——アルバムの冒頭、それから今作の節々で挿入されている印象的な英語のフレーズがありますよね。あれはなんと言っているんですか?
うわ、聞かれるとは(笑)。あれは「Hanging out with my レベチdogs」と言っています。「レベチ」っていうのは、「レベルが違う」の省略です。ギャル用語で2015年の流行語大賞になっているんだけど(2015年同賞の7位)、インターネットではよく見かけていて。チョベリグ・チョベリバみたいな感じでギャルだけのものにしておくには勿体ないなと(笑)。どうにかヒップホップ用語にして流行らせたくて。俺の周りみんなレベルが違うんで、自分の仲間を「レベチdogs(「dogs」は仲間、クルーの意)」と呼ぼうと思って(笑)。スラングは誰かが始めないといけないんで(笑)。最後まで入れるか迷ったんですけど。
——なるほど(笑)! 前作『The Arrive』リリースの際にインタビューさせて頂いたときに、覚えていないかもしれないんですが、AKLOさんは既に今作の構想を語られていたんです。そこでは、「理想として、このままいけばセンスにフォーカスして不必要なものは全て排除してスゴくシンプルなものにしたい。」という事を仰っていました。
その通りになっていますね、良かった(笑)。正直忘れていましたが、潜在意識にあったんでしょうね。要するに何が言いたいかと言うと、シンプルになればなるほど、センスが問われる。だからそういう意味ではセンスがある奴じゃないとシンプルなことはできない、と俺は思っていて。結果的に今回のビートもシンプル、音数が少ないですし。これまでの3作とも一貫して、強さみたいなものを未だにテーマにしているし、聴いたときにタフな気持ちになれるっていう点も、汲み取ってくれたら嬉しいというのはあります。
AKLO “Break the Records”
——具体的に前作から今作に向けてのラップ面での新しいアプローチはどんなものだったんでしょうか?
今回野球選手でいうところの投球フォームを変えたみたいな。リズムの取り方が今までとは違っていて。それって今回そうしたかっていうよりは、USのヒップホップを中心に聴いていくとゲームチェンジャーが色々と表れてヤング・サグとかミーゴスとか新しいラッパーが現れて、新しいリズムの取り方をしているんですよ。それで、やってみようという感じでやってみたんですが、思いの外、それをモノにするのに思ったより時間がかかっちゃって。一番新しいフローに挑戦しているのは、“サーフィン feat. JAYʼED”かもしれません。
——ラップがUSの主流と共にアップデートしているという感じがしました。
そうですね。普通の3連符は昔からあったんですけど、今はアクセントをおく場所を特徴的にしたり、空け方とか、いろいろですね。ビートのとりかたでアクセントの配置やリズムとかが進化している。そういうのが奥深くてどうしてもなんかやりたくて、ただそれをモノにするまでに時間がかかりましたね。だからもう本当にフォームを変えたピッチャーみたいな。ちゃんと投げられるようになるまで時間がかかったです。楽しかったですけど。
——なるほど。ちなみに心境的な変化というのは前作から今作に向けてありましたか?
いろいろありましたね。『Outside the Frame』って枠からはみ出るっていう意味があるんですけど、社会の枠からはみ出た感じがあったり、インターネットをしなくなった時期があったりして、ブラウザの枠からはみ出た世界にフォーカスしたりとかして。そういったことがあって今までの自分のフレームから飛び出そうとしていたのは間違いないですね。実際にメジャーに移籍したり、色々あって、そのタイトルがしっくりきた。アウトロー感が生活の中にもあったかなと思います。今まではアルバム完成して、タイトルどうしようっていつも悩んでいたんですけど、今回は序盤で“Outside the Frame”っていう曲ができて、タイトルこれだなって思えたんですよ。
——確かに内容自体も“Outside the Frame”って外れていくとも、枠から自由になっていくとも言い換えられると思うんですが、全体的にやはりそういったのがテーマのように感じました。実際にインターネットをしなくなった時期というのは何故でしょう。
普段自分のペースで進めていくんですけど。なんか時間に飲まれている感じがしたんですよ。それと集中力がスゴイ短くなってきている気がしていて。前だったら1回の集中でリリック書いていたのが、最近だとすぐ休憩入れて動画見たりとか。3分の動画を1分だけで観た気になって、インターネットのせいで集中力が短くなってきている気がして、それを取り戻したかったんです。家のWi-Fiの機能で、チャイルドコントロールみたいなのがあって、自分の子供の端末が何時から何時までしか見られないとか設定できるんですよ。それを自分の端末に設定して(笑)。それで自分の端末を数時間に15分しか見られない設定にして、気になった事を15分で調べて。気がついたら、時間が経ってアクセスできなくなっちゃうんですよ。なので、歌詞書いていて気になる事が出てくるんですが、調べたいっていうのをまとめて横に書いておいて。15分の間に一気にそれを調べて「合ってた!」みたいな(笑)。そしたらムダがなくなったし、実際集中力も戻って。俺、ゾーンって呼んでいるんですけど、ゾーンに入る時間も長くなっていって。そういった意味でも今後人間が成長する過程でそういうタームがくるんじゃないかなって。
——SNS疲れというのもありますよね。
Instagramはやっているんですけど、Twitterはやっていなくて。ただ気になる事が多すぎて、ほんと時間が飲まれて、やりたい事いっぱいあったのに! ってなりますよね。マルチタスクはおかしいと思っているんですよ。一個の事に集中して作業したい。俺も超インターネット子なんで漢字を書くのも苦手で、歌詞書くにもパソコンだから出来るって部分があったんですよ。だけど今回は全部手書きで書いて。おもしろかったですよ、字汚ねえなと思いながら(笑)。やろうとしている音楽は滅茶苦茶最新なんだけど、方法としてはすごいアナログっていうか。とはいっても声だから、究極のアナログ楽器だから。どんなに進化してもアナログなんですけど。
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