00年代末にマット・ビッグランド(Vo,G)の宅録プロジェクトとしてスタートし、バンドになってNMEなどで注目を集めると、10年にデビュー作『Growing Pains』をリリースした英リーズ出身の「ド直球のグランジ・リバイバリスト」、ダイナソー・パイルアップ(Dinosaur Pile-Up)。その後は度重なるメンバー・チェンジもあってなかなか軌道に乗らない時期も続いたものの、13年に元トライブスのジム・クラッチリー(B)を正式メンバーに迎えると、バンドは本国やアメリカでの人気上昇に加えて日本のレーベル〈A-Sketch〉とも契約。今回、13年に発表した2作目にボーナス曲を6曲加えた『Nature Nurture(Japan Edition)』がリリースされる。
今年に入って出演した<サマーソニック>のステージでは、音に体ごと突っ込んでいくようなパワフルなステージを披露しながらも、同時にどこか成熟を感じさせていた彼ら。実際、『Nature Nurture』の楽曲はグランジ一辺倒だった初期よりもバラエティが豊富になり、ニルヴァーナや初期のスマッシング・パンプキンズ、ウィーザーを筆頭にした90年代のグランジ/USオルタナからキンクス、ABBA、ビートルズにまで影響を受けたマットのメロディー・センスをより前面に打ち出したものになっている。それに加えて、昨年あたりからUKロック・シーンに登場する、グランジを新鮮なものとして受け止める若手世代の台頭も追い風になっているのかも? 今月末からの日本ツアーも目前。ということで、<サマーソニック>来日時に新作について語ってくれたインタビューをどうぞ!
Interview:Dinosaur Pile-Up
[Matt Bigland(Vo,G)、Mike Sheils(Ds)、Jim Cratchley(B)]
[左から:マット・ビッグランド(Vo,G)、ジム・クラッチリー(B)、マイク・シールズ(Ds)]
––––今年は<サマーソニック>にも出演しましたが、出てみた感想はどうでしたか?
マット・ビッグランド(以下、マット) 素晴らしかったね。<サマーソニック>はこれまで出たフェスティバルの中でも一番気に入っているんだ。僕らのライヴ自体も本当に楽しかった。沢山の人が観てくれたし、観客とのいいコネクションが感じられたし、彼らが歌詞を覚えて一緒に歌ってくれたことも嬉しかった。今までで一番いいライヴが出来たんじゃないかな。会場ではONE OK ROCKのTakaにも会ったよ。ロンドンで一緒にプレイした時にライヴを観ることが出来て素晴らしかったし、僕らの音楽も好きでいてくれるみたいだから嬉しかったね。あとは、10月の来日ツアーで共演するBLUE ENCOUNTのライヴも観ることが出来たんだ。
––––今回『Nature Nurture』がボーナス曲を加えて日本でもリリースされます。ダイナソー・パイルアップの場合、基本的にはマットが自宅ですべての楽曲を制作したと思いますが、これまでの作品と比べてどんな違いを感じていますか。
マット ファースト・アルバムはとても一面性があるレコードだったと思うんだ。実際、僕自身もそれを狙って作ってた部分があって、あの作品は全体的にかなりヘヴィーなアルバムだったと思う。だけど、この『Nature Nurture』では成長した姿を見せたいと思ってね。それで一つの要素にはこだわらない、色んなカラーを詰め込んだ作品になった。だからこのアルバムにはヘヴィーな要素もあるし、メロディアスな要素もあるし、明るいものから暗いものまで色んな曲が詰まってると思う。僕らの様々な表情を見せたいと思って作った作品だね。
––––マイクとジムは今回のアルバムについてどんな感想を持っていますか。マイクはもう長い間バンドのドラマーを務めていますが、ジムはこの作品がリリースされた頃にはまだバンドにいなかったはずですね?
ジム・クラッチリー(以下、ジム) 僕はもともとバンドのファンだったから、今回の『Nature Nurture』も大好きだよ。それにマットとはもう10年来の友達で、僕は彼自身の大ファンなんだ。この作品ではそんな彼の音楽の魅力が、より高いレベルに引き上げられていると思う。
マイク・シールズ(以下、マイク) 僕の場合はバンドを初めて観たのはイギリスのフェスだったね。それからバンドに参加することになって、ファースト・アルバムのデモの頃から活動を共にしてきたけど、今回の新作に関してはメンバーみんなが気に入ったものになったんだ。
––––確かに、持ち前のヘヴィーなグランジっぽさは本作でも健在ですが、同時にウィーザーやアッシュ、レンタルズ、ワナダイズなどを彷彿とさせるメロディーが印象的な“White T-Shirt and Jeans”などメロディアスな曲も増えて、バンド・メンバー全員の幅広い好みにリンクするような作風になっているように感じられますね。
マット 今の僕は基本的に、バンドがプレイすることを想像しながら曲を作っているからね。そしてライヴでは、それを本能的に打ち出すことを大切にしてる。その時はいちいち頭で考えたりしない。自分たちの感情を全部出し切るってことに重きを置いているんだ。これからのレコーディングには、2人にもある程度は参加してもらおうと思っているよ。
––––では、本作の中で気に入っている曲を挙げるなら?
マット 僕は全部好きだけど(笑)、でも特に挙げるなら“Peninsula”。この曲はシングルにもなっているしね。他には“Arizona Waiting”や“White T-Shirt and Jeans”も気に入ってるんだ。
Dinosaur Pile Up – “White T-shirt And Jeans”
ジム 僕も同じ曲が好きかな。中でも“White T-Shirt and Jeans”には僕が10代の頃に聴いていた音楽――たとえばウィーザーやピクシーズに通じるものが感じられる。ウィーザーの1作目(通称『ブルー・アルバム』)のギターは何度聴いても本当に素晴らしいよ。
マイク 僕も“White T-Shirt and Jeans”だね。この曲ってもともとは違うヴァージョンで存在していたから、アルバムのヴァージョンになってより好きになった部分があるんだ。今回はデモの段階から大きく変わった曲が多かったんだけど、この曲もそのひとつだね。
––––また、今回の日本盤にはボーナス・トラックが6曲追加されていますが、どれもアルバムに入っていてもおかしくない内容で、これが日本盤ならではの魅力になっています。
マット 今回日本盤に収録されたボーナス・トラックは、『Nature Nurture』の楽曲と同時期に作っていた未発表曲なんだ。どれもアルバムから外すには惜しい出来だったから、どこかで発表したいと思っていてね。だからこの機会に出してしまおうと思ったんだよ。“Bruise Violet”と“Should”にはビッグなコーラスがあって、とてもいい曲になっていると思うし。で、それぞれの歌詞の内容や曲については、聴いた人の想像に委ねたいんだけど、このボーナス・トラックには共通したテーマがある。それはつまり、孤独であったり、疎外されている感覚。“In My Room”という曲もあるけど、これはまさに制作中に自分の部屋で感じた孤独を表わしたものなんだ。