「このアルバムの曲は、すべて夜に書かれたものなんだ」。デビュー作リリース時、ザ・エックス・エックスのメンバーは口々にそう語っていたのだけれど、ポール・マッカートニーが後援者代表を務めるリヴァプールの総合芸術大学LIPA(Liverpool Institute for Performing Arts)で出会ったリチャード・オフリン(Dr, Vo/アイルランド)、グロ・イックリン(B, Vo/ノルウェイ)、ルイス・サントス(G, Vo/ブラジル)による3人組オール・ウィー・アーもまた、静けさのなかでそっと熱気を帯びるような、めくるめく夜の音楽を鳴らすバンドのひとつだ。

実際、デビュー作『オール・ウィー・アー』は、すべての曲が夜に書かれている。とはいえ、彼らがザ・エックス・エックスと決定的に異なるのは、どの曲もメンバーが顔を突き合わせて繰り広げるジャムを基調にしていること。それは言い換えれば、「3人の要素を対等に溶け合わせたものを作ろう」ということで、決まったメイン・ヴォーカリストが存在しない不思議な編成も、そんな気持ちの表われなのだろう。本作はリード・シングル“Feel Safe”に引き続きダン・キャリーがプロデュース。フランツ・フェルディナンドの『トゥナイト』やホット・チップ、M.I.A.、バット・フォー・ラッシェズ、イェイセイヤーなどで手腕を発揮してきた彼らしい、艶やかなグルーヴを加えている。

そうして生まれたのは、ファンク、ディスコ、サイケ、チルアウト、ドリーム・ポップ……とあらゆる音楽を横断する、夜の気だるいフィーリングと、フロアの熱気とを詰め込んだ“国籍不問のナイト・タイム・ディスコ”。かつてあのビートルズを生んだ街であり、現在もサーカ・ウェーヴスやラプスリーといったアルバム・デビュー前の大型新人が続々台頭しているリヴァプールから、また一組楽しみな新鋭の登場だ。

All We Are – “I Wear You”(Live)

Email Interview:Luís Santos(G, Vo)

――あなたたちはポール・マッカートニーが後援者代表を務めるLIPA (卒業生はウォンバッツなど)で出会ったそうですね? その時の様子を教えてもらえますか。メンバーそれぞれの第一印象は?

当時も今も、みんなあまり変わってないんじゃないかな。全員ジャムるのが好きで、夜型人間だった。出会った日から親友になれたし、年を追うごとにどんどん深い付き合いになってったんだよね。そう考えると僕らは幸運だと思う。好きな人たちと好きなことをやっているんだから。

――在学中、ポールと話す機会はあったのでしょうか。彼にどんなことを学びましたか?

ポールは最高だよ。みんな、3年目に1対1でポールの授業を受けたんだ。一緒に曲を演奏したり、あとは音楽業界のよもやま話を教えてくれたりね。凄く楽しかったな。

――では3人でバンドを組むことになった経緯を教えてください。また、誰か1人ではなく、3人ともヴォーカルをとる編成になったのはなぜなのでしょう? 

大学に通っている時は、ただジャムったり、一緒に曲を書いたりしていただけだったんだよ。でもいざ「卒業」ってなった時に、まだリヴァプールを離れたくないし、3人一緒にいたいって思ってね。じゃあ「バンドを始めるのが一番だ」って気付いたんだ。お互いの音楽的な相性はばっちりだって分かっていたから、そうするのがとても自然に感じられたし。もともとは全員ギタリストだったんだけど、この3人だけでバンドをやるって決めてたから、結局リッチ(=リチャード)とグロが別の楽器に変更することにしたんだ。ギターが一番上手いのは僕だったからね。そういう経緯でこのバンドが始まって、残りは後から付いてきた感じだよ。

【インタビュー】ナイト・タイム・ディスコトリオ=オール・ウィー・アー。デビューアルバムは“グルーヴがあるような音楽” music150128_awa_1

――「オール・ウィー・アー」(=私たちみんな、もしくは人類みんな)とは、とても珍しいバンド名です。この名前にした理由を教えてください。

自分たちにとって一番正直な名前だったから、かな。これが“自分たちのすべて”だよ、ってことなんだ。

――ノルウェー、アイルランド、ブラジルとそれぞれ出身の異なる3人が集まったバンドだからかもしれませんが、「人種や性別、価値観の異なる人々がひとつに繋がる」という、黎明期のハウス/ディスコ・ミュージックの「ユナイト」に近いニュアンスも感じます。音楽的にも、ファンクにサイケにディスコに…と様々なものがひとつになっていますが、バンド名にはそういうニュアンスも込められているのでしょうか。

素晴らしい解釈だね。まさに的を得てると思う。

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