――この草花モチーフは、前回の個展<Harmony/my melody , your melody(ハーモニー/ 私とあなたのための旋律)>でも登場していますね。前回と今回の展示とがリンクする部分はありますか?

今って、いろんなものに白黒つけられなくなってるじゃないですか。いいとか悪いとかだけじゃ判断できないことがあるし、特に3.11以降そうだなって感じることが多くて。たとえば、これは私が考えた曼荼羅なんですけど(『HarmonyⅡ:A harmonic diagram』)、図形中心にある△は、いさかいを表しているんです。でも、そのいさかいが起きている世界のまわりには調和を表す円があって。そのまわりにそれを取り巻く世界=□を配してるわけなんですが、結局重要なのは全体のバランスだとおもうんです。これがひとつの世界だとすれば、こういう必要悪があってのハーモニーなんじゃないかって。悪人がいないとまわらない世界ってあると思うんですよ。いい人だけじゃ、きっと、世界はまわらない。

――となると、今回のテーマとは反するところがありますね。

そうですね。アセンションは、愛情に満ちあふれたいい人だけしかたどり着けない理想郷的なものですが、実際の世界は悪だって必要なわけで。矛盾はありますけど、私のなかでは背中合わせに存在するみたいな。理想の世界があって、それを横目でみながら、そうはならない現実があるみたいな。皮肉ですよね。

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D[diː]が語る、個展<The Pretty ASCENSION “S”>の俗説と“皮肉” interview150313_di_41

――皮肉といえば、作品そのものからはコンセプトの根底にあるうさん臭さみたいなものを感じさせませんよね。そこのギャップにも強烈なアイロニーを感じます。

スピリチュアルなことを言ってる人たちって、せっかくいい話をしてるのに、たまに普通の人がとっつきにくいというか、はいりこみ辛い感を感じる事って多いとおもうんですよね。エッセンスとしては、良いこと言ってても、いろいろデザインがダサくてアンタッチャブルになってる。それを、今回の展示では、もうすこしとっつきやすくしたかったの。

――個展タイトルに“Pretty”がついてるところもミソですよね。

そう。アセンションをより身近に感じてもらうために(笑)。「アセンションズ・ガール」っていうガールズヒーローの設定を考えてみました。タイトルの“S”っていうのは、マーベルのアベンジャーズみたいにしたかったの。または、チャーリーズエンジェルのオマージュ的な。今回は、作品の手書きの自己解説も、春休みの自由研究風に展示をしてるので、是非、お時間ある方は読んでいって欲しいです。長いので読むのが面倒なひとは、線を引いてるところだけ読んでくれれば(笑)。もちろん、作品を見て単純に「きれいだね」って言ってくれるだけでも全然嬉しい。どちらにしても、視覚で捉えるものって、相当な影響力があるはずだから。今回は、ゴシップ記事を見るように楽しんでもらってもいいし、普通にスピなパワーを感じくれたら、それはそれでいいと思うし。さらにこれらの題材をなぜ選んだかっていう皮肉に気づいてくれたら、なお楽しんでもらえるんじゃないかなって思ってます。

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interview&text by 野中ミサキ
photo by Chika Takami

Event Information

The Pretty ASCENSION “S”
2014.03.07(土)- 03.29(日)@TAV GALLERY
OPEN 11:00/CLOSE 20:00
定休日:木曜日