るでノイ! とビースティ・ボーイズが時空を超えてジャムっているかのようだ。バッファロー・ドーターが結成20周年の年に送り出す“初”のベスト盤『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』は、ミニマルでアンビエントでオルタナでポップな彼らの屈指の名曲“New Rock”に乗せて、鎮座DOPENESSと環ROYによるKAKATOが最高にクールでパンキッシュなMCをかます“New Rock 20th”で鮮烈に幕を開ける! ベスト盤と言うと、たいがいは過去の名曲の選りすぐりを集めたものだけど、本作は全然違う。もちろん彼らの代表曲は収録されているのだが、冒頭の“New Rock 20th”をはじめ、小山田圭吾、日暮愛葉(THE GIRL)、有島コレスケ(told/0.8秒と衝撃。)といった豪華メンツを迎え、新たに録り直したニュー・ヴァージョン、ビースティー・ボーイズのアドロックやAVEC AVECによるリミックス、これまで世に出たことがなった未発表のライヴ・ヴァージョンなど、新たなアプローチやヴァージョンが随所に散りばめられているのだ。これまでバッファロー・ドーターを追いかけてきたファンにとっても新鮮な驚きがたくさんあるだろうし、諸事情で現在入手困難となっている作品も多いので、これからバッファロー・ドーターを知ろうというファンにとっても最高の入門編となるに違いない。

90年代初頭に、クラウトロック、アシッド・ハウス、ヒップホップ、オルタナなどをハイブリッドしたまったくオリジナルな音楽性を響かせシーンに現れ、かのビースティ・ボーイズの伝説的レーベル〈グランド・ロイヤル〉とも契約を交わし、20周年を迎える現在も精力的な活動を続ける3人組、バッファロー・ドーター。90年代に彼らが放った衝撃をモロにくらった筆者はもう37歳。2000年以降に彼らが出した作品もどれも素晴らしいものばかりだが、いま20歳ぐらいの若者の中には、バッファロー・ドーターに馴染みがないという人がいてもおかしなくないだろう。だが、彼らの音を一度も聴かないでお墓に入ってしまうのは間違いなく一生の損である。こんな面白い音を出すバンドは世界中どこにもいないのだ。とにかく『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』を聴いて欲しい。そしてこれからもまだまだ進化を続けるバッファロー・ドーターのこれからを一緒に見届けていこうじゃないか!

Interview:Buffalo Daughter(シュガー吉永、大野由美子、山本ムーグ)

「New Rock 20th featuring KAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS)In The Studio」

――今回のベスト盤は、過去の楽曲を選曲しただけではなく、新録曲やライヴ・ヴァージョン、新しいリミックス音源などが多く収録されていて、ベスト盤でありながら、新しい切り口でバッファロー・ドーターを聴かせるという試みにも果敢に挑戦されているかと思います。バンドにとっても20年目にして初のベスト盤となるわけですが、どんな方向性、コンセプトを考えスタートしたのですか?

シュガー吉永(以下、吉永) ある日、今年は結成20周年だということにハッと気が付きまして。じゃあ、せっかくだし何かやろうかって(笑)。で、実は近年、過去の作品で入手困難なものが結構あるという状況もあったので、その辺りをおさらいできるような内容のものなんかいいよね、なんて最初はわりと軽い気持ちではじめたんですけど……。いやー、大変でした(笑)。選曲は自分たちでやると選び切れないだろうし、収集が付かなくなりそうだったから、人に頼んだ方がいいかなって。

――選曲はBBCのニック・ラスコムさんが担当されていますよね。

吉永 イギリス人の目線で選曲したら面白いかなって思って、バッファロー・ドーターのことをよく知ってくれていて、信頼できる人間ということで、ニックにしようと。アメリカでデビューしたバンドの20周年をイギリス人が振り返るっていうも、私たちっぽいなって。ニックから選曲があがってきて、最初は「ふーん、こういう感じの選曲なんだー」なんて思ってたんだけど、並べて聴いてみたらすごく良くて、さすがだなあと思った(笑)。で、そこからが大変だったんだけど。

――楽曲の権利の問題など?

吉永 そこも大きかったですね。でも、そこはどうにかクリアして、ようやくリリースできるかなってところまできて、また大問題があって。デジタルがNGだっていう。いまどきそんなことあるのかって(笑)。でももうリリースまで時間がないし、諦めるつもりもなかったので、そこから差し替え大作戦がはじまる(笑)。

――一難去ってまた一難的な(笑)。

吉永 本当にそう。新作を作る時にはまったくない苦労なので、まあ、いい経験になりましたけどね。ある意味、その反動で新しいアイディアが生まれたり、ライヴ音源を引っ張り出したり、いろいろな副産物があったこともたしかなので。作品のタイトルが『ReDiscoVer.』だけど、今回の制作の中で自分たち的にもたくさん再発見があった。“LI303VE”の初期のヴァージョン、むちゃくちゃヤバいよねー! とか言いながら(笑)。

――1曲1曲にいろいろな想いやエピソードがありそうですね。

大野 ありますね。“Great Five Lakes”の録音では、20年間ライヴで使い続けているレコードを使っているんだけど、その盤が古すぎてプチプチしたノイズがあったり、声がつぶれていたりして(笑)。実際はクリアな音のデジタル音源もあったんだけど、20年間使ってきたこの音がいいんだよって、敢えてそのまま使うことにしたんです。

吉永 デジタルと聴き比べるともうクリア度が違う(笑)。

――アルバムの冒頭を飾る“New Rock”は、バッファロー・ドーターの代名詞的な曲でもありますが、今回はKAKATOをフィーチャーした新録が収録されています。彼らと一緒にやることになった経緯というのは?

吉永 彼らのアルバムで“New Rock”を勝手に使っていたんですよ(笑)。まずそれで興味を持っていて。で、かっこいいなって。“New Rock”も差し替えなくてはいけない曲のうちのひとつだったので、KAKATOも勝手に使ってるし、こちらも差し替えなくてはいけないわけだし、使えないどうしで、一緒にやっちゃおうって。

山本ムーグ(以下、山本) 盗み返しみたいな(笑)。

――はははは。2曲目の“Beautiful You”もまた日暮愛葉さん、有島コレスケさんを迎えた新しい録音になりますね。

吉永 愛葉は、私たちが「米国音楽」のカーディナル・レコードから最初のレコードを出した時に(NG3、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER、そしてバッファロー・ドーターの3作品が同時リリースされた)、一緒に出した最初のレーベル・メイトのひとり。“Beautiful You”はバッファロー・ドーターの中ではオルタナ色の強い曲で、その前後にわたしが愛葉のソロ・ライヴを観たというのもあるんだけど、彼女と一緒にやったら楽しいだろうなって。やっぱオルタナは愛葉でしょって。でも彼女もデビュー当時から20年経っているから、もう昔のオルタナ感という感じではなかったけど(笑)。

大野由美子 すごく可愛らしくなった気がした。昔はもっといかついロック姉ちゃんみたいな雰囲気だったけど。

――3曲目の“LI303VE”は、今回、唯一メンバー・サイドからリクエストをして収録した曲だと聞いています。最初、ニックさんの選曲には入っていなかったということですか?

吉永 そう。ニックに「(“LI303VE”は)バンドとしていちばん最初に作った曲だし、ライヴでもやり続けている曲だから、今回ぜひ入れたいんだけど」って伝えたら、「オー、オレは何をやってたんだ! すまん、すまん!」みたいな返事が返ってきて、入れてもらった(笑)。

――山本さんのライナーノーツでも、当時、すでに入手困難だったTB-303を偶然お店で見つけて、それがバンドにとって大きな出会いとなったことが克明に記されてありました。

山本 そもそもTB-303自体が伝説的なマシンですからね。初期のデトロイト・テクノのプロデューサーたちが壊れたMC-303を創意工夫して使ったところから、面白いサウンドが次々に生まれていったとか……、僕はそういう話が大好きなんで。まあ、ある種、TB-303と言えば、神格化された機材のひとつなわけです。ほぼ店頭では見つけられないという。それがその時はたまたま2台あったんです。

吉永 2台あったねー。

山本 そんなチャンスはないから、もちろん2台買うべきだったんですけど、当時は所持金がなくて、通販みたいな支払い方で1台を買うのが精一杯だった。

――おいくらくらいで購入されたんですか?

山本 3万円くらいだったような。

――それはむちゃくちゃ安いですね!

大野 リコーダーとかアコーディオンとか売っている普通の街の楽器屋さんのようなお店だったよね。

山本 僕はいかにも地元の人間のように立ち振る舞って、「これなに~?」とか聞いたりして、おじさんに興奮とことの重大さを悟られないようにしていた(笑)。

――“Peace”のリミックスをビースティ・ボーイズのアドロックが出手掛けています。ビースティ・ボーイズと言えば、バッファロー・ドーターがバンド結成当時に目指したバンドのひとつであり、その後〈グランド・ロイヤル〉のレーベル・メイトとしても活動を共にしてきたりと、みなんさんにとって特別な存在だと思います。みなさんにとってビースティ・ボーイズとはどんな存在ですか?

吉永 世代も近いんですよ。アドロックが同じ年で、マイクとアダムが少し上なのかな。

大野 聴いてきた音楽や好きな音楽がとても似ていた。ツアーの時とかレコード屋さんに連れて行ってもらったんだけど、自分たちの好みにばっちりハマるところばかりで。最初は憧れだったけど、会って交流を重ねていくごとに、自分たちに近い感覚を持った稀有な存在の人たちだなって思うようになった。そういう人たちがアメリカで見つかって、とても嬉しかったな。それはルシャス・ジャクソンも同じだけど。

★インタビュー、まだまだ続く!
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