緻密なアンサンブルや緩急に満ちた轟音と、儚さと透明感をたたえた女性ボーカルによるバンド、aquarifa。サウンドのみならず、人の本質に触れる歌詞世界などは凛として時雨やtricot、きのこ帝国などを好きなリスナーにも徐々に浸透している様子が伺える。そんな彼らがバンドの本質をより研ぎ澄ませながら、ボーカル岩田真知の歌をよりしっかり伝える新作を完成。『マーニの秘密』と題されたこの3rdミニアルバムは、北欧神話の兎の姿をした神=マーニをメタファーに、日常の中にある危機や、人と人との関係性を描いた物語性のある仕上がりになった。サウンド面でもakkin(ONE OK ROCKやMAN WITH THE MISSION他)、石崎光(堂島孝平、吉澤嘉代子、他)をプロデューサーに迎え、バンドの特徴をよりクリアに表現することに成功している。今回はメンバーの松川真也(G)と岩田真知(Vo、G)へのインタビューを実施し、aquarifaの成り立ちから、新作についての話を聞いた。と、同時に後半はバンドのクリエイティブ・ディレクターであるHALに、ジャケットのアートワークや、2曲で一つの長編MVを作った理由など、よりこのバンドの魅力を楽しめるエピソードを入手したので、ぜひ併せて、全方位的にその魅力を楽しんでみてほしい。
2015.03.06<密会に月あって〜スペシャルエディション〜>@渋谷7th FLOORより
2015.03.06<密会に月あって〜スペシャルエディション〜>@渋谷7th FLOORより
Interview:aquarifa[岩田真知(Vo./Gt.)、松川真也(Gt.)]
——インタビュー初登場ということで、改めてバンドの成り立ちなどを教えてください。
松川真也(以下、松川) 発端は僕で。大学のサークルで初めてバンドを始めたんですけど、卒業する手前でオリジナルで音楽をやりたいと思うようになったんです。当時加入していたのはいわゆるロックンロール・バンドで、曲は作っていなかったんですね。でも、僕自身はもっといろんな好きな音楽を自分の中で消化したバンドがやりたくて始めたのが、初期のaquarifaです。
——9mm Parabellum Bulletのメンバーは大学のサークルで一緒だったんですよね?
松川 はい。彼らは大学のサークルの中でバンドを組んでいて、僕はちょっと出遅れちゃって。本音を言うと(菅原)卓郎とバンドをやりたかったんですよ(笑)。彼らは高いモチベーションでやっていて、なかなかそんなバンドはいなかった。大学を卒業してから横浜のライブハウスで9mmとたまたま対バンすることになったんですけど、その時の彼らのライブを見て、それまで在籍していたロックンロール・バンドを辞めて自分のバンドをやろうと決意しました。
——9mmが松川さんの本気を引き出したと。ちなみに当初からaquarifaは女性ボーカルだったそうですが、女性ボーカルに拘りが?
松川 実は最初はそんなになくて。元々好きだったバンドは男性ボーカルが多かったんです。例えばナンバーガールやミッシェル・ガン・エレファント、レッド・ホット・チリ・ペッパーズとか。そういう理想はありながら、実際にバンドをやろうと思うと、周囲に男性ボーカルであまり歌のうまい人がいなかったんですね。それであまり拘りもなかったので、女性ボーカルにも会ってみて。逆に女性ボーカルでやってみたら、女性ボーカルに対して激しいサウンドをぶつけるとか、そういうことに面白みを得てしまったんでしょうね。
——そんな中、岩田さんはオーディションでaquarifaに加入した最後のメンバーということで。加入以前はどんな活動を?
岩田真知(以下、岩田) 「音楽でやっていきたい」と思って、専門学校に入ったんですが、楽器をやる方が少なすぎてバンドを組めるような状況じゃなかったんですね。そこで松川さんと同じように「この人と組みたかったのに……」と、悔しい思いもしつつ。でも、今、自分ができることをしようと思って、弾き語りをしながら曲を作っていましたね。
——aquarifaへはオーディションを受けて参加して。
岩田 そうです。学校を卒業したら音楽に触れている時間そのものが急になくなってしまうし、そのことに対する焦りや不安もあって、自ら動かないともう「バンドをやるのはこれがラスト・チャンスじゃないか?」という思いがあったので、いろんな募集を探していたんです。その中でもaquarifaは、こっちが歌う音源を送らないとバンドの音源を聴けないし、ちょっと敷居は高かったんですけど、その募集の文章とかも他のバンドと雰囲気が違うし、本気でやってるんだろうなっていうのが伝わってきたので、思い切って応募しました。
左)松川真也、右)岩田真知