――それぞれにお聞きしたいのですが、アートをやる上で発想の源は何ですか?

乃り子 おこがましいけど、やっぱり自分のアートの体験、人生の体験だよね。自分の中で『キューティー&ブリー』を見つけたけど、やっぱり常に古典を勉強していくことなのよ。だから美術館に行くのは大好きだし、ヨーロッパとか機会があるときに見たかった本物を見るってことが大事なのよ。感覚もフレッシュにしとくことね。

有司男 それは僕もそうだね。古典に対する教養だね。勉強! ところがね、学校で教えられる古典に対する教養、見方っていうのは古くて最低なんだよ。例えば、ミケランジェロの『ダビデ像』って彫刻があるよね。あれが素晴らしいと思うのは、ミケランジェロがどうしてあそこのキンタマを彫ったかっていうことなのよ。大理石があって、フィレンツェの市民が「ミケランジェロ、お前が彫れ」って公開制作で彫るわけよ。顔を彫るのがうまいのは当たり前なのよ。でも、ミケランジェロがどうやってキンタマを彫るか皆見ているわけよ。

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乃り子 と、あなたは自分で想像したわけでしょ?

有司男 そのくらいの違った見方で、古典を見ていくと本当に面白い。切り口を全部変えなきゃならない。ルーブル美術館行って、解説読んだってしょうがないのよ。

乃り子 いや、もちろん古典ができた背景を知りながら見るというのはもっと深くなるから解説はもちろん大事だと思うの。それを見て聞いてからただ覚えるんじゃなくて、自分でもっと考えることがアヴァンギャルドに繋がってくると私は思うわ。でも、自分の見方を探すってことが自分を探すことでもあるから、急にわかることではないの。一生かかるかもしれないし、40年かかるかもしれないし、10年かかるかもしれない。

有司男 でね、そのコツは自分に嘘をつくの。大嫌いなものを「コイツが一番うめぇな」って食っちゃうわけよ。僕は京都と奈良は昔「ピーっ」て唾引っ掛けてたんだけど、アメリカに住んで戻ってきたら、京都とか見方変えたら本当に面白いもんね。しるこ屋に行っただけで嬉しいもん。今は食いたくてしょうがないもんね(笑)。そういう風に見方を変えていかなきゃいけないんだよ。

乃り子 まだ、今でも嘘ついてる(笑)。

有司男 (笑)。いや、自分に嘘をつくっていうのはクリエイティビティを強くする、想像力のスタートだよ。それがなければ絶対だめだよ。

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――最後の質問になるのですが、お2人それぞれの今後の夢をお聞かせ下さい。

乃り子 ザックが映画で私のドローイング(『キューティー&ブリー』)をアニメーションにしてくれたでしょ。アニメーションってすごいお金と人が沢山いなきゃ出来ないものだと思い込んでたの。ところが、あれは1人のアニメーターがやったわけなのよ。だから、すごく可能性が広がってきて、私はあれ((『キューティー&ブリー』))で全編作りたいと思っている。まぁ、それがいつになるかわかんないけど、それが私の将来の夢なんです。将来っていうか近い将来のね。

――それは是非見てみたいです。有司男さんはいかがですか? 

有司男 僕はね、ダンボールのオートバイのデカい(作品)のがあるわけよ。もう雨ざらしになってボロボロだけどね。それをリサイクル業者の社長がうちにちょこちょこ見に来てるわけよ。そいつが会社の金で買ってくれないかと思っているんだよね。というのは、その『ダンボールオートバイ』っていうのは色々なものをリサイクルして作った作品だからさ。それが夢だね。

乃り子 作品買ってくれないかなってことが?

有司男 うん。リサイクル会社の玄関に俺の半分ぶっ壊れたダンボールのオートバイがドーンって置いてあったら素晴らしいじゃない。

interview & text by Taisuke Yamada(Qetic)

Event Information

篠原有司男・篠原乃り子二人展
Love Is A Roar‐r‐r‐r ! In Tokyo 愛の雄叫び東京篇

2013.12.13(金)〜2014.01.13(月)@パルコミュージアム(渋谷パルコパート1・3F)
OPEN 10:00/CLOSE 21:00(最終日は18:00閉場/入場は閉場の30分前まで)
※年末年始は営業時間が変則的になる。
入場料:一般 ¥500/学生 ¥400/小学生以下 無料(『キューティー&ボクサー』半券提示で半額)
ゲストキュレーター:富井玲子
主催:パルコ
協力:東京画廊+BTAP/共栄繊維/hpgrp GALLERY NEW YORK
企画制作:パルコ/亜洲中西屋

『キューティー&ボクサー』

12月21日(土)より、シネマライズほか全国ロードショー

監督:ザッカリー・ハインザーリング
出演:篠原有司男、篠原乃り子
配給:ザジフィルムズ/パルコ
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