白昼夢みたいなタイトルを付けたい
––––『Fancy』について聞いていきたいんですが、今作もご自身でジャケットをデザインされていますよね。馬と犬、後ろの家を含めて、すごく異国感が漂っているなぁと。
これはね、マウイで撮影しました。去年マウイに遊びに行ったんですけど、ジャケットに写っている家は滞在中に借りたもので、そこのオーナーが敷地内に馬を二頭飼っているんですよ。それで泊まったときに、これは良いジャケットの写真が撮れるかもしれないということで、オーナーに馬を貸してもらって撮ったんです。意外なところで思いついてしまったものだから、現地で衣装として白の上下を買いに行って(笑)。
––––去年に撮影したということは、アルバムの製作期間としては結構長いですよね。
いや、ジャケットのほうが先に出来ていたという話ですよ。前作から2年半くらい空いてしまったけど、曲自体は今年作ったものばかりで、むしろボツにした曲がいっぱいあるくらい。この写真は非現実的なイメージがあるじゃないですか。まあハワイの現実ではあるけれども(笑)、日本で生活している僕らからすれば、非日常という感じがする。それで、白昼夢みたいなタイトルを付けたいなということで、作詞をやってくれているGenie Clashに相談したら、「Fancyがいいんじゃない?」と言われて。僕は「え、Fancy?」と思ったんだけど、調べてみると「空想」という意味を含んでいて、僕の意図している感じに近かったんですよね。
––––日本人の思っている「Fancy」とはニュアンスが違いますよね。
そうなんですよね。イギリス英語だと、またその意味も変わってくるみたいで。
––––白昼夢というところでいうと、夢と現実の間のような感覚はCurly Giraffeの音楽の一部だと思っていて。
Curly Giraffeの音楽自体が僕にとっての空想なんですよね。「こういう音楽をやっている人がいたらいいのになぁ」というところが曲を作るモチベーションだったりして、「無ければ自分で作ってしまおう」というところが大きいですね。僕には常に空想している、自分の中の小宇宙みたいな理想型があって。それをどれだけ具現化できるかというのが音楽だったりジャケットだったりするんですよ。自分にとって居心地のいい空間、そこから音だったり絵だったりが浮かんでくるという感じで。
––––なるほど。『Fancy』に限らず、Curly Giraffeの作品は日常に寄り添う音楽というか。いつでも聴ける気軽さがありますよね。
そう言ってもらえるとすごく嬉しいんだけど、癒しだったり甘い感じだったりはたしかに僕の一要素ではある。でも、それだけじゃなくて、大体僕は毒を持っているので、それは表に出していない、分かる人に分かる部分なんですよ。そういった中毒性みたいなものを常に持たせていたいなという気持ちはあって。基本的にはこういった音楽をやっているけれども、僕には素直じゃない部分がすごくあるので、決して真っ直ぐな球を投げ続けて、ここに辿り着いたわけではないんです。やっぱり紆余曲折を経たというのはすごくあるので、その部分は感じられる人が感じてくれたらいいものであって、感じない人は素直にそのまま僕の音楽を受け取ってもらえればいいというか。人によっていろいろな見え方が出来るように作ってあるので、それぞれの楽しみがあればいいなと。