――絵本を描く事、絵を描く事、小説を書く事、色々な顔を持つD[di:]さんですが、それぞれのご自身の中で棲み分けをされているんでしょうか?

小説も絵本も、たいてい、私は自分で本の装丁やデザインをします。その時にいつも思っているのは、物として欲しくなるような本にするということ。一見してわからないかもしれないけど細部までこだわっていた効果がうまくいったり、単純に「うわ〜かわいい〜」とか「きれい〜」とか思えるかどうかって凄く大事なんじゃないかな、と。もちろん、それは外身のハードの話になりますけど。中身のソフトの部分でも、絵のアイデアを出すときも基本的に物語性を重視しているので、使う頭の部分があんまり変らない気がしています。

だから、絵本を書く事と小説を書く事、絵を描く事、全て違うようで、あまり私の中では変わらないんですよ。ただ、それぞれきついことはあります。小説に関しては、一つの物語を生み出すことって本当に体力的にも精神的にもきつい、絵は絵でフィジカルにきついこともある。腱鞘炎になりかけるとか、マメができていくとか。プロダクトに関しては、関わる人が多いので、修正依頼がたくさん来るとか、対応に追われることが辛いこともあります。それぞれ大変なこともあるけど、一つ一つ楽しんでやっています。関わっている人たちにも恵まれていると思うし、辛いことがあっても、楽しいです。

――作品を作り続ける上で、常に挑戦していたいと思いますか?

全てにおいて、常に実験的でいたいと思っています。とくに私は画材オタクなところがあって、画材の展示会に行って、気になるサンプルを片っ端から全部もらって、試してみたり。ニスも大昔のブリューゲルが使っていたニスと同様のを試したくて、わざわざとりよせて調合してみたり。ありとあらゆる画材を試したくて家がすごいことになっていたこともありました。また、タッチをかえるということ自体が、私にとっては実験。自分でも完成形がどうなるのかわからないことし、うまくいかなくて冷や汗をかきながらやっていることもあります。「やばいこれ、ぜんぜん思ってもみない色になってしまった…どうしよう…」とか。いかに自分が毎回冷や汗かけるかっていうのも充実感のバロメーターかもしれません。ものをいつもストイックでいけないといけないとも思います。いいものを残したいっていうか…あとで死ぬ間際に自分で思い返したり見返したりしたときに、「ぎゃー! なんでこんなもん描いたんだよ! 恥ずかしいー!」とか後悔したくないから(笑)。

【次ページ:今後の夢や希望は?】