Interview:篠原有司男、乃り子夫妻
Photo:Taisuke Yamada
――『キューティー&ボクサー』見させて頂いたのですが、個人的にも今年一番の作品です!
篠原有司男(以下、有司男) これでアカデミー取ったらすげーことになるね。天皇に呼ばれんじゃないかってさ。だからまずはノミネートされなきゃね。ノミネーが大変なんだよ。もうすぐ決まるんだよね?
篠原乃り子(以下、乃り子) いや、まだじゃない?
有司男 決まったら、もう乾杯だろうね。でも絵は絶対に売れないよ。これがドキュメンタリー映画の厳しさだから。
乃り子 なんで売れないって決めるの?
有司男 すいません(笑)。
――(笑)。ちょうど、アカデミー賞の話が出たんで聞きたいんですけど、アメリカでは既に公開されたわけですが、反響はいかがでしたか?
有司男 反響すごいよ。こないだも銀行から出てきたやつが「週末に彼女と『キューティー&ボクサー』見に行くの楽しみにしている」って言って写真撮られたりね。電気屋にいったら、俺の顔を見て「キューティー(乃り子)はどこいるんだよ」とか(笑)。地下鉄で二カーッてされて「どうしたんだ?」って聞いたら、地下鉄のポスター(『キューティー&ボクサー』の)を見たって言うんだよ。そうするとこれがさ、地下鉄とかバス停にポスターがガンガン貼ってあるんだよね。アメリカ人はもう僕らをスーパースターだと思っているんだよ。アメリカの映画の社会って新しい触れ合いがあるじゃない。新しい切り口がね。だからワクワクしてるよ。
――ちなみにアート業界の方々の反応はいかがですか?
乃り子 チェルシーをこの前歩いていたら、有名画廊のオーナーが「I saw your film(=映画みたよ)」って言って来たの。他にもチェルシーでコンストラクション(工事)やってる人までね。アーティストのバイトの子なのかな? 「I saw your film! Cutie!」って声かけられたのよ。画廊の人は帰ってから会う予定よ。
有司男 ベニヤ担いでいるやつがね(笑)。この間もドア開けたらさ、2人女の子がいて花束抱えてんだよね。向日葵かなんか持って。それで俺のスタジオ見たいって言ってたんだけど、その前に乃り子は「変なやつは入れないから」ってね。
乃り子 違う。私は仕事中だったからくしゃくしゃの格好で降りていきたくなかったのよ。向こうはちゃんと遠慮深くて「いや仕事の邪魔はしたくなくて、花だけ届けたかった」って言ってきたの。
有司男 俺は中に入れて、絵の1つでも2つでも売りつけようかって思ってんだけどさ(笑)。
乃り子 それは無理じゃない。