Interview with Jeffrey Remedios

アンダーグラウンドとオーバーグラウンドのアイディアを合体させて、
〈アーツ&クラフツ〉が創立されたんだ

――まずは〈アーツ&クラフツ(A&C)〉の10周年、おめでとうございます!  毎日が激動の日々だったんじゃないかと思いますが、このディケイドをどのように振り返りますか?

ありがとう。ありふれるほど思い出があるから一文では表せないけど、ブロークン・ソーシャル・シーンが<ロラパルーザ>で「もう1曲歌ってくれ!!」って、何万人ものファンにリクエストされていたのは印象深いな。それと、もちろん〈A&C〉所属のアーティストたちが受賞した数々の「JUNO」賞……。そしてファイストが『メタルズ』(11年)で「ポラリス・ミュージック・プライズ」を受賞した時は、特に感慨深かったよ。

――あなたたちの成し遂げてきたことは、カナダ全土を超えて世界中の音楽ファンをインスパイアしてきました。この記事ではじめて〈A&C〉を知るかもしれない日本の読者のために、あらためて〈A&C〉誕生の経緯、そして〈アーツ&クラフツ〉という素晴らしいネーミングの由来を聞かせてもらえますか?

遊び交じりで考え付いた名前なんだよ。だけど、後になってちゃんと理由付けをしたんだ。〈A&C〉の始動に関連しているような理由をね。それっていうのは、〈A&C〉はある種の“約束”を意味してるんだ。僕たちはアーティストが音楽のクリエーションに入れる熱と同じくらい、ビジネスに熱を入れるっていう約束をね。だけど、名前を思い付いた当初はそこまで考えてなかったよ。

――あなたはかつて〈ヴァージン・レコード〉の社員だったんですよね。なぜ生粋のインディー・キッズであるケヴィンと、メジャー・レーベルで働いていたあなたがタッグを組むことになったのでしょう?  また、あなたがオーバーグラウンドで培ってきたノウハウは、〈A&C〉にどのようなメリットをもたらしましたか?

ケヴィンと僕はブレンダン・カニングに紹介されて出会ったんだ。僕たちが初めて会話したとき、いつの間にか「インディーVSメジャー」の討論になってたんだよね(笑)。それをきっかけに、とても健康的な関係があることにも気付かされたんだ。それで僕たちはルームメイトになった。つまり、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドのアイディアを合体させて、〈A&C〉が創立されたんだ。いいアイディアをお互いから盗み合ったんだよ。

――「We never had A&R(我々はA&Rを持たない)」というアイディアはなぜ生まれたのしょうか。それは現在も、今後も健在なのですか?
※A&R・・・アーティスト・アンド・レパートリーの略。アーティストの発掘・契約・育成などに関わる職務

単純に、そこまで献身的なA&Rがいなかっただけのことなんだよ。A&Rの仕事はバンドとサインすることだと思われがちだけど、大半のA&Rっていうのはバンドの事情に立ち入る役割を持ってるんだ。もしアーティストが寛大で、アイディアを受け入れてくれるようなスタンスを持っていれば、僕たちは立ち入ったね。たとえば、ファイストとかTimber Timbreなんかは、僕たちにアルバムを完成した形で持ってくるんだよ。立ち入るのか、あるいは放っておくのかは、アーティストがそれを求めているか求めていないかで判断を下してた。