––––毎年多くの野外フェスへも出演していますが、クラブと野外でのプレイの違いはありますか?
クラブはクラブの良さがあって、オープンからラストまでフロアという空間の中で一体感を密に知ることができますが、野外の場合はそれがノーリミットされた開放感がありますよね。その開放感をいかに演出することができるか? クラブと違うところがあるとすれば選曲とピークへの持っていきかたでしょうか。それにフェスなどの大きなイベントに出演する時には、自分がプレイする枠の前後の流れも考えなくてはならないので、離陸や着陸を強く意識しません。しかしその中でも、自分のプレイにはテーマや起承転結がありますね。
––––Calm名義の他にOrganLanguage、K.F.、Japanese Synchro System名義でも活動をしていますが、この名義の住み分けはありますか?
K.Fは特にダンスミュージックに特化したものですが、他の名義はその時々の気分でもあります。
––––INOUE KAORUさんたちと4人組のバンドCosmic Blessing Ensemble(以下、CBE)では<フジロック>や<頂-ITADAKI->などのビッグフェスにも出演していますが、CBEではゆったりとした中に爽快感を感じて体を揺らしたくなるような世界観がありますね。
CBEでは“ニューエイジオブニューエイジ”というテーマのもとに、進化系のヒッピーミュージックを表現しています。メンバーみんなが幅広い音楽を聴いて来ている人たちなので、キーワードさえ決まってしまえばそれに沿って、音楽が自由にでき上がっていってしまうので、音源はアルバム2枚分もあります。……だけどいつリリースをすればよいのか(笑)。
––––Calmさんの音楽はジャンルという枠より広義なものだと感じますが、手かげる楽曲のサウンドを言葉に表すならどのような音楽になるでしょうか。
もし今回リリースするアルバム『from my window』を言葉に表すなら、インストゥルメンタルポップスでしょうか。単純にその表現が一番しっくりきます。クラブコーナーに置かれたらちょっとポップすぎるかなと思います。やっぱりそういうコーナーに並ぶ音源はもう少し骨太で、強いメッセージ性や最先端なものが組み込まれているので、自分が制作する楽曲ではそこにはしっくりこないかもしれないです。『from my window』はポップスだけど、単純に歌や歌詞がないだけですね。
『from my window』ジャケット
––––2017年にはデビュー20周年を迎えますね。その中で20周年に向かって4年計画を掲げていますが、この計画について教えてください。
昨年Calmとしての活動が20年だと気付いた時に、「種蒔きをして、育てて、刈り取る。」という作業を4年計画としてやってみようと思いました。今までは種蒔きをして育てたものが実になる時には違う畑に行っていてしまって、周りからも「なんで育てた実である、シーンやリスナーを最後の刈り取りまでやらずに違う所に行くのか?」と言われていましたが……「この4年計画ではしっかりと実を刈り取る作業までやろう!」と思ったのがきっかけです。
––––種蒔きとはどのような作業でしょうか?
DJをやることは安易にできるけど、パーティでお客さんたちにいい音楽を聴かせることはとても難しいことです。例えばDJをはじめたばかりの子が、オープニングからとても激しい選曲をしている時に、「家で練習してきたものをそのまま出すのがパーティじゃない。」ということや、「自分が与えられた役割をしっかりと理解すること。」など、小さいことかもしれませんが、その気付きのきっかけを与えること、それに音楽の聴き方でしょうか。細かいことでも伝えて行くことですね。もしそれを少しでも理解してくれる人がいたらまた次に進めると思うので、そのきっかけ作りが種蒔き作業ですね。
––––クラブでもメインフロアなのかサブフロアなのか。はたまた野外なのか。いい音楽を聴いてもらうためにもそれぞれの場所で役割みたいなものはありますよね。では種蒔きは育成に近い感覚ですね!
育成というと偉そうになってしまうので……中間管理職でしょうか(笑)。だけどしっかりと伝えて行かないといけないことではないかなと思います。若い人だけじゃなくて一緒に頑張っている仲間、時には先輩にも提案や思ったことは言葉にしていく事も種蒔きだと感じています。
––––そしてその種を育てていくんですね。
もう去年頃からはじめていて、少しずつ芽が出てきている部分もあります。枯らしてはいけないので、そこには集中的に水を与えて行かなくてはいけないと思っています。それとアドバイスを求められればしっかりと対応もしていかなくてはならないですね。
次ページ:構想は昨年の夏が始まってフェスをまわりはじめた頃ですね。