遠回りしたからこそ、今は真っ直ぐな球を投げられている
––––改めてCurly Giraffeの作品を通して聴いて思うのは、1stアルバムから今作まで本当にぶれていないんですよね。
やっぱり聴いてきた音楽が大きいんじゃないかな。僕は中学生の頃は楽器をやっていなくて、最初はサッカー少年でした。中2くらいまではビルボードのヒットチャートをFENで聴いているような感じで、中3になったときに急にUK音楽に目覚めてしまうんですよ。当時は家の近所に貸しレコード屋があって、なぜかそこで借りたセックス・ピストルズとジャパンを一気に好きになってしまって。
––––両方とも全然違う音楽ですよね(笑)。
そうそう(笑)。それを入口にUK音楽にハマってしまって、高校生になったときにベースを買ったんですよ。僕はじゃんけんで負けてベースを買ったのではなくて、自分の意志です(笑)。特にバンドを組んでいたわけではなかったけど、中学の頃からGREAT3の白根賢一とは同級生で、賢一はずっとドラムをやっていたんですよ。あいつがドラムだからドラムはやめようと思って、ギターかベースという二択からベースを買った。当時は深夜にピーター・バラカンさんの「ポッパーズMTV」という番組があったんですよ。ピーターさんが好きな音楽のミュージックビデオを流すという番組だったんだけど、もうそれが毎週楽しみで、ニューウェーブからネオアコまで、聴いたことのない新しい音楽をピーターさんに教えてもらいましたね。ネオアコでいえば、日本でフリッパーズギターが出てきた頃には、もっと昔の音楽にレイドバックしてしまったけれどね。
––––レイドバックした理由としては何が大きかったんですか?
きっかけはビートルズを聴いたことなんだけど、ビートルズからさらにレイドバックして、最終的にはグレイトフル・デッドにまで行ってしまって。そこから方向転換してしまったものだから、80年代後半から新しい音楽をまったく聴かなくなった。グランジとかは世代的にドンズバのはずなんだけど、まったく聴いていませんでしたね。世代が一緒なのに、ニルヴァーナをまったく知らなくて、60年代のサイケな音楽ばかりを聴いていて、そこからジェームス・テイラーとかニール・ヤングとか、70年代のシンガーソングライターに移行するんです。だから、その頃の好みと今の好みはあまりぶれていないんですよ。通ってきた道はどうしても外れないというか。遠回りしたからこそ、今は真っ直ぐな球を投げられているんじゃないかな。
––––あぁ、すごく腑に落ちます。それが紆余曲折ということなんですね。
そうですね。10代、20代の頃ってさ、自分が好きな音楽とかっこいい音楽って違ったでしょう?
––––「これを聴いていたら、かっこいいっしょ」みたいなポーズは絶対にありましたね。
そうやって聴く音楽はもちろん僕にもあった。だけど、この歳まで経験を積んでくると、そういうことはどうでもよくなって、素直に好きなことをやりたくなるというか。それはやっぱり今までの経験があったからこそ、そういう気持ちになれるんですよね。だから、好きじゃない音楽を沢山聴いてきた寄り道は無駄じゃなかった。もちろん、旬なものはその常々に絶対あって、それは大事だと思う。でも、Curly Giraffeの場合はそこを目指すのではなくて、新しいことをしようと思っても絶対に古くなる。いろいろやってきて分かるのは、新しいことを目指すのではなくて、自分にしかできないことを目指すということかな。自分らしさを濃く表現すれば、それが個性になるし、それが新しさであるということにCurly Giraffeを始めて気が付きましたね。
text by Shota Kato(CONTRAST)
photo by 横山マサト
Event Information
Curly Giraffe ワンマンライブ
2014.09.13(土)@Shibuya WWW
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥5,000(1ドリンク別)