れこそ待ち望んでいた展開! 群雄割拠の日本語ラップ・シーンに本命登場、更なる進化を遂げたセカンド・アルバム『The Arrival』を引っ提げて、9月3日(水)、AKLO降臨……!!!!

2010年、ミックステープ(フリーダウンロードできるアルバム音源)というUS直産のフレッシュな文化とその洗練されたラップ・スタイルを日本へ持ち込んだことで、正規アルバムリリース前にも関わらず、その年のWOOFINのベストアーティスト賞に選ばれ、シーンの顔となったラッパーAKLO。それから、満を持してのフィジカルCD、その名も『THE PACKAGE』を2012年にリリースして以来、ようやくのセカンド・アルバム『The Arrival』が到着した。アルバムリリースに先行して発表され、バルセロナで撮影した事が話題となったハイクオリティなミュージック・ビデオ“Break the Records”、曲中では96年の日本語ラップの記念碑的イベント<さんぴんCAMP>でのMUROの言葉がサンプリングされている。「こんなシーンを待ってたぜ、日本語ラップ!!!」

AKLO “The Arrival” -Teaser-

そう、あれから日本語ラップはより記録更新した進化をみせ、かつてないほどの活況を迎えている。ここ2ヶ月の間だけでも般若、NORIKIYO、KOHH、Y’S、JAZEE MINOR、stillichimiyaといった注目アーティストたちのリリースラッシュがあった。そして、本稿の主人公AKLOは今年の<フジロック>のグリーンステージで、デーモン・アルバーンのライヴの最中Gorillazの人気曲“Clint Eastwood”でまさかのサプライズ出演を果たした。シーン全体を巻き込み、日本語ラップを着実にネクスト・レベルへと導いているAKLO。Qetic初登場となる今回は、彼のこれまでの歩み、そして今作で遂げた「進化」について、その意図と狙いを語ったものになった。

Interview:AKLO

–––まずは簡単な来歴、そして、影響を受けたアーティストなどを教えてください。

そうですね。小学生のとき、MCハマーが好きで、ダンスのマネを完コピして、親戚が集まっている場で毎回披露してたのが、たぶん俺のブラックミュージックの最初の原体験だったと思います(笑)。それから、高校一年のときにアメリカの高校に通っていて、MATER Pを頂点とするNO LIMITっていうサウス(アメリカ南部)のクルーからヒップホップにハマっていきました。日本に帰ってきたら、ヒップホップなんて全然流行ってなくて。最初はNO LIMITに入る初のアジア人になりたいと思って英語でリリックを書き始めたんです(笑)。

それから、大分の大学に進学してからは、暇だったのでよりラップに集中しました。シーンに入っていく中で日本語でやり始めたのが、19歳ぐらいのとき。それと、当時イギリスに留学していた空くんが、大分の実家に帰っていたタイミングで俺のライヴに来てくれて。そのあと、俺は大学出て、ニューヨーク行って、東京に戻ってきたら、たまたま空くんが東京に引っ越してきてて、そこではじめてユニットになった。

2009年に『AKLOと空』でアルバム出したんだけど、それがあんまりうまく行かなくて。ニューヨークから帰ってきたばかりで、自分のラップは絶対評価されるべきだって自信もあったんだけど、それが全然うまくいかなかったから、悔しくて、2010年にフリーダウンロードのミックステープを出したんです。「買ってくれないんだったらタダでどうぞ、とりあえず俺を知ってくれ」って。そこから三か月ぐらいで次のミックステープも出したんです。それからファースト・アルバムをリリースするまでに一年以上間があったんですが、その間に客演依頼を多くもらって、シーンの一員になり、プロデューサーのBACHLOGICさんが主宰する〈One Year War Music(以下、OYWM)〉より2012年の9月にファースト『THE PACKAGE』をリリースさせてもらいました。

–––『THE PACAKGE』リリース後の反響はどうでしたか?

正規アルバムを早く出してほしいっていうのはあったと思うんだけど、今までは他のUSトラックを拝借してラップを乗せたジャックばっかりだったし、ファン的にも、オリジナルでやってほしいけど、せっかくUSっぽいアプローチでラップができるラッパーなのに、ダサいトラックではやってほしくないって思われてたんじゃないかな。〈OYWM〉は本当に日本で最高峰のトラックメイカーがやっているレーベルだから、そこでやれたってことは、俺じゃなくても俺のファンも、絶対いいって思ってくれてただろうし、結果的にもそれから反響もあった。

–––そこから次の展開をみせるシングル曲“NEW DAYS MOVE”も早々にリリースしていました。そう考えるとこの全作『THE PACKAGE』からの2年間の空きっていうのは、今までのAKLOさんのキャリアをみても少し時間がかかったのではないか、と思うんですが。

ありましたね、はじめてこれだけ時間がかかった。それこそ『2.0』っていう2枚目のミックステープに関して言えば、スタジオ一日だけとって、丸一日で十何曲あるのをレコーディングしたアルバムなんです。自分の制作スピードの速さって結構トップレベルだなって自信もあったんだけど、今回は結構悩みました、でも粘ってよかったなって思ったのは、今回は「進化」なんです。今までのAKLOってこういうスタイルだよねっていうのを完全に理解された上で、じゃあ次は何ができるか。『THE PACKAGE』を出すまでは、今まで認められなかった悔しさが原動力だったけど、次は進化しなくちゃいけないって思ったからこそ、時間がかかった。今回はテクニカルにわかりやすく進化してやろうと思って。

AKLO – “NEW DAYS MOVE” (Pro by BACHLOGIC)

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