ーー実は、僕は昨年末から今年にかけて、大切な人を亡くしてしまったり、私生活でいろいろなトラブルがあったりと、生まれてこのかた一番ハードな時期を過ごしています。デビーはこれまでの人生の中で、最もハードな時期っていつでしたか? それをどう乗り切ったのか、アドバイスも含め教えてください。
そう、大変だったのね……私にアドバイスなんて大層なことはできないわ。ただ乗り越えられる時を待つだけよ。大丈夫。人それぞれ乗り越え方は違うから、全ては時が解決してくれるはずよ。私にとってハードだった時期は、やっぱりMBVを離れた時かしら。自分から脱退したはずなのに、まるでアイデンティティを見失ったような気がして闇の中にいた。バンドの中で生きるというのは、とても特殊なもの。そう分かってたはずなのに、あまりにも長い間MBVの中にいたから、脱退をした瞬間、自分には何が残るのかわからなくなってしまったの。しかも、あなたと一緒で、同時に大切な友人を亡くしたりして辛い出来事が重なった。乗り越えるには、沢山の時間を必要としたわ……。でもね、闇の中にいる時は辛いかもしれないけれど、全ては移り変わっていくものだから。たとえ辛い中にいても、別の側面からみるときっと必要なことなのよ。それを乗り越えて人は強くなれるんだわ。時間はかかるけれど、少しずつ変わっていくのよ。
ーーありがとうございます。ところで、今日のザ・サーストン・ムーア・バンドでのあなたは最高にカッコよかったです! ベーシストとして、MBVのときより生き生きしていたように見えたのですが。
ふふふ、MBVのときだって私は楽しんでるわよ(笑)? でも、確かに音楽スタイルの違いでそう見えるのかもしれないわね。ザ・サーストン・ムーア・バンドでは、即興のようなスタイルで演奏することを求められているし、MBVは全てが緻密に計算されてできていて、それを意識しながら演奏しているの。沢山のクルーと共に、きっちりとしたパフォーマンスをする。一方ザ・サーストン・ムーア・バンドはとてもユルく、自由が許されている活動なの。必要な機材も少ないしね。ただ、どちらのバンドでも心から演奏を楽しんでる。曲の構成に伴って、私の解釈の仕方が違うだけの話ね。ギターのジェイムス(・エドワーズ[ノウト、グアポ])とは、もともと長い間友達で、彼がバンドに誘ってくれたの。実際サーストンとは数回しか会ったことがなかったわ。ジェイムスはとても面白くて、いい人よ、そしてまさに”イギリス人”って感じの人ね(笑)。
ーーでは、最後の質問です。デビーが人生において一番大切にしていることはなんですか?
いちばん難しい質問ね(笑)! そうね……自分にとって良いと思える人を大切にして、その人たちと共に生きていくことかしら。プライベートでも、社会活動においても、自分にとって大切な人たちを見極めて、守っていくこと。自分らしくいるためにも、周りの人たちにとってのベストを尽くすことね。
取材:黒田隆憲
通訳/翻訳:大竹りか/伊山成美
撮影:守谷さとみ