――二人ともまた好きなものが違う感じがいいですね。ヒップホップは通りました? あと最近でいうフライング・ロータスのようなLAの新星ビート・シーンなどについては興味ありますか??
Go-qualia: うーん、ヒップホップはあんまり漁らなかったですね。どちらかと言うとダブよりのもので、アンドリュー・ウェザーオール辺りの流れで。プレフューズ73は大好きでしたね。<Anticon>や(<K7>の)ファンクストラングも好きですね。ブルーハーブやDJケンセイさんとか、あの辺りの人達がボーズ・オブ・カナダをかけたり、アンダーグランド・ヒップホップの人達のも聴いてきて、そういう影響もかなり受けてますね。
フライング・ロータスやドリアン・コンセプト、ハドソン・モホークなどは出始めは喰いつきましたね。一気に出てきたので。
Yako: 僕もヒップホップ自体は全然通ってないから分からないけど、プレフューズ73みたいな、そういうアプローチのヒップホップは好きですね。
――お二人の中で、シーンや流行りとは別で、単純にひとつのアーティストの音を見つけて聴くのが刺激的なんですかね?
Yako: フライング・ロータスとかあの辺りは聴きますけど、それを自分でやろうとは思ってないですね。ブーム自体を意識してる訳じゃなくて、そこに近くも感じないってところですかね。でも事実、ネットレーベル系のものでユーザーは増えてるんだろうなと思いますね、フェス(イベント)で見てても。
Go-quali: インターネットで、ブワ~ッて盛り上がるムーブメントが出ては消えて、出ては消えてってそういうのを見てると乗っかっていこうと思うことはあんまりないですね。例えば、今<分解系>をやっていて、やっぱり他にもネットレーベルがたくさんできてブームになったとしても流行らなかったとしても、自分にはあんまり関係はないかなって思いますね。
でも<Maltine Records>のアーティストで、mmmmmm(みみみ)さんを聴いた時、あれは本当に衝撃でしたね。なんかそれこそ、ハドソン・モホークやフライング・ロータスのあのシーンが、ドガーっと出て来た時の、あの衝撃みたいなのが身近でしかも日本人で出てきたっていう。アーティスト自体もかなりエキセントリックなんですよ(笑)。
Yako: いや、あれは衝撃的でしたね。僕の感想は、mmmmmmの初見は気持ち悪いと思って(笑)。「何だこれは!」 って。フライング・ロータスやハドソン・モホークもギミック的にも組み合わせが感覚的に良い! って入りだったけど、このmmmmmmの場合は「異物感」というか。あ、入ってきちゃいけない音楽が自分の中に入ってきてるみたいな気がして、最初は好きになれなかった。でも聴いていたらクセというかスゴイぞこの音源は‥って思い始めて。予測させない、シーケンスを感じさせないっていうのかな? そのシーケンスを計算の中でずらして作る音楽が最近よくあるけど、mmmmmmの場合特にそれが良くて、単純に聞くと気持ち悪いシーケンス感なんだけど、もう一回聞くと気持ち良く感じたり、癖になったりする。ほんとに衝撃的でしたね。
Go-quali: その「異物感」があたらしかった。mmmmmmさんは<Maltine Records>の『サウンドハウス』って結構オーソドックスなハウスコンピを集めたアルバムで、その中でもかなり異彩を放ってて、だけど割としっかりしたダンスミュージックだったりもするんですよ。それがまた意外だったりして。
大きなジャンルの括りやネット上にあるコミュニティを紡ぎ合わせて一本のラインみたいにしたい。ユーザーが別のテリトリーを移動してグチャグチャになったら面白いと思った。
――<分解系>の話に戻りますが、当初、何気なく「良い音を集めたひとつの場を作ろう」と始めた訳で、レーベル名を浸透させることが目的ではなかったわけですが。実際に現在、そのレーベル名で語られる機会が増えていることに対してどう思ってますか? まずその<分解系>が知らないところで語られているっていう認識はありますか?
Yako: ないですね(笑)。あんまり意識してなくて、インタビューされることも想像してなかったし。当初なんて「まったりと音源出せる場所を作りたいですね」ぐらいだったので。外に<分解系>の名前を出されるのを常に意識はしてなくとも、感覚的に分かる時もあって、不思議だなと思いますね。
Go-quali: 僕らが<分解系>という言葉を多く口に出すのは自分たちがやっているからであって、じゃあ僕らが「ネットレーベルが、ネットレーベルが‥」っていうのも違うかなと思いますね。ネットレーベル自体、もう世界中に膨大な量のデータベースがあって、どんどんアップされていくものだし、多分一生かけても掘りきれない。その膨大なデータベースの中で、本当に粒みたいなところに僕らがいるんですよ。
――実際にネットレーベルとして1年半近くやってきてみて、今後の展望を持ち始めたり、次の展開を考えていはいますか?
Yako: マイペースにやってけたらなっていう(笑)。長く。
Go-qualia: 1年に1枚しか出さないようなペースのレーベルもあるから。僕らは今すごくハイペースですね。
Yako: そうですね。一年間で18(枚)出してます。
――現在<分解系>は池尻に出来たソーシャルTV局<2.5D>で月1回のイベント(USTREAM配信)をやってますが、リアルな現場からも発信したいという想いはあるんですか?
Yako: <2.5D>でのイベントは僕が秋葉原のmograでやっている<OUT OF DOTS>とは全然違うパーティーで。<OUT OF DOTS>の方は分解系とは違ったアーティストも出ているし、あとはエレクトロニカっていうもの凄くデカ過ぎる括りの中で、少しでも触れている要素と要素を繋ぎ合わせて一本のラインにしたいってイメージを考えているんです。逆に<2.5D>でやっている方は、もっと<分解系>の出してる音源を「場所として表現したい」と思ってますね。あとやっぱりネットでやってるからこそ見えないユーザーを実際にリアルな反応を好奇心的に観たいっていうのが僕的にはあったりして。
――<分解系>@2.5Dのイベントに行った時、正直「独特だな~」って思いました。フロアに絨毯がひいてあってそこに座ってみているオーディエンスの雰囲気とか。音もそうですけど、面白いなって単純に思えて。こういうイベントがあると、ネットレーベル自体を知らなくても、面白い音とかアーティストがいるぞって思えるキッカケになると思いますね。
Yako: そうですね。<分解系>の雰囲気は独特かもしれないですね。2.5Dみたいな場所でやるのは、USTREAMでも見れるし不特定多数の人が集まれてキッカケとしては凄くいいじゃないですか。
結構色んな人、アーティストさんとかも来るんですよ。でも普段、ネットで活動している人たちって色んな名前を持って、ジャンルや場所を変えて活動してますけど、ネットがあるからその繋がっている感じはしつつも、ネットの中でだけテリトリーを作っちゃっている感じもあるんですよね。
Go-quali: そう、コミュニティっていうのを自分達で限定しちゃう。そこの範囲でしか探らないし、例えば他に旅行に行く感じで覗きに行くこともないし。まあ、無理やり混ぜなくてはいけないってことはないけれど、行き来があったら面白いだろうなって思いますね。
Yako: まさに。そういう部分を紡ぎ合わせたいって思う。アーティストを紡ぎ合わせるっていうよりもそこに付随するコミュニティや情報、ユーザーを敢えてグチャグチャに出来たら面白いなって。それをする為に、ネットレーベルを一つの方法として選んだ。ネットレーベルって、ひとつのジャンルとして捉えられがちだけれど、手法のひとつなんですよ。
――ネットレーベル自体、マーケティングされて、「じゃあ音源を作りましょう、売りましょう、有名になりましょう」という音楽の思考とは全然違った方向性ですよね。
Yako: そうですね、全然違いますね。そもそも音楽を職にしていないので。本業があって、お互い別のところに表現する場がある。<分解系レコーズ>で出すのにアーティストを囲うみたいのもないし、ここの「場」を本当に好きなように使ってもらえたら。ロビーみたいに。それでうちから出したことによって、他のレーベルから声がかかって別のリリースになってていうのは個人的にすごい嬉しいですしね。
Go-qualia: マーケティング的なうんたらはなくて、まず作る人がいて、それをどういう風に出すか? どういう作品を届けるか? その範囲でしか考えない。それ以上の細かい部分っていうのは自由なんですよ。
ひとつのフォーマットに留まらない。無理やり続けるのは意味がない。必然性として、自分たちがやりたいことをやって共感するユーザーがついてきて欲しい。
――先日、<分解系>からネットレーベルのコンピを出したのも、その色んなものを紡ぎ合わせてみせたいっていう目的のひとつなんですか?点と点をラインにしてさらにゴチャゴチャさせてみようっていう。
Yako: <分解系>っていう名前とは真逆なことですけどね(笑)。あれは僕が考えて国内でもネットレーベルが色々あって、やっぱりそこでもユーザーによってコミュニティが生まれちゃう訳ですよ。もちろん全部を聴いている人もいたとしても離散したコミュニティになっちゃう。それで、さっき言ったエレクトロニカとかアンビエントとかそういったジャンルのようなちょっとしたテーマの括りの中で色んなレーベルを集めて、それを繋げる。それで、ユーザー同士をグルグル回さして、グチャグチャにしたいっていう。どっちかっていうと色々知って欲しいっていう感じもあったので。一回くっつけてまたバラして、そをまた組み立てて色々やれたら絶対面白い。だからコンピのタイトルは『ブリッジ・オブ・バベル』って名前だし。
Go-qualia: 全部のレーベルをチェックしてる人はそれだけで嬉しいだろうし。『ブリッジ・オブ・バベル』に関しては、本当に他のを聴いてほしいから出した。
Yako: それぞれのレーベルの色が本当に出てて、ユーザーはそれを知った後にどこへ行くのかの選択を自分でする訳じゃないですか。そういうパイプになれたらベストっていうか。ユーザーもそうだし、アーティストさんにも言えることで。だから、ただ<分解系>に留まらないで欲しいとも思って。留まらなくて良い、色々知ったらバラバラになっても良くて、とにかくキッカケにして欲しい。アーティストさんは他からたくさん作品を出してもらいたいし、うちで見つけた人には是非、声をかけてもらいたいし。多分それが出来るのがネットレーベルで、アーティストを契約書で囲うわけではないし、お金の問題をそこまで考えてなくて良いから出来るんだと思うんですけど。
――レーベルやイベントなどお二人の感覚的に、続けることに固執するよりも、形、表現を変えることが面白いという発想は、刺激になりますね。
Yako: そうですね、イベントもじゃあ来る人がいなくなったらスパッとやめると思います。それっていうのは、実際に他にもっと面白いことがあるってことだし、自分たちがやってることに共感する人が減ったって話だから。要は、需要に答えることだけをただ、やりたくない。共感する人が減った時、同じところで悩むよりも、じゃあ今度は自分たちがまたやりたいことを打ち出していこうって思いますしね。
Go-qualia: 無理やり続けるのはちょっと違う、それをする意味もない。必然性ですね、自分らもやりたくて、ある程度ユーザーもついていくんだったら良いなと思いますけどね。
Yako: それは是非やりたい。やっぱり求められているものだけを意識して出し続けるのが良いかって、僕たちはそれだけじゃ満足いかないだろうし。でも自分たちがこれだって思ってやっていることに共感してくれる人が多いのはすごく嬉しいことだと感じます。イベントに限らず作品に関してもそうだけど、こっちからも予想外のモノを投げかけて、向こうからも予想外の反応あってこそだと思います。
Label Information
Bunkai-Kei records presents
OUT OF DOTS
これまで秋葉原mograで開催してきたBunkai-Kei records presents “OUT OF DOTS”を、9月19日(祝)に拡大版として、渋谷WOMBにてデイタイム特別開催することが決定。
2011.09.19(祝/月)@WOMB
OPEN 15:30/CLOSE 22:30
ADV ¥2,000/DOOR ¥3,000(1ドリンク別)
★2011.08.14.10:00より前売りチケット発売開始!
MAIN FLOOR LINE UP:world’s end boyfriend[DJset](Virgin Babylon Records)、Himuro Yoshiteru、Go-qualia(Bunkai-Kei records)、SAITONE、mergrim(moph records)、Quarta330、Callasoiled(ALTEMA Records)、DUB-Russell(+MUS)、Nyolfen(Denryoku Label)
4TH FLOOR LINE UP:Fugenn & The White Elephants(PROGRESSIVE FOrM)、Silvanian Families、wk[es](Hz-records/CMFLG/PROTOCOL)、mmmmmm、nanonum、flady、RE:NDZ & YAKO(B2B set)、marix
VISUAL LINE UP:masatoTSUTSUI、takcom(tm)、Takuya Hosogane、Semitransparent Design(tm)、fermata、tatsuhico(ALTEMA Records)
池尻大橋ソーシャルTV局<2.5D>にて<分解系>のレギュラーイベント開催!
2011.08.24(水)@2.5D
国内ネットレーベルを集めたコンピ!
Title:Bridge of Babel(ブリッジ・オブ・バベル)
Artist:V.A.