら。片やLOSTAGEは地元にどっしりと居を構え、常にそこを拠点に発信や発動、また地元の音楽の活性化や音楽がそこに集まる図式を構築。片やAge Factoryは、出自奈良のアイデンティティと自負を以って自身の音楽性を作品やライブを通し全国に流布。2者共にFrom奈良を背負って立つ活動を行っている。
そんな両者であるが、Age Factoryの初となるフルアルバム『LOVE』が、そのLOSTAGEのボーカル&ベースにして楽曲制作の中枢を担う五味岳久のプロデュースにより発表された。
あえて互いの地元奈良にて、LOSTAGEの作品の音作りにも深く関与しているエンジニアも交え制作された同作品は、より歌を中心に、その各表情や側面、力強さや、その反面にある細かいデリケートさがより引き出され、且つ、これまで伺えなかった彼らの新しい引き出しまでもが、惜しみなくあけられたものとなった。
そんなAge Factoryのニューアルバムにまつわる今回の両者の懇話。奈良という土地柄のイメージに、これまでまったくなかったオルタナの手触りとダイナミズムを感じたと同時に、地方に居ながらの音楽発信の今後の在り方や道標にも気づかされたところもあった座談でもあった。
座談会:Age Factory×五味岳久
——そもそもAge Factoryにとっての、地元奈良でのLOSTAGEや五味さんの存在とは、どのようなものでしたか?
清水エイスケ(以下、清水) 恐怖の存在でした(笑)。優しいだけでなくキチンと厳しさを持っている方というか。
西口直人(以下、西口) いわゆる畏怖(畏敬)の存在ですね。
増子央人(以下、増子) そうそう。それらも含めリスペクトしている地元が誇る大先輩です。音楽人としても、いち人間としても。
五味岳久(以下、五味) ほんまにリスペクトとかしてくれてるの(笑)? 一緒にいても全然感じたことないなぁ……(笑)。
清水 バリバリしてますよ。ホント近くにいるだけで、常に背筋がピンとなってますから。それこそ僕たちが音楽活動を始めた頃には、既にLOSTAGEは奈良を本拠地に活動をしっかりやっていましたからね。いつかは関わりたい地元の大先輩だと常に思っていました。
——そんな同じ地元ながら世代の違う両者が交わるキッカケはなんだったんですか?
清水 五味さんが奈良でやってらっしゃるTHROAT RECORDSに自分たちの音源を持っていたのが最初でした。
五味 地元で、ジャンル的にも近く、しかも若いバンドって、そんなに数いるわけじゃないので、それまでも彼らの存在だけは知ってました。その後、清水君が僕の店によく来るようになって。そこで初めて音を聴いて、気になりだしたのが最初かな。ライブより持ってきてもらった音源を聴いたり、話したりした方が先だったよね。
——で、その後、実際に五味さんもライブを観られたと。
五味 正直、観るまでは多少舐めていたところがありました。音源なんていくらでも作りようがあるし、加工も出来る。で、ライブを観て、「おっ、これはいいな……」、「この歳で、こんな音楽をやるヤツらがいるんだ!?」と感じたんです。ある程度、しっかりと完成されていたところもあったんで、自分がその年齢の時、ここまで出来ていたかを比べちゃいました(笑)。
清水 僕ら的には、出会ってもしばらくは五味さんをライブに誘わなかったんです。今はまだ観てもらえるレベルじゃないだろうって。で、自分たち的に、「これで五味さんに観てもらえる水準になれた!!」と自負できた時点で、お誘いしたんです。それこそ今回のアルバムに入っている曲の幾つかを新曲として演り出した頃ですね。新曲たちにも自信があったし。
五味 ドラムの増子君も安定して、ちょうどいい状況のライブが観れましたからね。「うわっ、こいつらキチンとしたライブバンドだったんだな!!」と。演奏のスキルも高いし、作品以上に伝わってくるところもあったんで、キャリア的にも10年以上離れているんですが、一緒にやっても遜色ないライブだなって。そこからAge Factoryの企画とかで共演するようにもなったんです。
——Age Factoryが今回五味さんにプロデュースをお願いした一番のポイントは、どこだったんですか?
清水 元々、何か選択肢があった場合、自分たち以外にも、もう一人ジャッジ出来る方が欲しくて。あと、海外って、わりと好きなアーティストに気軽にプロデュースを依頼してるじゃないですか。それを自分でもやりたかったし。絶対にその方が作品的にも楽曲的にも良くなるだろうとの確信があったんで。昔からLOSTAGEも大好きでしたし。何かその好きなバンドからエッセンスみたいなものを注入してもらえたらなと依頼しました。
五味 で、周りからの反対は無かったの。「えーっ、アイツ?」とか(笑)。
西口・増子 いやいやいやいや、ないですよ! もちろん(笑)。
清水 勝手に水面下では色々と五味さんにも相談していましたけど、メンバーには、ある時いきなり告げましたから。「今回、五味さんにプロデュースをお願いしたい。」って。
西口 完全なる事後報告でしたから。知らん間に決まっていたんで、「ああそうなんや」って(笑)。
清水 完全なる独断でした(笑)。
五味 逆にそういうのって、「バンドとしてどうなの?」って疑っちゃうよ(笑)。
清水 そう言いますけど、新曲のデモが上がる度にTHROAT RECORDSに持って行って、聴いてもらって、アドバイスや感想をもらっていたんで、もうその段階で、プロデューサーは五味さんしかいないだろうと決めてましたから。
五味 でもそういった地元のアーティストが気軽にTHROAT RECORDSに来て、色々な話をしたり、アドバイスが出来たことで、自分的にも嬉しいところがあって。そういった場になれることや、アーティスト同士の情報交換が出来るスペースになれることも、あの店の理想でしたから。THROAT RECORDSを経て、更に色々な人への出会いや繋がりへと結びついたところも多々あるので、そこでAge Factoryとの交流が生まれてことは、とても嬉しかったですね。
——五味さんの若手へのプロデュースは、caroline rocks以来ですか?
五味 ですね。だけど、未だにプロデューサーってどんな役割の人なのか、いまいち理解できてなくて。どちらかといったら自分の場合、曲作りから一緒に立ち合って、アーでもない、コーでもないと、話しながら一緒になって考えて作品化していくタイプですからね。
——プロデューサーって、いわゆるアーティストの数あるマテリアルを整理して、客観視も交え、より作品として具現化してあげる役割ですから。それはそれでありかなと。
清水 プロセスを整理してキチンと作品に落とし込んでくれた。そういった意味では確実にプロデューサー的な役割をして下さったと思います。自分たちの作りたかった音をキチンと作って下さったし。ホント、理想通りの作品になりましたからね。
五味 いやー、その言葉を聞けて安心した(笑)。
——聞くところによると、今回はレコーディングもあえて奈良で行われたとか。
清水 ですね。その辺り今回ひとつのこだわりがあって。あと、LOSTAGEをずっと録っているエンジニアのKC(岩谷啓士郎)さんも奈良に在住なので、あえて奈良で録りました。
五味 自分たちもやってもらっているKCのセンスがAge Factoryにも合うんじゃないかと。実際、レコーディング前には、彼にもAge Factoryのライブを観てもらったり、(KCがエンジニアで参加した)僕らのレコーディングをAge Factoryにも観に来てもらったり。
増子 それもあって今回は、KCさんと意思の疎通もムチャクチャしやすかったですね。
五味 遠くに離れていない分、色々なこともラインやメールじゃなく直接色々と伝えられたしね。
次ページ:プロデューサー五味岳久の狙いとは?