(ここでサイモンに代わってフィリックスが登場)
――新作のコンセプトについてはサイモンに聞いたのですが、実際のアルバム制作はどのように進んで行ったんでしょう? 制作当初、2人で話し合ったことなどがあれば教えてください。
フィリックス・バトン(以下、フィリックス) 大それた計画はなかったんだけど、とにかく「また僕らのDJセットでかけられるような作品を作りたいね」って話してたんだ。やっぱり、前作にあたる『スカーズ』や『ゼファー』は、そういう意味では少しずれた作品だったからね。あの頃の僕らは、ちょっとダークな時期に差し掛かっていたんだよ。でも今回は、もっと明るい方向に目を向けようと思ったんだ。スタジオも移動してね。ちゃんと窓のあるスタジオで制作を進めていった(笑)。それもあって、この何年かの間に、自分たちは現実の犠牲者なんじゃなくて、現実を創り出す存在なんだって思えるようになった。同じ現実を前にしても、見方によってその捉え方は様々なものに変化させることが出来る。そう思うようになったし、自分たちの日常や生活の積み重ねの大事さを実感することが増えた。すべてはここ数年の僕らに関する、そんな生活や状況の産物なんじゃないかな。
――音楽的に影響を受けたものはありましたか? バウアーの“ハーレム・シェイク”など、いわゆるトラップ的な音楽にも影響を受けたそうですが。
フィリックス “ハーレム・シェイク”は“バッファロー”の影響源だね。車で海賊ラジオを聴いていた時に、たまたまジャングルが流れてきてね。それでサイモンと『僕らはジャングルってやったことがないし、一度作ってみようか?』という話になった。でも、今さらオールド・スクールなジャングルをやるのもどうかと思ってね。それで当時同じように流れていた“ハーレム・シェイク”のようなトラップを混ぜ込んでみたんだ。それから、“バッファロー”という曲名はネイティヴ・アメリカンのインディアンたちのシンボルを表わしてる。彼らの生活にある自然との繋がりであるとか、平和的な考え方であるとか……“バック・トゥ・ザ・ワイルド(=自然に帰る)”みたいな考え方を象徴するものだね。僕はちょうど、制作中にそういうものに興味を持っていたんだよ。そういえば、今回のアルバムのイントロには日本の太鼓が使われているけど、その辺りもありとあらゆる土着的なものとの繋がりを表現してるんだ。
Baauer -“Harlem Shake”