――今回のドキュメンタリーを撮るという話をされたとき、それぞれ率直にどう感じましたか?
乃り子 いや、何にも感じなかった。最初はザック(監督のザッカリー・ハインザーリング)と相棒って感じの大学の友達のパトリック・バーンズが来てね。それまでも日本からテレビとかそういう人たちが随分昔から来てたから別に何も感じなかったの。カメラ慣れしていたのよね。最初撮ったのが3時間くらいで。それから何ヶ月も忘れた頃に9分のパイロット(版)作ったって言って見せに来たの。その時にこれから本格的に撮りたいって言ってきたわけ。「あーなんだこれからなの?」って感じだったのよ。
――その3時間でもう撮り終わったと思っていたんですね。
乃り子 うん。ただ学生が撮っていたとしか思わなかったからね。私達忘れてたくらいだったし。
有司男 そうそう。だって取材の場合は監督、カメラ、録音の3人組で来るわけでしょ。ザックの場合はブラっと入ってきたやつだからさ。
乃り子 パトリックがインタビューしながらやっていたから、私は彼が中心になってやっているのかと思っていたら、2年くらいして彼は他の仕事で忙しくなっちゃったのね。で、パトリックに「何で行っちゃうの?」って聞いたら「元々これはザックのフィルムだ」て言ったの。「何だ、あのガキが」て感じだったのよ(笑)。本当に怖ず怖ずとしててね。
有司男 24(歳)だからね。
乃り子 だから、うちで育ったようなものなのよね。
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――そこから、作品が出来るまでの経緯をもう少しお聞きしてもよろしいですか。
有司男 出来上がりと言ったって、いつできるのかも聞かなかったよね。撮るだけだと思っていたから。
乃り子 1週間に1、2回来て3時間くらい撮って帰るでしょ? 「ボク、とっても編集が面白くて」とか言うけど何やっているかわからないのよ。永遠に撮り続けるのかと思ってて、諦めた頃にやっと3分のトレイラーがやっと出来たわけ。それから、それをあるコンペティションに出したら、それが1,000人の中からの3本に選ばれたの。
有司男 そうそう、奨学金を取ったんだよ。
乃り子 急にプロダクションみたいになって大きくなっちゃって。
有司男 HBO(※)の会社もやめて、こっちにだんだんのめり込んできたんだよ。そういうところはやっぱり若いよね。会社の合間じゃなくて、もう会社のほうを合間にしてこっちを中心にしてね。
乃り子 お金がなくなるから時々HBOの仕事をパートみたいにして、手伝ったりしながらやって。大変な努力賞よ。
有司男 うん、努力賞だよ、ありゃ。若さと努力。
※米国のケーブルテレビ放送局