本当にやりたいことをCurly Giraffeではやっていますね
––––「洋楽しか聴かない」というお話がありましたけど、Curly Giraffeのソフトロックだったりポップスだったり、そういった懐かしい手触りの音楽は高桑さんの真ん中にあるものですか?
それが全てではないけれども、たしかにそうですね。僕は小さい頃にオーストラリアに住んでいて、そのときにいわゆる音楽の原体験があるというか。当時は70年代の初期だったので、エルトン・ジョンとかカーペンターズとかが全盛期の頃で、そういった王道ポップスを耳にする機会が当たり前のようにあって、音楽を自覚的に聴いていたわけではないけど好きだったんですね。バンドを始める高校生ぐらいになってからは、また別に聴いていた音楽の影響を受けていたんだけれども、王道ポップスのような音楽をいつかはやりたいなという想いはずっと持っていたんです。だけど、そのときやっていたバンドの感じだと表現する形が違ったりしたので、その気持ちをずっと自分の奥底に仕舞い続けたまま、Curly Giraffeを始めるにあたってからは、そういう感じの曲が増えてきましたね。
––––ソロ故にパーソナルな部分が抽出されますよね。
そうそう。自分の本当に好きな部分をいつか世に出せたらいいなというところから、本当にやりたいことをCurly Giraffeではやっていますね。僕はデモテープがすごく好きなんです。デモテープって思いついたときのスケッチだったりするわけじゃないですか。完成していないんだけど、曲を作った人のエネルギーを一番感じるのがデモテープであって。それをそのまま世に出す音源に出来ないかなとCurly Giraffeでやってみたというところもありますね。僕の場合は家にデモを作る環境が必然的にあったので、それをそのまま音源にしてみようと。ただ、当時は思いついたときのアイデアを薄まってしまうような気がして、1枚目は自分のスタジオで完結させることにしたんです。外のスタジオで友達のミュージシャンに演奏してもらうという形もあったけれども。
––––デモ音源って僕も好きですね。あのざらっとした質感と未完成な感じって力が抜けていて、アルバムのボーナストラックに収録されていると嬉しくなります。逆に、形の整ったものは好みではないんですか?
いや、そういうわけではないけど、Curly Giraffeの表現は姿勢に関していえば、もっとオルタナなんですよ。いわゆるグランジとかとは音楽性が違うけど、その手触りが好きというか。ジャケットを含めて今まで作ってきた作品には、隠れた名盤的な発想があって、その瞬間に良いというよりも、10年後に聴いても良いと思えるものを作りたい。そこはCurly Giraffeのコンセプトと言い切ってもいいんじゃないかな。