――さる11月には早速UKツアーを敢行しましたが、どんな調子でしたか?
あれは最高だったよ! うん、本当に良かった。あのツアーを通じて、僕らは本当の意味でケミストリーを見出して、団結して、ひとつになれたんだと思う。オーディエンスも暖かく受け止めてくれたし、新しい曲を気に入ってくれたみたいだった。それを実感出来て、すごく励まされたよ。だってみんな、今度はどういうサウンドを打ち出すのか知らなかったわけだからね。ソロのファーストとはまた違うし、今回の曲は従来よりもかなりヘヴィでエネルギーがある。でも最近はそういうサウンドも広く受け入れられているんだよね。僕のほかのバンドの曲も2曲くらいプレイしたし、うん、手応えはたっぷりあったよ。
――“ザ・ジャッカルズ”という名前の由来は?
全員で3日くらい頭を突き合わせて考えたんだ。あらゆる英単語をチェックしながら(笑)。そして最終的にザ・ジャッカルズと命名した。ジャッカルってパンクな動物だろう?パンクで、それでいて柔軟で、そういう部分が気に入ったんだ。
――ジェイが“The Gears”のソングライティングにも参加しています。今後は4人で書いてゆくつもり?
ああ。そのつもりだよ。だからこそバンドを結成したかった。バンドで曲を書きたかった。実際、ザ・ジャッカルズを結成した瞬間から一緒に曲を書いていたし、ロンドンのソーホーにみんなで集まれるスペースがある。そこでみんなで会って、一緒に音楽を聴いて、曲を書いているんだ。
――アルバム制作の途中でバンドを結成したことで、何か方向性に影響はありましたか?
それは無かったと思う。バンド結成前から、僕がやりたいサウンドに合ったミュージシャンに参加してもらっていたし、バンドを結成してから、さらにその路線を突き進んだんだ。最初から明確なプランがあって、そこにバンドが加わって意思統一して、そして4人で新しい一歩を踏み出して一緒に成長したのさ。今のところ、ビックリするくらい順調に進んでいるよ。
Carl Barât and The Jackals – Glory Days
――ザ・ブロンクスのジョビー・フォードをプロデューサーに起用した理由は?
そりゃもう、ザ・ブロンクスもマリアッチ・エル・ブロンクスも大好きだからね。それに彼は、ギターってものを理解している。ギターから最高の音を引き出す方法を心得ているのさ。今回はギターを理解している人と組みたかったから。
――でも本作に着手する前は、しばらくギターへの興味を失っていたそうですね。実際、前作はピアノを主に用いてキャバレー的なシアトリカルなサウンドを取り入れたり、ギターの印象が薄い意外な路線の作品でしたが、当時はギターロックをやり尽くした感があったんでしょうか?
そういうわけじゃないんだ。僕はただ、これまでに自分が関わったバンドに起きた、様々なネガティヴな出来事と、ギターを結びつけていたんだよ。ギターがイヤなことを思い出させたのさ。でもそのうちに、実はギターの音こそそんな中で唯一の、ポジティヴな要素なんだと気付いて、再びギターを弾くことにしたんだよ。
――レコーディングはLAのジョビーのスタジオで行なったんですよね。
ああ。ダーティ・プリティ・シングスの2枚のアルバムもLAで録音したから、これが3回目だった。でも今回は同じLAでもグラマラスなハリウッドとかじゃない、ちょっと怪しいエリアに滞在したんだ。慣れた環境から自分を切り離すことで、作業に集中できるし、そういう場所に身を置くことって重要なんだよ。
――ソングライティングについては、ほぼ全曲を異なるミュージシャンとのコラボレーションで書いていますね。
うん。ニューヨーク、パリとかヨーロッパ各地、英国、色んなところで書いた。そうやってあちこち旅して、色んな人と曲を書きながら、アルバムのアイデアを練るっていうのが、僕の計画だったのさ。僕が大好きな人たちとね。もちろん今も歌詞は自分で書いているし、曲のほとんどは俺が作っているんだけど、誰かとパートナーシップを組んで曲を書くのが好きなんだよ。誰かに自分のアイデアを聴かせて、彼らの意見を聞かせてもらって、リアクションを得て、それを踏まえてさらにアイデアを練るっていう作業が好きで、自分以外の人のインプットが欲しい。だから今回は、かなり大勢の人と共作したよ。今は自分のバンドがあるから、今後は彼らと書くけどね。
――じゃあ、どの曲も異なるプロセスで生まれたんでしょうね。
そうだね。ダーティ・プリティ・シングスのメンバーとか昔からの友人たちとも書いたし、フランス人のバンジャマン・ビオレや、義理の兄弟であるエド・ハーコートとも書いたからね。それから……
――アンディ・バロウズとも“A Storm is Coming”を一緒に書いていますよね。
ああ。アンディとはニューヨークで会ったんだよ。実はこの曲は、初期段階ではジョニー・マーがギターを弾いていたんだ。でもそれはデモみたいなもので、LAで正式なレコーディングをした時、2,000ポンドとか、わざわざジョニーを呼び寄せるお金がなくて、諦めて俺が代わりに弾いたんだ。またいつか彼とはコラボするつもりだけどね。
Carl Barat and The Jackals – “A Storm Is Coming”
――そうなんですね。残念な話です。
うん。でも日本だけでもリリースできたらって思っているよ。
――アンディと以前一緒にバンドをやっていませんでしたっけ?
ザ・チャヴスだよね(笑)。ザ・チャヴスは解散してないし、結成もされてない――とも言える。微妙な位置付けのバンドなんだ。一度もライヴはやってないしね。確かテレビ番組に出演してプレイしただけで……いや、2度ライヴをやったな。うん!ごめん、忘れてた。プライマル・スクリームのマーティン・ダフィがキーボード担当だったんだけど、泥酔していてろくに弾けなかったんだ(笑)。
――中でも興味深いのが、バンジャマン・ビオレの参加です。フランスでは大スターながら、あまり英米のアーティストと共作していないと思うんですけど……。
うん、英国ではあんまり知られてないんだよね。バンジャマンはフランス語で歌うし、英国では言語が異なる音楽に対してあまりオープンマインドじゃない。英語以外の言語で歌うアーティストは、なかなか成功するのが難しい国なんだよ。君が言う通り、フランスでは広く愛されている、素晴らしいアーティストなんだけどね。
――どうやって知り合ったんですか?
う~ん、どうだったっけ? 確かベルギーで一緒につるんで仲良くなったんだ。ベルギーに何をしに行ったのか覚えてないけど(笑)。いや、それ以前にパリでオペラ(注:2012年に上演された『Pop’pea』)に出演した際に彼と共演して、不思議なシチュエイションなんだけど、その時に知り合って友人になったのさ。
――ダニエル・ミルズというのは馴染みのない名前なんですが、誰なんですか?
彼はアイズ・オン・フィルムというバンドを率いていて、なかなかいいバンドなんだ。まだブレイクはしてないんだけど、マネージャーに紹介してもらった。ザ・リバティーンズのファンなんだよね。でも本当に面白い若者なんだよ。