雄貴 じゃあ、今はシンプルなバンド・サウンド寄りの音楽だけど、今後シンセサイザーみたいに今使っている以外の楽器を使う予定があったり、もしくはそういうことへの興味もあったりする?(Galileo Galileiは2作目『PORTAL』で音楽性を変化させた)
Galileo Galilei – “さよならフロンティア”
Galileo Galilei – “青い栞”
ヴァン ストリングスとかホーンとかは凄く興味があるね。時には自分たちが今作っている曲や、自分たちのセットアップよりも視野を広げて考えることもあるよ。でも、僕らがやりたいのって、やっぱりシンプルなロックンロールだからね。それに、ストリングスとかを入れるとお金がかかっちゃって、蓄えがどんどんなくなっていくっていう単純な問題もあるし。ただ、それを置いて考えてみても、自分たちがやりたいのはそのシンプルなロックンロールをどんどん深めていって、その中で何が出来るかを追究することなんだ。僕らがすごく大切にしてることがあってさ、それは演奏やアレンジの前に、曲そのものがいいということ。たとえば、アコースティックでやったとしても、フル・バンドでやったとしても、どっちも同じくらいいいものになる曲を作りたいっていうか。ビートルズとかも、そうだったと思うんだ。もし今ビートルズが彼らの曲をやっても、当時と同じぐらいのよさで、何も変わらずに出来ると思う。僕らはそういうことを大切にしたいんだ。
雄貴 急にニュー・ウェイヴを取り入れたりはしない?
ヴァン 今はね。そもそも自分はギターがまだそんなに上手いとは言えないから、シンセをやる余裕もないし(笑)。でももしソロ作を出すとしたら、その時はちょっと違うことをやってみたいかも。
雄貴 デビュー作『バルコニー』のプロデューサーとしてジム・アビスを迎えているけど、彼は自分たち日本のバンドマンにとってもすごくレジェンドな人物で。でも日本のバンドって、そういう人たちと一緒に仕事をする機会ってなかなかないから、彼についての話をいくつか訊いてもいい?
ヴァン もちろん、何でも訊いてよ!
雄貴 じゃあ最初に。彼はマイクのチョイスとかアンプとか、そういう機材のことにも詳しい人なのかな。
ヴァン うん、凄く詳しいよ。面白いのは、彼はスタジオに入ったらソファーに座って一切動かないんだけど、僕が「ジョン・レノンみたいなヴォーカルの音にしたい」って言うと、スタッフに「あのマイクとあの機材を取って来て」と伝えて、それでセッティングするとバッチリ思い描いた音になる。あれは凄かったな。そういうすべての手法を把握していて、素晴らしい人なんだ。でも、たとえば彼が手掛けた作品の……「あのアークティック・モンキーズのあそこのベースの音が好きだったから、そういう音にしてよ」って言うと、「ああ、あれ好きだったんだ。で、やりたいんだ? じゃあ絶対にやらない」って感じでさ(笑)。
雄貴 そうなんだ(笑)。
ヴァン そう、彼は自分が過去に手掛けてきた作品と同じことはやらない。彼自身、以前やったことをもう一度やるのは面白くないし、その時手掛けているバンドに、過去に手掛けたバンドとまったく同じようにはなって欲しくないからだろうね。単純な話、彼は僕らにアークティック・モンキーズになって欲しいわけではないから。「そういうことは絶対にやらない」ってポリシーの人なんだ。